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Uターンしたい人?

こちらの記事で、またしても不名誉ワーストを飾らせて頂いた秋田県。


秋田県出身でありながら、進学や就職で県外に出て、その後秋田県に戻って再度定住したいかどうか?


そういうUターン希望者を調べたもの。


秋田に「Uターンしたい人」を始めとした関係人口(移住者、観光客、出張者)が少ない理由を、私も少し考えてみた。


●街としての住みやすさ?


・厳しい自然

 夏暑く、冬寒い、北日本日本海側特有の気候があり、特に雪が難点。おまけに地方公共団体による除雪が不得意という評判があり、マインドを冷ましている。ただ、太平洋側よりも地震や津波のリスクは少ない。


・秋田弁

 訛りがあるのは致し方ないが、怖いイメージが払拭できないのが難点。特に幼少期に秋田で生まれ育ち、主に沿岸部の秋田弁にさらされると、よそに行って戻ってくる時恐怖がまとわりつく。聞き取りづらさもあるし、どうも喧嘩腰に聞こえてしまうのが、県外出身者にも高いハードルを与えている。


・衣類

 ユニクロ、プチプラが中心で、良くてイオンスタイル。ファッションにお金をかけたくない層が多いという需要のなさが、供給を不足させている。


・食文化

 元々稲作が豊かで冷害が少なく、米や酒には満足している。そのため付加価値の高い食品は少ないし、伝統的に外食産業は弱い。


・住宅事情

 核家族、大家族の持家が多いが、郊外の住宅街に押しやられがち。中心地に限らず賃貸住宅の家賃が可処分所得に比べて割高。


・住環境

 公共交通機関はあるが、貧弱。特にバス網の薄さは交通弱者をさらに追いやっている。車社会であり、車の維持費や駐車場、ドアtoドアの習慣化による歩かなさも問題。戦線が伸びきっていて、街並みも美しくはない(人の営みが見える)。


・子育て

 保育園等の待機児童問題はさほど顕在化していないが、子供の部活動における親の送迎拘束がひどい。制度面よりも家族、親戚、同僚、知人といったご意見番の圧力が強く、子育て世代は精神的に圧迫されやすい。不妊治療についても手厚いとは言えない(これから保険適用になるが)。


・教育

 学力テスト1位の呼び声もあって、教育県のイメージはある。実際、ディスカッション式学習や、国際教養大の存在など、アドバンテージはある。ただ、高卒後の学習機関は限られており、学生の需要を満たしきれていない。ここが「結局出ていく」出口になっている。


・就労及び経済状況

 他県に比べると決して良くはない。1人当たり県内雇用者報酬(平成29年度)は、全国平均の約470万円に対して約398万円と大きく水をあけられている。

 職種では農業、建設建築業、介護職員、公務員がメインで、後はお決まりの大企業か、漏れれば飲食店やコンビニ、スーパーの店員…と中間の受け皿が少ない。高卒にはやたら冷たい。起業の機運はなくはないが、新しいサービスを歓迎する素地が乏しい。

 ただ、物々交換や物役交換、役々交換といったお金に換算されない見えざる経済の底上げがあり、人間関係によって経済状況が左右されやすい。

※ちなみに一人当たりGDPでいえば、2017年の38位韓国と39位クウェートの間で約31,187ドル(日本は31位で約38,171ドル)。


・人口密集地とのアクセス

 陸の孤島の異名を取り、鉄路も空路もあるのに細やかな利便性に欠き、かつ可処分所得の低さもあって都市圏へのアクセスは良いとは言えない。


・お店等

 日本の大多数の地方都市同様、車で行けて駐車場が広い郊外型大型店舗が目立つ。公共交通機関を軸にしておらず、都会で暮らし慣れていると不便。前述の歩かなさも駅周辺や商店街、繁華街を閑散とさせている。


・コミュニティ

 性的少数者に対しておよそ不寛容。県外出身者や新参者にも冷たい面があり、町内会やPTAを始めとしたコミュニティは概ね古参がマウントを取ってくる。封建的で体育会系な環境が生きづらい。


・税金等

 住民税、国民健康保険、国民年金…等はかなりの額で、他者に頼らないで生きていくことが難しい。


●人集めのための魅力や観光資源


・アミューズメント

 動物園や水族館、その他自然公園が多数があり、大森山動物園はコンテンツ的にも優れている。スポーツやエンターテインメント系は弱いが、こういうところにコンプレックスが生じやすい。


・ショッピング系

 マックスバリュ東北本社があったこともあってイオン中心になっており、秋田に来て買物をしたいと思わせるほどのコンテンツは少ないし、これ以上大型はいらない。そして地元資本のデパートがほぼ死滅している。


・飲食店

 低所得者層は毎度お馴染みの全国チェーンを利用せざるを得ない。そしてごくわずかな中所得者層が「あれがないこれがない」とあげつらう。

 しかし生き残った店や挑戦的な店は粒揃い。問題は点が線や面になっていないこと。川反(かわばた。秋田市の繁華街)の衰退にそれが象徴される。


・食の豊かさ

 食料自給率はカロリーベースで全国トップレベル(生産額ベースでも全国平均の2倍はキープ)と、数値に表われるだけでなく、旬の食材にも恵まれ、農産物を利活用した産業には明るい可能性がある。ただ、水産業は何気にあまり強くはない。


・アイキャッチ

 男鹿のナマハゲ、大館の秋田犬、いわゆる秋田美人が扱いやすいアイキャッチとして利用されているが、魅力を最大化できるような扱い方はされていない。


・歴史

 戦国時代や幕末明治を中心とした派手めの歴史遺産が乏しい。が、菅江真澄やイザベラ・バードといった紀行系が豊かだし、まつろわぬ古代の遺跡も多い。コンテンツ化できていないため現金化ができない。


・無形民俗文化財

 竿燈(かんとう)祭りを始め17の国重要無形民俗文化財があり、単一都道府県としては最多らしいが、地元民に知られていない。知っていればすぐ「武器」にしたがる。


・美の国秋田

 秋田美人だけでなく、「秋田の着倒れ食い倒れ」という文化がはるか昔あった。理美容院の人口比率は(始めやすい業態ということもあると思うが)今もって高く一方で利用率は低い)、美容への期待値はある。

 またなんといっても美術工芸方面の層の厚さは、見えにくいがゆえに期待できる。美術大学があり、美術館も多く、伝統工芸も多様であり、「美」をテーマにした街づくりが最も効果的だと考えられる。


・豊かな自然

 温泉等も含め、豊か過ぎて観光資源化できていない面が目立つ。伸び代とも言えるが、この手の付かなさこそが秋田の魅力であり、期待値となっている。しかし現金化できないため地元民が魅力を感じていない。


・まつろわぬ精神

 秋田最大の魅力はこれ。全国平均にあまり惑わされず、我が道を行く。衰退など実はあまり気にしていない。また物部氏や、種蒔く人のようなプロレタリア文学を生み出す土壌もあり、反骨精神には長けている(と信じたい)。保守王国ではあるが、さすがにイージスアショアには反対できたわけだし。


・スピリチュアル人口

 どうやら多い。自殺率が多いのも「見える、聞こえる、感じる」人が多いことが一因となっているとも言われる。


●秋田はAターン

・秋田はずっと「Aターン」のキャンペーンを張ってきたので、Uターン人口が少なくて当然。皆「Aターン」したい(はずな)のだ。


●まとめると…


→とにかく「多様性がない」「決定打がない」というのが、秋田のパッと見の印象であり、これが秋田県市民をして「秋田には何もない」と安易に言わしめている。


→豊かさの期待値は高いが、価値観が古くて、未だに経済発展という前時代的モデルを求めている。だから人口増加や産業誘致、魅力発信等、的外れなことばかりしている。

→また可処分所得の低さが、魅力の再発見を妨げている面がある。経済的余裕がないから、魅力あるコンテンツを消費しきれていない。


→つまり、地元民も関係人口も人達も「秋田を地元化できていない人が多い」のである。秋田は経済発展などしなくても、この先もそれを受け入れつつ等身大の幸せを追求できるし、自然や時間といった偉大な力を信頼している。


 …だから「都道府県ランキングなどに与しない」とはっきり切り返してやったらいいのだ。まつろわぬ精神で。そして我々は「近代」の先へと進む。

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