カオスな世界の生存戦略と島の新しいホテルEntô(エントウ)
しばらくぶりの船旅のおともに選んだ本は、「京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略」。
今月、スタディ・リトリートを始めてから、そのときどきに自分が勉強していることと、誰かの勉強や目の前で起きる物事とのいろいろなシンクロが起こるのだけれど、今回の本とホテルはまさにそうだった。
カオスな世界を生き延びてきた生物の歴史の中でも、特筆すべき存在として紹介されているシアノバクテリア。彼らは二酸化炭素で満たされた環境で暮らしていた生物にとって「毒」である酸素を光合成で生み出し、それにより多くの生物は絶滅したと考えられているそう。その環境の中で酸素を食べて生きる「非常識」な生物の子孫が私たちである。
まさに今の自分へのメッセージだと勝手に受け取っていたところ、このホテルにいたのだ。シアノバクテリアが。
まさかの遭遇に感動。これはこのホテルがジオパークの拠点施設だからこその出会いだろう。
他にも、これまでの地球と大地と生物の歴史はもちろん、2億5千年後の未来に想いをはせられる展示もあったりして、今立っているこの島を、そして自分自身を遠く引いた視点で見られる場所だった。
ホテルの客室はというと…
空や海の色が、雲や波の形が、時間の流れとともに変化して、チェックインの15時から、チェックアウトの11時まで、ずーっと眺めていても飽きない空間だった。
船に乗るとき、船が起こす波紋を眺めるのが好きなのだれど、フェリーと、高速船レインボーと、内航船のどうぜんといそかぜと、それぞれの走った後の波紋の広がり方が全然違うことにもあらためて気づいた。撮り鉄ならぬ撮り船なみに、船が通るたびに写真を撮った。
本の話に戻ると、この本の終章は「アホとマジメの共同作業」。
ここまでお読みいただくと分かると思うが、この本で使われている「アホ」は「賢い」の反対語ではなく、「常識」や「マジメ」の対立概念だ。
最初に入った会社で、「良質な非常識」が大事にされていたことを思い出した。
前提となっている「常識」を理解した上で、それを疑う。
そして、そこに新しい提案をする。
このホテルにもそんな姿勢を勝手に感じ取った。
「ないものはない」を掲げ、これまでにも常識を覆すような挑戦で、未来をつくってきたこの島からの新しい挑戦を心から応援したい。
スタッフの皆さんの想いに触れて、あらためてそう思う。
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