亡き父が見せてくれたもの。
ふと、ある映像が浮かんだ。
それは、こっちを向いて嬉しそうに笑っている子どもの頃の私、
花嫁衣装を着ている私、
母になって息子を抱いている私。
それは、私を見る父の目線だった。
最愛の父が今年の1月に亡くなった。
1ヶ月以上入院していたのだが
感染予防のため病棟はシャットアウトされていて
一度も会えなかった。
いよいよの時にはご連絡します、と言われていたが
母と妹と私が駆けつけたときには
もう息を引き取っていた。
最期のときまでずっとひとりで、寂しかっただろうと
家族で泣いて泣いて泣いて
そして、笑って見送った。私たち家族は、いつも笑っていたから。
頑固だが温かくてやさしい父。
4人の孫たちに囲まれた幸せな笑顔の写真を遺影にした。
四十九日、納骨・・・
写真の父は、いつも穏やかだ。
ずっと家族に会えなかったことは
たまたまそういう時期やったんや、しゃあない、と
ひょうひょうと受け止めているにちがいないとわかっている。
でも、心の奥に引っかかるなにか。
私はやはり、父が最期に家族と言葉も交わせず、見守られることもなく亡くなったことがかわいそうで、心のこりだったのだ。
が、今朝ふと浮かんだ父の目線は幸せに満ちていた。
私の成長を心から喜び、ずっと愛してくれた父。
父は今生を生ききって、味わいきって、天に還っていったのだ。
父のあふれる愛を受け取ったような気がした。
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