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苗字が変わるのが嫌、なわけではないけれど。

私がまだ前の会社で働いていたとき。

ぼんやりと、いつかはきっと転職をするだろうけど、今の会社を辞めたらすごく困るな、と思うひとつの理由があった。

それは、苗字が変わること。

正確には、新姓を名乗らなくてはいけないこと。

結婚したあとも会社では旧姓のまま働いていた私は、新姓を名乗ることもなければ、呼ばれることもなかった。だから結婚して6年も経つというのにまったく馴染んでいなかったし、しっくりもきていなかった。

私は自分の苗字が結構気に入っていた。
絶対に読めるし特別変わってるわけではないが、意外と珍しくて、今まで一度も同じ苗字の人に出会ったことはない。芸能人とかにもいない気がする。

そして実はこの苗字は、母が守ってくれた名前でもある。

確か小学校高学年の頃に両親が離婚したのだが(既に記憶が曖昧)、私と妹のためか、苗字を変えずにいてくれた。これから多感な時期に差し掛かるというときに苗字が変わるというのは、非常にデリケートなことだったからだろうか?

別れた相手の苗字で生きていく、、母はよく決断したなぁと今になって思う。
もしかしたら、当時の私が"苗字が変わるのは嫌だ!"と拒否したのかもしれない。何しろ記憶が曖昧なもんで、そのへんは覚えちゃいない。

とにかく私は自分の苗字に、自分で思ってる以上に愛着があったことに気付いた。結婚するときに戸籍上では私のフルネームは変わってしまったけど、職場で旧姓を名乗り続けることで完全に新しい名前になるのをためらっている自分がいたのかもしれない。

そして先日私は転職をして、自分の現在の本名(?)で働き始めたんだけど、まぁー、呼ばれても反応できない。「松本(仮)さーん」と呼ばれても、全然自分のことと思えないのだ。私は浜田(仮)だ。20何年この名前でやってきたんだ。
2か月経ってやっとすぐに返事できるようになったけど、最初のころは返事がワンテンポ遅れてるし、すごくぼーっとしている奴だと思われていたと思う。(え?聞こえてる?みたいな)

しかも電話に出るときや、メールの最後の挨拶など、気を抜いているときは「お電話変わりました浜田です・・・じゃなくて松本です。」と、隙あらば誰?という名前をぶっこんでしまい大変だった。全然抜けてない。


なぜ今こんな話をしたかというと、先日母と話したときに、
「〇〇(私の妹)が結婚したら、苗字を戻そうと思う」という話を聞いたからだ。えぇーーー!?今さらー!?

妹は私の6個下で、母と一緒に実家で暮らしている。結婚する予定は今のところないし、むしろ結婚願望がないみたいなので、、もしかしたら母は苗字を戻さないまま生涯を終えるかもしれないが、万が一結婚したら、浜田(仮)は消滅してしまう。浜田家解散だ。

私はそれを聞いてとてもさみしい気持ちになった。泣きたくなった。

母には母の人生がある。それに私だってすでに自分の人生を歩んでいるわけだから、何も言えることはないけど、なんだかさみしい。

夫の苗字が嫌なわけじゃない。夫と同じ苗字になるのが嫌なわけじゃない。ただただ、自分のアイデンティティが無くなってしまうようで、生まれたときにもらったこの名前でこの先も生きていきたかった。

名前が変わることで、別の人に生まれ変わってしまいうような気がしてならない。人生で何度書いたか、呼ばれたかわからないフルネームを手放す・・・たかが名前じゃんと思うかもしれないけど、私にとっては思っていた以上に大事(おおごと)だったみたい。

男の人はこういう悩みやモヤモヤがないからいいなぁと思う。日本では夫婦別姓が認められていないから、結婚したら夫か妻のどちらかの苗字で統一される。そして現在は夫が妻の苗字へ変更する人はまだ少数派だ。(私の周りではまだ見たことがない)

クレジットカード、銀行口座、保険証、保険、パスポート、免許証、マイナンバーカード・・・などなど名義変更の手続きが鬼のように面倒で、これをすべて担うのが妻側だけっていうのも・・・とにかく制度が変わればいいのになと思う。


話がずれだけど、こういうモヤモヤを抱えた人って少ないのかな。友人と話題になったこともないし、LINEやFacebookとかもあっさり新姓に変更してる子も多いから、なんの疑問も持たずに割り切っている人の方が多いのかもしれない。

私は「受け入れなくない!」とかそういう思いではなく、ただただ、まだ慣れない・違和感を感じているというだけなので、これから少しずつ新しい名前を自分のこととして、溶け込んでいけたらいいなと思っている。

そして、夫婦別姓か夫婦同姓かどちらが正しいとかではなく、どちらも自由に選べる世の中になればいいのにな。

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