見出し画像

アメリカで出会った患者様①訴訟大国ならでは?

アメリカでナースを始めた頃に書いてた
ブログからの転載です。

******************************

SOB(Short of breath)で入院となった Vanessa(仮名)。
転移した癌細胞で肺が覆われてる状態で
健康な肺の部分がとても少なく、
ちょっと動いただけでも息が切れてしまい
心拍数は140台まで急上昇。
そんな彼女の看護ケアに対する満足度は
入院当日からネガティブなものでした。


ナースコールを押しても誰も来ない。。。
私は息が出来なくて死にそうなのに誰も気にかけない。。。
Commodeを使った後誰もきれいにしてくれないから
ゴミ箱に排尿せざるを得ない。。。

などと一緒に、

なぜ病院の食事はWhole Foods Market (有機野菜の高級スーパー)
のものではないのか?

とか。

確かに彼女が入院した初日は
short staff(患者数に対して看護師の数が少ない)
だったのと、
急変などが重なって
ナースコールがなってもすぐに患者さんのところへ行くことは
出来なかった。
私もたまたま朝食を抜いてしまったにもかかわらず、
4時まで休憩できなかった日だ。

患者さんにも事情を説明したのだが、
適切な処置を受ける患者側の権利(Patients’ Bill of Rights)を考えると
私たち看護側の事情なんぞ患者さんのビジネスではない。

そんなVanessaの退院の日の朝。

申し送りの後、
通常通り朝の挨拶とアセスメントを兼ねて受け持ち患者を一回り。
特に目立ったことはなくナーシングステーションへと戻った。

そしてドクターのオーダーと薬のオーダーなどを確認して、
Vanessaの元へ行ったのです。

すると、

携帯で興奮気味に話す彼女の姿。
電話の相手はpatient care advocatorだと言う。

話を聞いてみると、ベットサイドのテーブルに
注射器と蓋のあいた針が置きっぱなしになってて、
あまりにも危険な病院スタッフの仕事の仕方がもうがまんできない、
弁護士の妹を通して訴訟の準備に入りたい、
とのこと。

確かにそこには注射器と針。
私が朝一回りした時には気がつかなかった光景があった。

彼女に『危ないから捨てましょうか』と聞いても、
『patient care advocatorが来るまでこのままにしておきたい』と言う。

誰だろう。。。? ドクター。。。?? でも何故に。。。???

彼女の10時の薬は私が持ってたし、
彼女の薬の内容から言って、
ナースが注射器を持ってベッドサイドに行く理由がない。
そこで受け持医に聞いてみたが、
彼女も注射器なんて持って行ってないと言う。

しばらくして彼女の同意を得て私が針の始末をすることに。

ん?

んんっ?

んんんっ?

この針、うちの病棟のじゃ無いぞ。

彼女に
うちでは取り扱ってない針だとだけは
伝えましたが、
彼女は『そんなことは知らない』と言うだけ。

受け持ち医に確認したところ、
彼女は化学療法の自己注射をしているので
針を持ち歩いてる。
ということで、針は彼女自身のものでした。

その後supervisorに報告し、報告書に注射器を添えて提出。
事無きを得てホット胸をなでおろしたのですが。

彼女にそんな話を作らせたのは、
彼女の看護ケアに対する怒りからなのか、
彼女の寂しさからなのか、
末期癌や呼吸困難から来る恐怖感からなのか、

それとも、
マジメに病院を相手に訴訟を起こそうと計画したのか。

彼女にしかわからない事です、が。

これから先もっと辛くなるであろうと予測される彼女の病状。
もっともっと精神的ケアが必要になる事でしょう。

今回のことは自分に非が無いとはいえ、
その注射器が手元に無かったら証明できるものもないし、
やっぱりちょっと焦りました。

解決してホント、よかった。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?