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ロック・ミュージックの歴史を決定付けたブリティッシュ・インヴェイジョン

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©English Wikipedia

ロック・ミュージックの歴史は、英国産のビートグループ達が米国のポップシーンを征圧したブリティッシュ・インヴェイジョン以降、本格的な進展をみせていく事となりました。

1964年から約3年間に渡って巻き起ったこの旋風は、イギリスの各主要都市で活動するバンドと彼らの背後でマネージメントを務める音楽業界の野心によって仕掛けられたムーヴメントでした。

当時、英国社会は、基幹産業の「国有化」(1)から戦後復興を果たし、「ゆりかごから墓場まで」(2)と呼ばれる社会保障制度が敷かれ、安定した生活環境の下にありました。

ブリティッシュ・ビートは、モラトリアムという将来に対するある種の余裕を手にした最初の若者世代によってその火蓋が切られました。

彼らによる既存の社会に対する小さな反抗は、先進各国の10代の若者達を特に刺激し、商業的な成功を収めると同時に、文化的な影響力をも及ぼし、そして、新世代によるモダン・ミュージックは、やがてロックとして定義付けられる事となりました。

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『With the Beatles』/The Beatles(1963)

作品評価★★★★☆(4.5stars)

リヴァプールから現れたブリティッシュ・インヴェイジョンの主役は、ロックンロールの復活を高らかに告げ、新たなポップ・ミュージックのスタイルであるロックへの進化を誇らしげに掲げてみせた。

デビュー作を経て、強度と精度を上げたビートルズは、各国にて発表された1stの原型となる今作2ndにおいて、米国産の黒人ガールズ・グループによるドゥーワップやモータウンをよりモダンなマージー・ビートとしてリメイクした。

エド・サリヴァン・ショーを機とするFab4の熱狂は、ニューヨークのシェイ・スタジアムで一度ピークに達した。しかしながら、20世紀のポピュラー・ミュージックを最も代表する存在となる彼らは、同時期、ロックの持つ可能性をアート指向によって追求し始めていた。

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The Dave Clark Five/『Glad All Over』(1964)

作品評価★★★☆(3.5stars)

トッテナムから現れた親しみのあるキャラクターを持つこのグループは、キャッチーなナンバーの量産でUSチャートを駆け回り、人気面においてはビートルズの対抗馬となった。

ハモンドオルガンを響かせるボーカリストとバンドのプロデュースを務めるドラマーから構成されるデイヴ・クラーク・ファイヴは、サックスフォーンを導入した厚みのあるビートで米国のポップマーケットの旺盛な需要に応えた。

アメリカで一山当てたDC5は、それ以後、本国とオセアニア周辺に出戻り、典型的なビートブームの残党となるが、06年におけるロックの殿堂入りは、ニューヨークのカーネギー・ホール公演に象徴される当時の彼らの快進撃を物語る。

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The Animals/『The Animals』(1964)

作品評価★★★☆(3.5stars)

英国北部の工業都市ニューキャッスルから現れた米国音楽へ傾倒した青年達は、輸入されたフォーク/ブルースの印象的な再カヴァーを本国へ改めて投函し、現地のシーンを揺るがした。

語り部エリック・バートン率いるアニマルズは、ハモンドオルガンを軸とし、安定感のあるブルース/R&Bを展開し、ストーンズやヤードバースに代表されるロンドンのスリリングな一派とは異なる堅実な解釈を提示した。

フラワー・ムーヴメントの訪れと共に、サンフランシスコに活動の拠点を移した彼らは、バートンの性向がより色濃く反映されたグループへと変革し、60年代半ば以降、大きく揺れるロックシーンを渡り歩いていく。

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The Kinks/『The Kinks(+12)』(1964)

作品評価★★★★(4stars)

後世のロック史においてブリットポップの父となるレイ・デイヴィス率いる"Kinky"、つまり拗れのあるバンドは、ロンドン北部の住宅街マスウェル・ヒルから現れた。

数あるブリティッシュ・ビート勢において素行不良な面も併せ持つキンクスは、シェル・タルミーのプロデュースの下、歪みのあるハードなギターサウンドから瞬く間にヒットを飛ばし、ガレージ・ロックの先駆者となった。

ブリティッシュ・インヴェイジョン時、見舞われたトラブルからアメリカに対する嫌悪感を覚えたレイは、それ以後、古き良き伝統的な英国文化へと回帰していく。そして、自国において華やぐスウィンギング・ロンドンに対する諷刺もきかせながら、自身の文学的な作家性を花開かせた。

註(1),(2)君塚直隆『物語 イギリスの歴史(下)』中公新書(2015)

最後に、今日ご紹介したブリティッシュ・ビートのアルバムの中から筆者のお気に入りの楽曲をセレクトしてみました。

個人的には、オール・タイム・ベストな1曲の1つです♪



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