見出し画像

【AD体験記】テレビ局のADって何者なの?

どうも、まるです。

今日から、僕が約3年間テレビ局のADとして働いていた体験をつらつら書き連ねていこうと思います。

これから更新していく記事は、
・これからADとして働くことが決まっている人
・テレビ局での仕事に興味がある人
・今すでにADとして働いていて、将来的にどうしようか悩んでいる人
・ADなんて絶対になりたくないけど、実態だけ知りたい人

におすすめです。

上記に該当しない方でも、読み物として出来るだけ面白おかしく読めるものを目指して書いていきますので、ぜひご覧ください。

その前に、「そもそもあなた何者?」という方は、以下の記事から読んでいただけるとよろしいかもしれません。

それではいきましょう。

画像1

1.テレビ局のADとは

「AD」という言葉を全く聞いたことがない、という方は、それほど多くないのではないでしょうか。
と思えるくらい、ADという職業は世の中に浸透しています。
ドラマや小説、映画などで、テレビ局が舞台の作品には必ずと言っていいほどADという役職が登場しますし、その役どころからして、何となくこんな感じの職業なんだろうな、というイメージはすでにあるかと思います。

「大変そう」
「何でも屋さん?みたいな感じ」
「ちっちゃいバッグとか持って走り回ってそう」

すでにお持ちのイメージは、ざっとこんな感じでしょうか。

しかしながら、実際にADとして働いた経験がある人は、それほど多くないのではないかと思います。
今この記事を読んでくださっているあなたや、あなたの知り合い、友達の中に、ADとして働いている人は、いたとしても1人か2人ではないでしょうか。

ですので、ADという職業は、なかなか想像の域を超えず、イメージで語られることが多いと考えています。

そして、そのイメージは、きっと概ね正しいです。
大体そんな感じです。なんか大変そうな職業、まさしくその通りです。

しかし、もうちょっとリアルを知りたい方もいらっしゃいますよね。
ですので、もう少し噛み砕いて、かつ一言で説明すると、ADとは
「大変で、食事や睡眠などもろくに取れず、自分の存在意義がだんだん分からなくなる職業」
です。

うわ、なんか急に怖くなりましたね。流れ変わったな。不吉な予感がプンプン漂ってきましたよ。

次の項目では、もう少し細かくお話していきます。
「やっぱり大変なんじゃん!」とお想いになった方は、ここで読むのを止めていただいても構いません。
きっと最後までお読みになっても、感想は大きくは変わらないことでしょう。

少しでも気になった方は、スクロールしちゃってください。

画像2

2.ADの業務は過酷なの?

AD=大変そう ということはよく分かっていらっしゃる方が多いと思いますが、何が大変なんでしょうか。

これは、番組のジャンルによって大変さが大きく変わるので、一概に申し上げることは難しいですが、結局テレビって、

企画する→撮影する→構成を練る→編集する

ことで出来上がるコンテンツで、これはどのジャンルの番組でもほぼ同じかと思われます。
ですので、このフローに沿ってお話を進めていきます。

①企画する

大体どんな番組でも、まずはここから始まります。

例えばニュース番組であれば、
「どこどこでこんな事件があった。容疑者は逃亡中。何があったか追ってみよう」
「新型コロナのワクチンって実際どうなんだろう?分かりやすくまとめてみよう」
「芸能人が浮気したらしい。張り込んで直撃してみよう」
というように、今起きていることだったり、最近流行しているものにアンテナを張り巡らせ、どんな内容(ネタ)であれば世間の興味を引くか、自分だったらどんな内容(ネタ)を見てみたいか、など、様々なことを天秤にかけながら企画を考えていきます。

この企画を考えるのは、いわゆるディレクターであることが多いです。
ディレクターとはADが出世するとなれる、ADの進化版のような役職です。
こういった企画を打ち出したり、撮影したり、編集したりすることができます。

さて、この企画がすんなり通るかというとそれは間違いでして、これにプロデューサーがいちゃもんを付けてきます。
まだ形にもなっていない企画に「これは面白いのか」「誰が見るのか」「できるのか」など、うるさいことを言ってきます。

そして大半の企画は世に出ることもないまま、お蔵入りになっていくのです。

ここでADが大変なことはあまりありません。
ADも企画を出せ!なんて言われた日にゃ、無い頭を必死にフル回転させて企画を考えるのですが、結果は目も当てられないことがほとんどです。


②撮影する

生放送で、完全にスタジオ収録(討論系の番組)以外は、VTRというものを作成します。
そのVTRを作るためには、ほぼ必ず撮影が必要になってきます。

ロケ、などと言ったりすることもありますが、テレビにおいて撮影こそ命です。

撮れなければ、どれほど素晴らしい企画を考えたとしても意味がないので、いわゆる「いい画」を撮るために、ディレクターは色々と考えます。

ロケ場所はどこがいいか、どんな機材がいいか、自分で撮るのかクルー(カメラマンなど)に同行してもらうのがいいか、など。
入念に準備を重ねて当日を迎えます。

また、事件の取材などでは、逆にスピードが命なので、とにかく1秒でも早く現場に着くことが大事になってきます。

ADは何をするかというと、ロケに必要になるものを全て用意します。

ロケ場所がカフェに決まったなら、撮影を許可していただけるカフェを探し、移動に車両を使うなら車両を手配し、クルーが必要ならクルーを手配し、特別な機材が必要ならそれを用意します。

ロケまで時間がある場合はさほど大変ではないですが、たまに2時間後から撮影、なんてこともあります。

何の用意もしていなかったのに突然撮影することが決まった場合でも、ディレクターは当然の如く場所や機材を要求してきます。

その要求にしっかり応えるのがADの仕事です。
大変そうですよね。


③構成を練る

無事に撮影も終わり、一安心…ではありません。

撮影することによって、新たな事実が発覚したり、用意しなければいけないものが増えたりします。

そうなると、さらなる撮影が必要になったり、モノを用意したり、という事態に直面することになります。

大体このくらいの局面からADの人手が足りなくなってきます。

物理的に足りなくなることがほとんどですので、少しでも暇そうにしている人はすぐに手伝いに駆り出されることになります。

もちろん、必要になるのは撮影だけではありません。
例えば、「素材出し」などと言ったりするのですが、過去の放送や映像のアーカイブを、使用できるようにする作業なども発生します。
簡単そうに見えますが、これが非常に大変な作業になります。

考えてみてください。
日々積み重なっていく映像素材から、ディレクターが欲している素材を探しだし、それを編集で使えるように準備するのです。

その映像がどこにあるか、というところからのスタートになりますし、局内の素材でももちろん許諾を得ることが必要になってきます。
許諾をいただくための申請書作りなどの細々した仕事も発生してきます。

この辺りから少しずつミスが出始めます。
小さなミス、大きな失敗。
その度にディレクターや先輩ADから怒られ、すみませんと謝るのです。

ちなみに、「すいません」でなく正しくは「すみません」です。
これからADになる人は気をつけてください。
なお、上司ほど「すいません」って言ってます。

一つの大きなタスクがドーンと待ち構えていることもあれば、上記のように、細々した小さな仕事が大量に押し寄せることもあります。
たまに大きなタスクが小さな仕事を引き連れながら大量に攻めてくることもあり、そうなるとADは瀕死になります。


④編集する

そうこうしているうちに、OAが近づいてきます。
ぶっちゃけ全然仕事が終わっていなくても、時間とは無情なもので、刻一刻とリミットが近づいてきます。

ニュース番組であれば、スピード命なため、素材をとにかく早く揃えて、ディレクターに報告する必要があります。

バラエティ番組などですと、編集する時間はたっぷりありますが、その分色んな人からの直しを反映させなければなりません。
時間が許す分、より良いものを、ということなのですが、こうやって時間が無くなっていきます。

ADは、とにかく映像の素材を用意したり(今回撮影したものや、素材出ししたもの含め)、編集中に必要になった新たな映像を探したり、原稿をコピーしたり、それを配ったり、とにかくなんでもやります。なんでもかんでもやります。

いやコピーなんて誰だって出来るし…って思いますよね。
ですが、1日完全に徹夜していたり、2日寝ていなかったりすると話は変わってきますよね。

そう、③の構想を練るあたりですでにADは重症もしくは瀕死状態。
その後の業務となりますので、コピーする姿はもはやゾンビ。生きる屍です。
そんな時にコピー機が故障なんてしたら半狂乱になります。

無くなる時間と体力に反比例するように、仕事はどんどん増えます。
「もう無理だ!限界だ!」と叫んで逃げ出したくなる頃、OAを迎えるのです。

無事にOAが終わると、ようやく少しだけ時間ができ、事後処理などを済ませてお休みとなります。
しかし次のOAのために必要な仕事がある場合は、エンドレスで働くことになります。

やっぱり、「大変そう」ですよね。

画像3

3.テレビ局のADって何者なの?

ここまで読んでいただきありがとうございます。
もう少しだけお話しさせていただければと思います。

僕はADという職業を、
「大変で、食事や睡眠などもろくに取れず、自分の存在意義がだんだん分からなくなる職業」
と称しました。

前述したADの生態をご覧いただければ、これが嘘ではないことが伝わるはずです。

撮影をする段階から、徐々に睡眠時間が減ってきます。食事は取れても深夜だったり、早食いをすることになるのでどんどん太ります。

放送が近づくにつれ睡眠時間はほぼなくなり、素材出しという無為な作業ばかりしていると、自分とは何者なんだ、なぜここにいるんだ、という気持ちになってきます。そして、存在意義がだんだん分からなくなってくるのです。

当然ですが、この上に人間関係だったり給与関係だったりという、別の問題がのしかかってくるのです。そこは他の仕事と変わりません。

「え!お給料は結構もらえるんじゃないの?」と思った方がいらっしゃいましたら、そういった具体的な話も別の記事にしようと思っているので、是非そちらをご覧ください。

なぜ僕がADをやっていたか、という話はまたおいおいするとして…。
僕の周りには、「テレビが好きだから」ADを始めた方が多くいました。
おそらく7割方そうだったと思います。
そして彼らのほとんどは辞めていきました。

断言します。
テレビが好きな方は、ADなんてやらない方が絶対に良いです。
テレビが嫌いになってしまいますよ。
絶対に絶対におすすめしません。

ですが、それでもテレビが好きという理由でADをやってみたい方がいたら、チャレンジしてみてください。
泥のように働くことは、人生で一度体験するには良いことです。
勇気を持って足を踏み入れてみてください。

そういった覚悟がない方は、絶対にやめておいた方がいいと断言します。

他の理由でADを志す方もいます。
ディレクターになりたいから、という方も結構いらっしゃいます。

ディレクターになるためには、少なくとも4〜5年はADとして働かなければなりません。
自分を見失わず、絶対にディレクターになってやる!という熱い決意をお持ちの方は、是非目指してみてください。
心から応援します。

AD。イメージは変わりましたでしょうか。
おそらくむしろひどくなった、という感想をお持ちになった方が多いかと思います。
しかし、これがリアルです。

これからも、AD体験記と称し、僕が経験したADとしての仕事の内容を書き連ねていきます。

それでは、また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?