じいさん#1 ファミレス
じいさんは5歳の僕を助手席に乗せて、色んなところに出かけるのが好きだった。
と言ってもだいたいコースは決まっていて、おもちゃ屋(僕はこれがあるから付いていく)、ファミレス、ホームセンターぐらいだけど。
じいさんはいつも行くファミレスでメロンクリームソーダを注文して、
「混ぜると美味いんだぞ」
と言って銀色の長いスプーンでぐるぐる混ぜる。
僕はメロンクリームソーダの透き通った緑色がシュワシュワしているのが好きだったから、
いくら美味しくてもそれが濁っちゃうのはちょっと嫌だなと思いながら
「ふーん」と聞いた。
じいさんは僕がお子様セットを食べ終わる頃に、
「パフェ頼むか。な?」
と聞いてきて、僕はお子様セットでほとんど満足していても、じいさんの気持ちを思って断れない。
じいさんは僕がパフェを食べる姿を見ながら、ニコニコして嬉しそうだった。
僕は不自然に赤く発色したチェリーが恐くて、じいさんにあげた。
じいさんは食後に爪ようじで左の奥歯を突く。僕がそれを見ていると、
「構造上、歯に詰まるんだ」
コウゾウジョウ、どういう意味かわかんないけど、僕にはそれが大人の事情みたいに聞こえて頭に残った。
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