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働きやすい会社を、なぜ若者は辞めてしまいのか?を説いた本「ゆるい職場」

本(ゆるい職場)(長文失礼します)

本の帯に「働きやすい会社を、なぜ若者は辞めてしまうのか?」と書かれた本です。私もこのフレーズに惹かれて買って読んでみました。
筆者の古屋星斗さんは、一橋大学大学院で社会学を専攻後、経済産業省に入省。のちにリクルートワークス研究所主任研究員となり、学生・若手社会人の就職や価値観の変化を検証しています。

ゆるい職場になった最大の原因は法改正にありました。2015年の若者雇用促進法施行で、採用活動の際に自社の残業時間平均や有給休暇取得率、早期離職率などの公表が義務化。2019年の働き方改革関連法で労働時間の上限規制が施行されました。

その結果、仕事がゆるくて辞めたいと思っている若者が多数存在するとい現象が生じ、その理由は、自分の会社でしか生きられない人間になってしまう。会社のことはゆるくて好きだが、キャリアが不安なので、転職できなくなるのではないかというものです。

つまり従来あった給料や人間関係などの不満から転職する不満型転職から、キャリア不足で将来が不安な不安型転職に変貌したと筆者は見解を述べています。

さらに若手社会人の特徴として、無理をせずに「ありのまま」と、頑張って「なにものかになりたい」というのは二項対立ではなく、全ての人の中でグラデーションのように存在する要素とも述べています。

会社が一から若者を育てるという常識が限界を迎えており、パワハラ当り前で育ってきた上司や先輩は若手のロールモデルにはなり得ないと結論付け、それではどうするのか、「若者が会社を使って育つ」時代が到来しているとしています。

それでは具体的にどのようなアプローチが可能なのでしょうか。先ずはスモールステップ(小さな行動)というもので、具体的には「越境」(社外での勉強会の企画、企業横断のコミュニティ参加等)などがあり、社外でのアクションの重要性を説いています。

次にコミットメントシフトがあります。これは転職する際、従来はA社→B社が100%の職業移行でしたが、これをA100%・B0%→A80%・B20%→A20%・B80%→A0%・B100%と段階的に移行することで転職のミスマッチを防ぎ、転職の中断も可能、また転職後もコミットメントを残しているため、元の会社とも継続的な関係となるというものです。

さらに筆者が提唱するハイパー・メンバーシップ型の人材活用というのがあります。その要点はメンバーの定義を拡大することであり、社員と関係社員(関係人口の企業版)のメンバーでは、関係社員がメンバーシップの大きなすそ野を形成し、これこそが今後の企業の改革資産になるとしています。 

ゆるい職場の時代には、職場外での活動が増え、そのキャリア形成における重要性が高まる可能性が高く、その結果若者が様々な経験を得て、様々な場でその経験を活かす。ゆるい職場はそんな職業社会を現実のものとする可能性があると、結論付けています。

デキる社員は転職したがるというのは、現代の若者に限らず昔からある定石ですが、様々な経験を積んでキャリア形成し、会社を使って育った若者は、会社という1つの概念を超越した人材資産であり、継続的なコミットメントは、最終的に企業にとってもメリットは多大なものがあると考えます。

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