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Publica時代の編集者について考えてみた

今日、Publicaというものを知りました。

ざっくり言うと、ブロックチェーンを使って著者がお金を出してくれる「支援者」を集め、書籍の作成に必要なスキル(イラスト・デザインなど)を提供してくれる「協力者」に直接仕事を依頼できるプラットフォームです。

書籍が購入されるたび、著者だけでなく制作に関わった人全員に自動で収益が分配される、らしい。(私の残念すぎる英語力では原文のサイトをあんまり理解できませんでした。。。)

読者は本を読む権利(アクセスキー)を仮想通貨で購入し、また売却できるとのこと。

「非効率な出版業界に革命を起こし、著作家がビジネス上の選択肢を持てるようにする」

というのがPublicaの狙い。

Publicaを知って私が考えたのは、このプラットフォームにおいて「編集者の役割は何になるのか?」ということです。

たとえば、ある人が「本を書きたい」と思った場合。まず、本人が有名であれば支援者は一定数集まります。また、もしその人が過去に本を出版したことがあれば、自分の本が出来上がるまでに何を誰に頼めばいいのか、が分かっているので、デザイナー、ライター、校正等も依頼できるでしょう。

そもそも、本の作り方なんて検索すればわかります。初めて出版する人でも「誰に何を頼めばいいか」はちょっと調べればすぐに分かるのです。また、書籍の仕事を受ける側も当然、著者に選んでもらえるように情報発信をするようになると思います。つまり、書籍制作の発注は

となると、自発的に「本を出したい」と思った著者は、特別「編集者と一緒に本をつくりたい」と思わない限り、自力で出版が可能です。(今でもそうですが)。

では、著者が編集者と一緒に本をつくりたいと思うのはどんな場合か。大きく以下の2つがあると思います。

①単純に手間を省きたい場合(デザイナーへの依頼・データのやり取り等を任せる)

②作品の質が上がる場合(編集者のフィードバックにより、自分ひとりで作るよりもいいものが出来ると期待がある)

ここで重要なのは②だと思います。「この人と組んで仕事をしたい!」と思われる知名度と実績のある編集者には著者から依頼が殺到するはずです。(もちろん、現在の書籍・雑誌だけでなく、Publica上でも結果を出す必要があります)

一方、著者ではなく編集者の側からPublicaを見た場合。興味深いのは、自分が立てた企画が支援を集めれば、出版できるという点です。いわば公開編集会議。決済者は編集長でも社長でもなく、支援者たち。企画が「読者」あるいは「世に出してほしい」と思う人の支持を得れば、好きなように本をつくることができます。

極論を言えば、1人の支援者が制作に必要な資金を全額出してくれれば、その1人のために本をつくることだってできます。

仮に1000円の本ならば「全国で5000部以上売れなければ赤字」という状況が紙の本では起こります。それがPublicaでは同じコストがかかったとしても、「1万円で500人、あるいは100円で50000人が読めばOK」ということになります。

これは、価格と対象読者層設定の自由度が高まり、今までとは違う角度からの企画も成立するはずです。

そこで編集者として重要になってくるのは、企画力であり、構成力であり、書く気のない著者を口説く交渉力です。

そしてもうひとつには、「この編集者が出す本なら読みたい」と思われるよう、編集者個人も一定の支援者を集めておくことです。

ただ、私としては個人で上手く支援者をつくれる編集者というのはごく一部だと思います。

その代わり、個人ではなく、出版社あるいはレーベルでブランディングを強化し「この出版社の本なら次も支援したい」という固定ファンをつくることが必要になるはずです。

この先Publicaあるいは先日書いたALISがどうなるのか分かりません。

ただ、いつの間にか変化に取り残されないように、自分なりにこれからも編集という仕事の将来について考えていきたいと思います。










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