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「規制改革実施計画」とM&A

日本政府は、規制改革によって社会の変革を促し、経済成長を実現しようとしています。本資料は、令和6年6月21日に閣議決定された「規制改革実施計画に基づき、移動、物流、教育、医療・介護、金融など、幅広い分野における規制改革の内容と実施時期を示しています。

これらの規制緩和は、既存の事業者だけでなく、新たなテクノロジーやビジネスモデルを持つ企業に大きなチャンスをもたらします。例えば、タクシー業界では免許取得要件の緩和や地理試験の廃止により、異業種からの参入障壁が下がります。また、オンライン診療の拡大や遠隔教育の活用促進は、医療・教育分野における新たなサービス提供の可能性を広げます。

本資料は、規制改革の全体像を把握し、今後のビジネスチャンスを探る上で非常に重要な情報源となります。各業界の専門家や新規参入を検討している企業は、これらの規制緩和の内容を深く理解し、自社の戦略にどのように組み込むかを検討する必要があります。


規制改革実施計画の概要

規制改革実施計画は、社会の変革と経済成長を同時に達成するための規制改革の計画です。
計画は、移動、物流、観光、公共、教育、健康・医療・介護、農業、通信、金融など、幅広い分野にわたる規制改革の内容と実施時期を示しています。

移動

タクシー業界では、二種免許取得期間の短縮、教習内容の見直し、外国人向け試験の多言語化、地理試験の廃止などが盛り込まれています。自家用有償旅客運送では、株式会社の参画促進、宿泊施設による有償運送の明確化、交通空白地における運用の柔軟化などが検討されています。
自家用車活用事業では、全国的な移動の足不足解消を目指し、ライドシェアの導入も視野に入れつつ、制度の検証と改善が進められます。また、タクシー仲介の適正化、白タク対策の強化、運行管理のデジタル化・遠隔化によるドライバー確保なども進められます。

物流

ドローン配送については、レベル3.5飛行の導入、レベル4飛行の早期事業化、医薬品配送ガイドラインの明確化などが計画されています。
また、物流車両情報の即時把握、駐車規制の見直し、物流情報標準ガイドラインの活用促進なども検討されています。

教育

教育分野では、遠隔教育の活用を促進するため、義務教育段階における遠隔教育時の教員配置要件を明確化し、中学校や高等学校での遠隔教育の実施を柔軟化します。
また、教育関連データの収集・分析を充実させ、エビデンスに基づく効果的な教育政策の立案を目指します。さらに、少子化による高等学校の経営困難に対応するため、各都道府県の指導力を向上させ、就学者の保護を図ります。

健康・医療・介護

医療分野では、オンライン診療の更なる活用・普及を促進するため、診療所の開設要件緩和、精神科・小児科におけるオンライン診療の評価見直し、情報通信機器を用いた精神療法に関する新たな指針策定などが計画されています。また、デジタル技術を活用した新たな医薬品販売業の実現や、先端技術を用いた医薬品開発ツールの要件明確化なども進められます。

介護分野では、要介護認定の迅速化、科学的合理性の確保、事務負担軽減のため、デジタル技術やAIの活用を検討します。また、介護現場におけるタスク・シフト/シェアを推進し、医療職と介護職の連携を強化します。高齢者施設の人員配置基準の特例的な柔軟化や、地域内の複数種類の介護サービスに関する一体的なマネジメントの実現なども検討されています。

金融

金融分野では、銀行によるGX関連事業の推進、会社設立、在留資格認定、社会保険・雇用保険手続きなどの行政手続きの英語対応を進めることで、海外からの投資や人材の受け入れを促進します。
また、公立大学法人によるスタートアップ投資環境の整備や、洋上風力発電設備の設置・保守における外国籍船の利用と外国人材の活用も検討されています。

エネルギー

エネルギー分野では、燃料電池自動車などの水素利用の円滑化を目指し、圧縮水素スタンドに併設される一定規模以下の定置式製造設備や、スタンドに併設されない独立した一定規模以下の定置式製造設備において、選任が必要な保安要員の数を減らす措置が検討されています。
また、家庭用蓄電池の補助制度において、補助対象をJIS規格だけでなく、IECなどの国際規格を満たすものにも拡大する検討や、定置用蓄電池の系統連系に必要な技術要素の明確化、系統連系手続きの簡素化なども進められます。

環境

環境分野では、廃棄物の排出事業者が自ら、または収集運搬業者に委託して、排出場所以外の施設で廃棄物の分別や選別を行う行為について、明確化と周知が行われます。また、機械分別等行為が「処分」に該当するかの判断基準を明確化し、地方公共団体に周知することも検討されています。

不動産

不動産分野では、送配電設備の整備における所有者不明土地の探索・活用を促進するため、不在者財産管理人制度などの申請を円滑化するためのガイドラインが改訂されます。

労働

労働分野では、フリーランスやギグワーカーの労働者性の判断基準を明確化し、デジタル技術の活用などを踏まえた解釈を行います。また、業務委託の発注者が安全管理や健康確保のために就業者に行う連絡について、労働者性を肯定する方向に働くものとそうでないものを整理し、周知します。
さらに、労働者性に関する相談窓口の整備や労働基準監督署の対応明確化など、労働者性の判断が適切に行われるための措置も検討されます。

労働者の副業・兼業を促進するため、労働時間通算管理の在り方や競業避止義務の内容が検討されます。また、「自爆営業」の根絶に向けて、関係法令上の論点整理、周知活動、パワハラ防止指針の改正検討などが行われます。

スタートアップ

スタートアップの成長を促進するため、規制改革関連制度に関する情報発信の強化、諸制度間の連携強化、透明性向上などが図られます。具体的には、グレーゾーン解消制度やノーアクションレター制度の活用促進、国家戦略特区における特例措置の全国展開検討、公証人公募における情報公開などが挙げられます。

会社法

会社法に関しては、主にスタートアップの資金調達とM&Aに関する改正が検討されています。

  1. 株式報酬の無償交付: 従業員等に対する株式報酬の無償交付を可能にする改正が検討されています。優秀な人材の確保を促進するため、従業員等への無償交付を認める方向で、会社法の改正が検討されています。

  2. 株式対価M&Aの活性化: 株式対価M&Aの利用範囲拡大と手続き簡素化のための改正が検討されています。具体的には、買収会社が上場会社の場合の反対株主の株式買取請求権の撤廃、外国会社買収への利用拡大、子会社株式追加取得や連結子会社化への利用拡大などが検討されています。

金融商品取引法

金融商品取引法に関しては、主にスタートアップの資金調達に関する改正が検討されています。

  1. 株式報酬の発行円滑化: 1億円以上の有価証券発行における有価証券届出書の提出不要とする特例制度の活用範囲拡大、利便性向上などが検討されています。具体的には、譲渡制限付株式ユニット(RSU)、パフォーマンスシェアユニット(PSU)、信託型株式報酬などの新たな株式報酬類型の追加や、付与対象者の範囲拡大などが検討されています。

  2. 開示書類の記載事項の見直し: 企業が報酬目的で株式を第三者割当により発行する場合の開示書類におけるプライバシー情報の記載について、退任者・退職者の情報も不要とする改正が検討されています。

これらの改正は、スタートアップが優秀な人材を確保しやすくし、資金調達を円滑にすることで、スタートアップの成長を促進することを目指しています。

考えられるM&A

移動

  • 配車アプリ企業によるタクシー会社の買収:配車アプリ企業がタクシー会社を買収することで、自社アプリと連携したタクシーサービスを展開し、効率的な配車や顧客管理を実現できます。

  • MaaSプラットフォーマーによるタクシー会社の買収:MaaSプラットフォーマーがタクシー会社を買収することで、タクシーを自社のプラットフォームに統合し、他の交通手段との連携を強化できます。

  • 自動運転技術企業によるタクシー会社の買収:自動運転技術企業がタクシー会社を買収することで、自動運転タクシーの実用化を加速させ、新たなモビリティサービスを創出できます。

物流

  • ドローンメーカーによる物流会社の買収:ドローンメーカーが物流会社を買収することで、自社開発のドローンを活用した配送サービスを展開し、新たな物流網を構築できます。

  • IT企業による物流会社の買収:IT企業が物流会社を買収することで、物流システムのデジタル化を推進し、効率的な物流管理を実現できます。

  • 小売企業による物流会社の買収:小売企業が物流会社を買収することで、自社商品の配送網を内製化し、配送コストの削減や配送効率の向上を図れます。

  • IT企業によるラストワンマイル配送企業の買収:IT企業がラストワンマイル配送企業を買収することで、配送経路の最適化や配送状況のリアルタイム追跡など、デジタル技術を活用した配送サービスの高度化を図れます。


教育

  • EdTech企業による学習塾・予備校の買収:EdTech企業が学習塾や予備校を買収することで、オンライン教材やAI学習システムなどを既存の教育サービスに統合し、学習効果の向上や個別最適化された学習体験を提供できます。

  • 教育系出版社によるオンライン教育プラットフォーム企業の買収:教育系出版社がオンライン教育プラットフォーム企業を買収することで、自社の教材コンテンツをオンラインで配信し、新たな顧客層を獲得できます。

医療・介護

  • オンライン診療プラットフォーム企業による医療機関の買収:オンライン診療プラットフォーム企業が医療機関を買収することで、オンライン診療サービスを自社プラットフォームに統合し、患者の利便性向上や医療アクセスの拡大を図れます。

  • IT企業による介護事業者の買収:IT企業が介護事業者を買収することで、介護記録システムのデジタル化や介護ロボットの導入を推進し、介護現場の業務効率化を実現できます。

  • IT企業による調剤薬局の買収:IT企業が調剤薬局を買収することで、処方箋の電子化や服薬指導のオンライン化などを推進し、薬局業務の効率化を図れます。

金融

  • 銀行によるフィンテック企業の買収:銀行がフィンテック企業を買収することで、新たな金融サービスを開発・提供し、顧客基盤の拡大や収益源の多角化を図れます。

  • 証券会社によるPTS運営企業の買収:証券会社がPTS運営企業を買収することで、非上場株式市場におけるプレゼンスを高め、新たな収益機会を創出できます。

エネルギー

  • 電力会社による蓄電池メーカーの買収:電力会社が蓄電池メーカーを買収することで、再生可能エネルギーの出力変動に対応するための蓄電池システムを自社で開発・運用し、安定的な電力供給を実現できます。

  • エネルギー関連企業による水素関連企業の買収:エネルギー関連企業が水素関連企業を買収することで、水素製造技術や水素燃料電池技術を自社に取り込み、水素エネルギービジネスを展開できます。

環境

  • 廃棄物処理企業によるリサイクル技術を持つ企業の買収:廃棄物処理企業がリサイクル技術を持つ企業を買収することで、廃棄物の再資源化率を高め、循環型社会の形成に貢献できます。

  • 環境コンサルティング企業による環境技術開発企業の買収:環境コンサルティング企業が環境技術開発企業を買収することで、自社のコンサルティングサービスに新たな技術を取り込み、顧客への提案力を強化できます。

不動産

  • デベロッパーによる空き家再生事業者の買収:デベロッパーが空き家再生事業者を買収することで、空き家の有効活用を促進し、地域活性化に貢献できます。

  • 不動産管理会社による不動産テック企業の買収:不動産管理会社が不動産テック企業を買収することで、不動産管理業務の効率化や新たな不動産サービスの開発を推進できます。

労働

  • 人材派遣会社によるフリーランスプラットフォームの買収:人材派遣会社がフリーランスプラットフォームを買収することで、多様な働き方を求める人材への対応力を強化し、新たな収益源を確保できます。

  • 企業による副業・兼業支援サービス企業の買収:企業が副業・兼業支援サービス企業を買収することで、自社従業員の副業・兼業を促進し、従業員のスキルアップやキャリア開発を支援できます。

まとめ

政府は、規制改革を通じて、国民生活の安定・向上、経済活性化、そして国の成長・発展を目指しています。この計画が着実に実行され、新たなイノベーションやサービスが生まれることで、日本経済が活性化し、国際競争力を強化していくことが期待されます。

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