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「劇」という字の持つ意味は。《毎日日記40》

「劇」という漢字の意味を教えてくれたのは、劇作家の如月小春さん。私が高校生の時に、市が主催する演劇ワークショップに参加した時のこと。

「劇」という漢字は、「劇薬」とか「劇物」とか、「激しい」何かを意味する。モーパッサンの『女の一生』という作品は、2時間程度の舞台で演じられることもあるが、人の一生を2時間で語れるわけがない。その人の一生の中の、「劇」=「激しく何かが起きた時」のことを取り上げてつなげて芝居にしている。だから2時間で表現できる。それが、「演劇」。

小春さんはこのように説明されたと思います。なるほど、「劇」なるものを「演じる」のが、「演劇」。当時、演劇部に所属する高校1年生だった私にとって、この説明はたいそうしっくりくるものでした。そして同時にこのようにも思いました。

「芝居作りそのものが、『劇』だな」

と。

部活動とは言え、お客さんを呼んで観に来てもらうような公演を、年間6~7回やる演劇部は、まさに毎日が「激しい」ものでした。地域的にも全国大会まで行くような実力ある演劇部が密集しているエリアで、活動もかなり活発でした(私のいた高校は毎年地区大会止まりでしたが……)。演劇部って文化系クラブ?いやいや。毎日毎日、筋トレと走り込みと発声練習をして夜9時まで稽古してるような、ある意味運動部よりもよほど「激しい」部活でした(今思うと猛烈な長時間労働していた顧問の先生が気の毒…)。

常にやることも考えることも山積みだったし、「1公演で1年分、歳を取るような気がする…」と、当時16歳の私は本気で思っていました。卒業する頃には、えらく精神年齢の老けた高校生になっていました(笑)

役者もやりつつ、スタッフ業務としては「舞台監督」に燃えていました。その芝居作りそのものの、裏方の何でも屋です。日々の練習のタイムテーブルを組み、役者のコンディションを確認し、スタッフ会議やリハーサルなど本番までのスケジュールを組み、こまごまとした準備物を揃え、役者やスタッフのチームワークがうまくいくようにあれこれ頭を使い、舞台設営の指揮を取り、本番は開演前のアナウンスだの終演後のカーテンコールだのを引き受け……

つまり、今の私です(笑)
大事なことは全部、演劇部に教えてもらいました。

***

昨日、「日常に波瀾万丈を」ということを書きましたが、要するに「劇」的な日々を送りたいのだと思います。私が。

学習塾講師が天職だ!と思うのも、受験という「劇」的なことと毎日向き合う職業だったからかな、と。「劇」慣れしていて、「劇」好きでないと、毎年毎年「受験生」な気分の職業って、相当疲れるので続かないと思います。

そして受験よりもっと「劇」的なもの。

それは、「子どもの成長」。
特に、「幼児の成長」。

60分の授業をしたら、最初と最後で子どもは別人です。凄まじい勢いでいろんなことを吸収し、能力を開花させ、才能を伸ばしている。これを「劇」と言わずして何と表現するのでしょうか。

その「劇」的な現場に常にいられるので、私は子育てサークルやパズル教室が楽しいのだなぁ……と思うのです。

それにしても、「劇」という漢字、成り立ちも激しいです。「虎と豚の取っ組み合い」を意味する左半分に、右半分は「刀」を意味する「りっとう」。うん。この漢字すごく好き(笑)

「あなた、あれこれいろんなことやってるけど、そのパワーの源は何なの?」とよく聞かれます。

自覚ないので聞かれる度に「え~っと……」となって、うまく答えられないのですが……

とりあえずの返答としては、

『劇』的な現場にいつもいたいという思い

でしょうか。そこからパワーがやってくる気がします。

※如月小春さん、今どうしていらっしゃるのだろうと思ってググったら、私がワークショップを受けたそのわずか3年後にくも膜下出血でお亡くなりでした……ショック(涙)ご冥福をお祈り申し上げます。

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