見出し画像

YOASOBIプロジェクトを考察

2019年のデビューから数年でYOASOBIが米ビルボード・グローバル・チャート“Global Excl. U.S.”で日本語楽曲史上初の1位を獲得した成功には、彼らの才能と努力が大きく関与していますが、そのプロモーション戦略も成功の要因として見逃せません。以下では、「YOASOBIプロジェクト」のプロモーション戦略に注目して考察していきたいと思います。


2019年11月のデビュー

デビュー曲「夜に駆ける」をリリースすると、翌2020年に入って突如Spotifyのバイラルチャート(再生回数などから算出される人気ランキング)で1位を獲得。SNSを中心に徐々に話題になり、Billboard Japanのストリーミングチャートでも1億再生を突破するなど、めざましい勢いで人気に火がついていきました。

チーフプロデューサーである山本秀哉さんと、プロデューサーの屋代陽平さんはツイッター(現X)などのSNSで精力的に情報を発信し続けており、初期の火付け役となったのが、彼らの地道な情報発信だったことがわかりました。

例えば「バイラルチャートで1位になりました」「○○のプレイリストに入りました」といった細かいニュースから、地方ラジオで曲が流れた時の様子、学校の給食時間にかけられたなどの出来事まで、些細な情報でもすべてツイートしていたそうです。一つ一つの小さな実績がファンのエンゲージメントを高め、それが曲の拡散につながっていったのです。

さらに、デビュー当初はYOASOBIの認知がまだ低かったこともあり、ファンが制作した「歌ってみた」「踊ってみた」動画に積極的に「いいね」やコメントをするなど、できる限りのリソースを注ぎ込んで世間の反応を喚起し、UGC(ユーザー生成コンテンツ)への対応を行ったそうです。

このようにYOASOBIは、小さなファンのリアクションを無駄にせず、徹底的にエンゲージメントを高め続けることで人気に火をつけていったのです。

マーケティングの世界でよくいわれるインサイドアウトとアウトサイドインの両面からアプローチし、ユーザーとの強い絆を生み出す「最初の一歩」がここにあったと言えるでしょう。

プロモーションの根幹には多額の広告費をつぎ込むのではなく、手間とこだわりが隠されていたという点が印象的です。以外にも、地道な活動を続けることでデビューアーティストから一気にメジャーアーティストへと成長を遂げたYOASOBI。その原点に学ぶべき点は多いのではないでしょうか。

参考:博報堂 <YOASOBIのヒットの裏側とは データから見る、2020年代の音楽マーケティング>


YOASOBIプロジェクトのSNS活用方法

  1. UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用:
    ファンを巻き込むことでUGCを生み出し、SNS上でのコミュニティ形成を促しています。これは、ファンが自らの体験や感想をシェアすることで、ブランドの認知度やエンゲージメントを高める効果があります。ファンの声に耳を傾け、ファンが生み出すコンテンツを積極的に取り入れることで、SNS上でのコミュニティを活性化させています。

  2. 総量の把握と戦略の調整:
    SNS上での自身の話題の「総量」を把握し、その情報をもとに戦略を調整しています。具体的には、どの曲が話題になっているか、どの曲がまだ話題になっていないかを把握し、それに応じてメディア露出やSNS投稿の戦略を立てています。これにより、SNS上での話題性を維持し、ファンの関心を引き続けています。

  3. ファンエンゲージメントの重視:
    SNS上でのファンエンゲージメントを重視しています。具体的には、ファンからのコメントや反応に対して積極的にコミュニケーションを取り、ファンの声に耳を傾けています。これにより、ファンとの関係を深め、SNS上でのコミュニティを強化しています。

  4. 新曲のプロモーション:
    新曲のプロモーションを通じてSNS上での話題性を高めています。具体的には、新曲のリリースやミュージックビデオの公開などをSNS上で積極的に告知し、ファンの関心を引き付けています。また、既存の曲との関連性を意識し、新曲のプロモーションを通じてファンが再び既存の曲に注目するきっかけを作っています。


YOASOBIの海外進出

モンスターヒットとなった「アイドル」が全米を除く世界のストリーミングチャートでついに1位を獲得。日本を代表する音楽アーティストへと急成長を遂げた彼らですが、海外進出についてはどのように考えているのでしょうか。

YOASOBIを立ち上げたソニー・ミュージックエンタテインメントの山本秀哉氏と屋代陽平氏に話を聞いてみると、海外進出は十分に意識しているようです。

「海外向けに広告を出したことはありません。ボカロP出身のAyaseに海外から人気があるのは確かですが、意識して海外に売り込もうとは考えていません」(山本氏)

そう語る山本氏。彼らが目指しているのは、国内外の枠に捕らわれず多くの人に楽しんでもらえる音楽を作ることなのだそうです。

「グローバルで大きな違いがあるわけではなく、皆で音楽を共有することが大切。Ayaseは世界中の人が楽しめるようなグルーヴ感のある曲をつくっています」(山本氏)

一方で屋代氏は、海外へと足を踏み出すチャンスがあれば是非とも挑戦したいと語ります。ただし、あくまで国内ファンを大切にしつつ、タイミングを見極めることが重要だと付け加えています。

「海外を意識しすぎて国内をおろそかにしてしまったら、アーティストの可能性を狭めてしまう。タイミングを見極めないといけない」(屋代氏)  

このように、YOASOBIは世界中のリスナーに向けて音楽を発信していますが、日本発の音楽アーティストとしてのアイデンティティを大切にしながら、これまでの延長線に海外があるという感覚で進めているようです。また、インタビュー記事から伝わる屋代氏、山本氏の肩肘を張らない雰囲気がYOASOBIの2人とも通じるものがあり、プロジェクト中心メンバー4人の人柄がベースとなり、それぞれの情熱と努力が才能を開花させ、相乗効果を生み出しているように感じました。

今回、書きながら楽曲を聞き、改めていい音楽だと感じました。今後の益々の活躍が楽しみですね。

参考:Agenda note 
新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #01
新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #02
新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #03


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?