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巨大な大陸とマーケットへ挑んだブリティッシュ・ハード・ロック

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今回、ご紹介するのは、ブリティッシュ・ハード・ロックです。

ロック・ミュージックは、60年代後半から70年代前半に掛けて、数多のミュージシャンによって多種多様なスタイルが確立され、ロック・シーンは、非常に多面化していきました。

そうした状況下において、主流となったジャンルは、ハード・ロックでした。

ハード・ロックは、各バンドの特色から多角的に発展していくのですが、その基礎的なスタイルは、ブルース・リヴァイヴァルのバンドのサウンドから発展(1)し、ブルースやフォーク・ロックのルーツとの関連を密接に維持(2)しています。

先日は、そうした始点を軸にしてルーツ・ロック系統のハード・ロックを取り挙げました。

今回もその始点を軸にしつつ、ディストーションとフィードバック(3)という特徴も参照しながらセレクトしてみました。

彼らのギターサウンドは、レコーディング/PA機材の発達とも重なり、かなりアンプリファイドされた特質を兼ね備えていました。

イギリスのハード・ロックは、ロック・シーンの産業やテクロノジーの発展と共に、国内における乱立と競争を経て、そして、国外への進出と拡大から進展していきます。

同ジャンルの代表格であるレッド・ツェッペリンは、まさにその象徴的な存在であり、アメリカの巨大なマーケットにおけるプラチナ級のレコードセールスと大規模なスタジアムライヴから破格の成功を収めていきました。

ZEPの大躍進を受け、新旧問わず、多くの英国産バンドが追従しましたが、アメリカという巨大な大陸での栄光と挫折があり、そして、栄枯盛衰というロック・ミュージックにとって避けられない運命も待ち受けていました。

ブリティッシュ・ハード・ロックは、そのような時代のうねりの中で世界観の広がりや強度の増進と共に、ロック史において印象深い一時代を築き上げ、ロック像に対する一般的なイメージを形成したという意味においても、重要なジャンルとなったのです。

『Led ZeppelinⅡ』/Led Zeppelin(1969)
作品評価★★★★(4stars)

ブルース・ロック・シーンから突然変異のように生まれたこのバンドは、評論家の批判を物ともせず、誇大広告とハードスケジュールの渦中で進化し、ビートルズ解散後における最初の冠帯を熱狂的なオーディエンスから授かった。

同年リリースの1stに引き続きペイジ主導の2ndは、ダイナミズム炸裂のヴォーカリゼーション/プレイスタイルとその粗削さによって、結果的にブルース・ロック/ハード・ロック/ヘヴィメタルの三つ巴となり、エッジが際立つ異質なロックに仕上がった。おそらくキースやクラプトンもあんぐり。

古典ブルース/フォークからの強引な引用とその独自の解釈は、最高傑作を争う『III』と『IV』で完成をみたツェッペリン。たが、恐ろしいことに、後期に掛けてレゲエ/ファンクやインド/中東音楽すら咀嚼したこの連中は、よりオルタナティヴな怪物グループへと化していくのである。

『Tommy』/The Who(1969)
作品評価★★★★(4stars)
参考
『The Live 'Bootleg'album』
作品評価★★★★(4stars)

第二次大戦後に生まれた最初の世代のフーが社会に対して抱えていた違和は、ある種の破壊意識となり、それは、デンジャラスなパフォーマンスによって体現されてきたが、バンドの転機が訪れたのは、リーダーであるタウンゼントのインドの導師に対する帰依からであった。

ロック史におけるまさに古典の一つである今作は、いわゆるロック・オペラとして重層的に展開され、ピンボールの魔術師トミーの奇譚が家族や宗教のエピソードを通して断片的に描かれているのだが、この作品の本質は、同作家の命題である社会への倫理に関する問いかけだ。

70年代のフーは、更なるロック・オペラの具現化をいくつか試みるが、最も真価を発揮したのは、アルバムの再現化を図ったライヴであり、各公演で魅せたそのハードな演奏力とサウンドは、ロックンロールの真の代弁者として相応しいものとなった。

『Arthur (Or the Decline and Fall of the British Empire)』/The Kinks(1969)
作品評価★★★★(4stars)

マスウェル・ヒルが生んだ現代の英国社会の語り部は、喧騒的なシーンと距離を取り、そのアイロニカルな視点とノスタルジックな思郷から身の回りの小さな世界を描写し続けたが、二度目となる米国への進出を機に、再び賽は投げられた。

制作予定だったテレビミュージカルのサントラとして脚本家と共にコンセプトを練り上げた今作は、世界大戦に翻弄されてしまったアーサー一家の悲喜交交な生活模様がシンプルシティなロックンロールを通して展開され、作家デイヴィスは、その寓話的な舞台装置によって、かつて栄華を極めた国家の斜陽と黄昏を再現させてみせた。

オペラ・ロックに活路を見い出したキンクスは、70年代半ばまで私小説/風俗小説的な喜劇を重ねるが、その音楽的/演劇的な成熟と共に、シーンからは緩やかに後退していく・・・が、ヴァン・ヘイレンのカヴァーによって返り咲き、商業的な成功を収める事なんて一体誰が予期出来ただろうか。事実は小説より奇なり。

『Black Sabbath』/Black Sabbath(1970)
作品評価★★★★(4stars)

英ブルース・ロックの異教徒であるこのバンドは、同ジャンルに対して義指のギタリスト/アイオミによる変則的なアプローチやオカルト映画の世界観や工業都市の鬱屈が投影された結果、生み出されたのは、メディアから酷評の奇妙かつ異形のジャンルであった。

ヘヴィ・メタル/ドゥーム・メタルにおけるまさにバイブルである処女作は、理解者であるロジャー・ベインと共に、短期間のセッションで制作され、ブラック・サバスは、カトリックの教義から逸脱する悪魔と黒魔術への崇拝、つまりある種の中世への回帰やロマン主義的な観念の下、ゴシック的な虚構世界を再興してみせた。

その後のサバスは、商業性とそれへのアンチテーゼを併せ持つ重低音によって、多くの狂信者を魅了したが、やがてオズボーンの重度のポンコツ化で求心力を失った。が、しかし、近年の狂熱的な再評価は、オルタナ界隈にまで及び、彼らは、米国に最も影響力を与えた英国産バンドの一つとさえなったのである。

註(1)(2)(3)キャサリン・チャールトン『ロック・ミュージックの歴史 下 スタイル&アーティスト』佐藤実訳、音楽乃友社(1997)

それでは、今日ご紹介したアルバムの中から筆者が最も印象的だった楽曲を!



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