EV火災リスクと日本発の新技術

△概要 

電気自動車(EV)の普及に伴い、リチウムイオン電池の発火リスクが注目されています。米国のデータによると、10万台当たりの火災発生件数はハイブリッド車が3474件、ガソリン車が1529件、EVが25件と、EVの火災発生率は他の車両タイプよりも低いことがわかります。しかし、リチウムイオン電池の構造上、発火リスクをゼロにすることは難しいです。そんな中、神戸大学発のスタートアップが電池を「透視」して異常を検知する新技術を開発し、実用化に向けて動き出しています。この技術は電磁波を用いて電池内部の電流を解析し、発火リスクを劇的に減少させることが期待されています。日本の大手自動車メーカーもこの技術を採用し、2024年から試験導入、2026年に本格稼働を予定しています。

□EVの火災発生率とそのリスク 

○米国のデータによると、10万台当たりの火災発生件数はハイブリッド車が3474件、ガソリン車が1529件、EVが25件と、EVの火災発生率は他の車両タイプよりも低いことがわかります。しかし、リチウムイオン電池の構造上、発火リスクをゼロにすることは難しいです。特に日本では、EVの普及が進む中で安全性の確保が重要な課題となっています。リチウムイオン電池は可燃性の溶剤を使用しており、強い衝撃を受けるとショートして発火するリスクがあります。東京消防庁もリチウムイオン電池を搭載した電動自転車の火災動画を公開し、注意を喚起しています。

□日本発の新技術による火災リスク低減 

○神戸大学発のスタートアップ、Integral Geometry Science(IGS)は、電池を「透視」して異常を検知する新技術を開発しました。この技術は電磁波を用いて電池内部の電流を解析し、異常な電流の流れを検出することで発火リスクを劇的に減少させることが期待されています。IGSの技術は、電池のセルを破壊することなく、センサーで画像診断することが可能です。これにより、安全な電池を流通させることができ、将来的には全固体電池への対応も可能です。

□新技術の実用化と市場展望 

○IGSの技術はすでに日本の大手自動車メーカーから受注があり、2024年から試験導入、2026年に本格稼働を予定しています。また、IGSはSBIインベストメントからの第三者割当増資と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成金交付により、約45億円を調達しました。この資金は中国や韓国、欧州、米国への検査拠点の設立に使われる予定です。世界の車載電池市場は2030年に2025年比で6割増と予測されており、IGSの技術が市場でどのように評価されるかが注目されます。

□EVの安全性と今後の課題 

○EVの安全性は飛躍的に高まる一方で、リチウムイオン電池の構造上、発火リスクをゼロにすることは難しいです。全固体電池などの新しい技術の開発競争も激化していますが、量産のめどはまだ立っていません。日本の自動車メーカーは安全性を優先する傾向があり、電池の性能を抑えることが多いです。IGSの技術が実用化されることで、EVの安全性がさらに向上し、普及が進むことが期待されます。

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