魔法を宿したフォーク・ロックと熱気を帯びたブルース・ロックの到来
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欧米のポップ・シーンにおいて覇を称えたブリティッシュ・ビートの影響は、フォーク/ブルース・シーンにも及び、やがてフォーク・ロックとブルース・ロックへ派生していく事となりました。
当時、フォーク・シーンは、ニューヨークのコーヒーハウスを拠点に、首謀者のピート・シーガーによる啓蒙と若者世代のフォークグループ達のヒットシングルからカレッジの学生を中心に支持を集めていました。
他方、ブルース・シーンは、ロンドンのジャズクラブなどを根城に、伝道師アレクシス・コーナーによるオーガナイズとシカゴのブルースマン達の巡業から愛好者の広がりをみせていました。
ビートルズやローリング・ストーンズらによるブリティッシュ・インヴェイジョン後に台頭し始めたフォーク・ロックとブルース・ロックは、シーンの中で脈々と伝承されてきたテーマや技法等を踏まえて成立へと至ります。
フォーク/ブルースが持つ文学性や創造性を経たロック・ミュージックは、ベトナム戦争や公民権運動によって危機の時代を本格的に迎えた米国社会に対し、ユースカルチャーから一つのアティチュードを示す事となりました。
Bob Dylan/『Bringing It All Back Home』(1965)
作品評価★★★★(4stars)
ロック史に重要な1ページを刻んだ今作は、社会運動の代弁者とされる事を拒んだ時代の寵児がプロテスト・フォークからロックンロールへ転向する事によって創作された作品である。
ウディ・ガスリーの精神性とビートニクのポエトリーリーディングの感性を持つボブ・ディランのビートは、ストーンズ風のダーティーなルックスが象徴するように、ワイルドな方向性への傾倒から独自性をより強めていく。
フォーク純粋主義者から"Judas"という強烈な揶揄を浴びせられたディランは、罵倒に対する反発からロックサウンドを更に強化させ、間もなく発表した次作は、ロック史を最も代表する傑作の1つに仕上がった。
The Byrds/『Mr. Tambourine Man(+6)』(1965)
作品評価★★★★(4stars)
ビート族の東海岸から西海岸への移住と機を一にするように、ロサンゼルスのコーヒーハウスに集ったフォーク/ブルーグラス好きの青年達は、ヒッピーカルチャーの訪れと共に、魔法のようなギターポップスをつくり上げた。
クラーク/マッギン/クロスビーら3名のソングライター/ギタリストを擁するバーズは、現行のフォークとブリティッシュ・ビートを見事なアレンジワークで融合させ、彼らが織りなすハーモーニーは、引用元であるディランやビートルズさえも虜にする。
ウエスト・ハリウッドのバーズは、同時期、グリニッジ・ビレッジから現れたラヴィン・スプーンフルと対をなし、両グループによるフォーク・ロックは、ブリティッシュ・インヴェイジョンに対するアメリカからの明確な回答となった。
The Paul Butterfield Blues Band/『The Paul Butterfield Blues Band』(1965)
作品評価★★★★(4stars)
モダン・ブルースのメッカから現れたユダヤ人を含む白人/黒人の混合編成によるヒップなブルースバンドの登場は、ハイスクールやステートスクールの不良達を感化させ、シカゴ・ブルースを一躍彼らのバイブルとした。
ポール・バターフィールド・ブルース・バンドの処女作は、黒人用のクラブにおける夜毎のセッションに裏打ちされたスリリングかつダンサブルな演奏力が反映され、アートワークのイメージも相俟ってストリートの雰囲気を漂わせている。
PBBBのキャリアは、商業的な成功とはほぼ無縁だったが、ディランとの共演後、彼らが発表した2ndは、ギタリストのブルームフィールドの創造力が惜しみなく発揮され、ブルース・ロックの一つの到達点と呼べる革新的な作品となっている。
John Mayall & The Bluesbreakers With Eric Clapton/『John Mayall & The Bluesbreakers With Eric Clapton』(1966)
作品評価★★★★(4stars)
ロンドン発となるブルース・リヴァイヴァルは、ムーヴメントの仕掛け人であるマイク・ヴァーノンが設立した自主レーベルに端を発するが、引火点となったのは、シーンの兄貴分であるジョン・メイオールが指揮を取る硬派なグループだ。
元ヤードバーズの神童ギタリストを迎えたブルースブレイカーズによる話題作は、"CLAPTON IS GOD"という巷の落書きの通り、レスポールサウンドからスローハンドを披露するエリック・クラプトンの独特な個性が十二分に発揮されている。
メイオールのグループは、コ-ナーが統率するブルース・インコーポレイテッド同様、門下生の出入りが繰り返されたが、フリートウッド・マックの面々が名を連ねた次作は、ブルース・ロックのマニアが愛する逸品の一つとなった。
最後に、今日ご紹介したフォーク/ブルース・ロックのアルバムの中から筆者が印象的だった一曲セレクトしてみました♪
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