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昨年の歌壇賞

歌壇賞の締め切りもうすぐなのに全然終わってないから去年の作品を挙げてモチベあげます。歌会始はもう封筒に入れた。


第34回歌壇賞落選作品 君の目



どなたかがいいねを押してくれた日は私が歌をうたっていた日


おくすりのアラームとめてつつがなく女でありたいと願う合図


電線がつくる楽譜を歩いてく君が奏でる音を知りたい


僕のお葬式に来る約束をした中学の時好きだった人


雨支度 ただの周波であるはずの声から君を忘れてゆこう


白線の上を歩いて夕焼けを正しく浴びる作法 黒髪


紫のカップを少しかき混ぜて明朝体が溶けゆくのを待つ


ソ連史の補講あり 世界史Bに飲み込まれている彼らも抱く


掛け声でサッカーゴールを持ち上げる両手の痛みに従った真夏


僕らしくいることを僕が止めるのだ 東横線7号車に並ぶ


夏の匂いに苦しくなる民俗病を治さずにまた 梅雨明けの風


まつげには束感を付けましょうという面倒くさい流行り 青春


美しくないから僕は人の間に揺られて海月のようにしてみる


蕁麻疹患う肌に蚯蚓腫れ もしもタトゥのようになったら


かわいいの概念をお腹に入れて 君もかわいいって目をしている


死にたい?と試し書かれた片隅にいいえと試し書きをしてみる


二十歳から顔に塗るべきものが増え人気1位の下地を手にとる


油断せよ就活生 少しだけわかる未来は未来じゃないから


僕がさも鬱になるような口ぶりで鬱にならないハウツーを説く


腫れた目のぼくの歩幅を追い越して東に向かって雨雲がゆく


均等な煙突は虹色を吐き等しい僕らを上から見下ろす


僕の手にアイスクリーム溶け出して生活に沈む叫び ぼたぼた


受話器から妹の泣き声がして 私たちあの日家出したよね


死ぬときに僕は死んだと思いたい 豚バラを5センチ幅に切る


皮膚科にて 検温カメラに届かない我が子を持ち上げる父の腕


命とか語る音楽に期待して再生マークを押したりもする


作り置きできる女になりたくて焼きおにぎりを凍らせる晩夏


僕を見て 僕を見ないで 結ばれたスケール7から8の髪色


猛毒と化す真夜中のSNS ケトルに注ぐ水の音だけ


なにものかにはなりたくて君の目は僕をなにものにするのだろうか



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