ロック史において最もヒップだったモッズ/ガレージ・ロックの愛すべき不良たち
今回、ご紹介するのはモッズとガレージ・ロックです。
モッズは、流行としては短期であったにも関わらず、その後のロック・シーンにおいて一部の要素が取り入れられた形で、リヴァイヴァルを繰り返していくイギリスの代表的ユースカルチャーです。
他方、ガレージ・ロックもブリティッシュ・インヴェイジョン直後、アメリカやオーストラリアなどで見られた一時的な現象でありながらも、その後のロック・シーンに影響を与えて続けていく重要なジャンルです。
モッズとガレージ・ロックの共通点は、ブルース/R&Bの影響を汲んでいるブリティッシュ・ビートの延長線上にある音楽性であり、その特徴としては、アングロサクソン特有と言って差支えがない非常にスリリングなサウンドを兼ね備えている事が挙げられるでしょう。
60年代半ばに一瞬強く燃え上がったこの二つのカルチャーあるいはジャンルは、90年代以降においても根強いファン層を持ち続けていました。それは、裏を返せば、ロック史においてモッズとガレージ・ロックが最もヒップな瞬間であったという事実の表れなのかもしれません。
The Who/『My Generation』(1965)
作品評価★★★★☆(4.5stars)
実質二度目のデビューとなったモッズバンドによるファースト・アルバムは、ロック・ミュージックにおける最初のアンセムを騒々しく鳴り響かせることで、ロック史における見事な記念碑となった。
きな臭い連中によって周到にプロモートされたこの名盤は、秀才ピート・タウンゼントによって練られたポップかつ含みを持つ楽曲、ライヴ時は危険な楽器破壊も伴う型破りな演奏、旬なシェル・タルミー産のサウンドによって形成されている。
今作リリース後のフーは、コンセプト・アルバムの制作に執着していく中で典型的なモッズ・バンドから逸脱した。そして、米モントレー・ポップ・フェスティバルにおけるフラワーチルドレンへの悪態を示す破壊的なパフォーマンスで混沌とするシーンからの生き残りを果たしていく。
Small Faces『Small Faces』(1966)
作品評価★★★★(4stars)
東ロンドンから現れた真正のモッズバンドは、西ロンドンから鳴り物入りでデビューしたフーを対抗馬に当てられる事となったが、勝ち馬に食らいついていく形で、競争がとても激しいシーンにおいてヒットを飛ばした。
ソロシンガーとしての経歴も持つ本格派ヴォーカリストを擁する彼らは、名キーボーディストの加入によって他のバンドより抜きん出たモッドな存在感を示し、シーンの主役を務めるフーと肩を並べた。
スモール・フェイセズは、アメリカでのブレイクは果たせず、その後、各々、アーシーなハードロックバンドへと枝別れしていくが、彼らが掛け値なしに最も魅力的であったのは、この華やぐスウィンギング・ロンドン期だった。
The Sonics『HERE ARE THE SONICS!!!』(1965)
作品評価★★★★(4stars)
西海岸北部ワシントン州出身のこのローカルバンドは、ガレージ・ロックの発火点を放つと同時に、衝動的に録音されたデビュー盤において同ジャンルの完成形を既に提示していた。
ドラッグの服用からもたらされるハイなロックンロールナンバーの連射は、聴き手へ容赦のない揺さぶりを掛け、ヘヴィなバンドサウンド、特にロック史においても屈指の硬質なドラムサウンドは必聴に値する。
ソニックスは、実質的なキャリアに関して言えば、数年足らずではあったものの、オルタナ世代/リヴァイヴァル世代にまで引き継がれるカルト的な名盤となった今作は、ロックンロールが息づく限りにおいては決して風化する事はないであろう。
The Shadows Of Knight『Gloria』(1966)
作品評価★★★(3stars)
モダン・ブルースの拠点であるイリノイ州シカゴから現れたこの5人組は、ブリティッシュ・インヴェイジョンに対するUSガレージ・シーンからの返答を直接的に示したバンドである。
ストーンズもしくはヤード・バーズ風のルックスと音楽性を兼ね備えた10代の若者達は、王道なアーバン・ブルースナンバーを中心にブリティッシュ・ビートの解釈で演奏し、それなり成果を収めていた。
サイケデリック・ロックへの移行期、ブルース/R&Bに根差した多くのUKビートバンドが苦戦を強いられる状況下、シャドウズ・オブ・ナイトも試行錯誤の中で好盤をリリースするものの、やはりチャートの結果は振るわず、自然消滅せざるを得なかった。
最後に、今日ご紹介したモッズ/ガレージ・ロックのアルバムから一曲セレクトしてみました。
あまりに王道となってしまいましたが、やはりロックを最も代表するナンバーの1つという事で!
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