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コロナ禍でのロックダウンの実態「武漢日記」

本「武漢日記」

新型コロナウイルスが発生した中国・武漢での都市封鎖(ロックダウン)期間の様子を、SNSで発信した日記をまとめた本です。筆者の方方(ファンファン)さんは、武漢在住の1955年生まれの女性作家で、中国で最も名誉ある文学賞の1つの魯迅文学書を受賞した著名な作家でもあります。

1年前の1月23日に武漢がロックダウンされ、4月8日に解除されるまでの76日間に60編の日記が公開されており、ちょうど1年後の今、第3波が猛威を振るう日本の現状に照らし合わせても、オーバーラップする部分が多分にあると思います。

作家の文章ながらも、本人が述べているように文学的な装飾は排除して、きわめて写実的な文章で、非常時下の市井の人々の生活を毎日克明に綴っています。筆者が住む文学団体の宿舎は団地になっており、ロックダウン中は完全に外出が規制され、1日中部屋で過ごすことが日課となります。

食事は肉や野菜などの食材の配給(団地入口や玄関前)を受けて自炊、時には友人などが料理を届けてくれたりもします。糖尿病の持病がある筆者の薬は、ネットで注文して届けてもらいます。毎日ネットで新型コロナウイルスの感染状況をチェックしながら、多くの医者や看護師など多くの医療従事者が感染して死亡していく悲報が連日伝えられてきます。

まさにネットで感染状況を確認し、テレビを観てご飯を食べて寝るという繰り返しの日々が続きます。市井の人々の生活を描きながらも、どうしてこのように感染が拡大してしまったのか、素朴な疑問としての国家体制への批判も展開されます。
当初の発表では「ヒト-ヒト感染」はないという当局の認識が、発症初期の治療を遅らせ爆発的な感染拡大に繋がったとしています。最初に警告を発して後に感染で死亡した、李文亮医師を訓戒処分にした国家の隠蔽体質を、厳しく批判しています。

ただこのような国家体制の批判は、当局による削除の対象や、日本でも同様にSNSなどのネット上では激しい反論や誹謗中傷が飛び交います。日本では国家寄りのネトウヨに対して、中国での国家寄りは左翼なので「ネトサヨ」(文中では「極左」と表現)では、と訳者があとがきに書いています。ただ筆者がひるむことはなく、将来の為にも責任追及をすべきだと述べています。

先日あるテレビの報道番組がこの本を紹介して引用したのが、以下の文章です。
「ある国の文明度を測る唯一の基準は、弱者に対して国がどういう態度を取るかだ。」
弱者が困窮する現状の日本を鑑みれば、1年前の重い教訓になると実感しました。
 
#新型コロナウイルス #コロナ禍 #武漢 #武漢日記 #ロックダウン #都市封鎖

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