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大学受験の最高峰‼️東大医学部の問題点提起❗️「東大医学部」

本(東大医学部)(長文失礼します)

日本で一番偏差値が高い大学学部である東大医学部の現状と問題点を説いた本です。灘高出身で東大医学部に現役合格した精神科医の和田秀樹さんと、ジャーナリストの鳥集徹さんの対談形式で、本編が進行していきます。

実はこの本、新聞の書評欄で見つけて面白そうなので買うことにしましたが、本を検索した結果、大学受験の医学部受験コーナーにありました。それほどに東大医学部(理科Ⅲ類)は、受験生にとって最高峰の大学学部であると再認識した次第です。

先ず鳥集さんが指摘するのは、日本で一番頭脳が優秀な東大医学部卒の医者が必ずしも名医であるとは限らない、逆に他の大学出身でより医者に適した人物が存在するというものです。医者には優秀な頭脳だけではない臨床体験を通じながらの知識や、患者とのコミュニケーション能力が要求されるからです。

確かに現在の受験競争では、本人の希望や適性以前に単に成績が良いだけで医学部を受験する、また保護者も安定した職業としての医師を養成する医学部を勧める傾向にあることも事実です。

またOBの和田さんの発言は内部の人間だけが知る事実が多く語られ、大いに説得力があります。小説「白い巨塔」に代表されるように、大学の医学部には様々な弊害が存在しますが、最高学府の東大医学部ではその権威主義が頂点を極めており、教授を頂点とする医局講座制が、硬直化した医療組織を構成していると指摘します。

医局は親方が頂点の相撲部屋と同じと表現されていましたが、大学時代に医学部ではないながらも理系に属していた私の経験からも、研究室は親分―子分の渡世人の世界と同じだと実感したことがあります。

本の紹介記事で引用された文書がありましたが、
「日本で一番賢い子を、日本で一番馬鹿な大人にしてしまう教育機関が東大医学部」
さらに厳しい指摘は続きます。
受験競争に最も勝利した人たちが入ってくる訳だから、やたらと競争が好きで、ヒエラルキーの中でしか生きられない。日本の医学が発展しないのは、東大医学部卒のメンタリティーがはびこっている医局が存在するから。
権威に凝り固まったシステムだから、横のつながりが希薄なために、日本は臓器別・縦割り診療の弊害が出てしまった。つまり医局講座制は、自分の専門以外は診察できない「専門バカ」を大量生産してしまったという訳です。

確かに経済の高度成長期には、働き盛りの若い世代が多かったので、臓器別診療は効果があったということですが、超高齢者社会に入った日本では、高齢者が高血圧や糖尿病、骨粗鬆症など複数の病気を抱えている場合が多く、専門分化型の医療から総合診療型への移行が急務とされています。 

あと正常値信仰への疑念を挙げていますが、血圧などの正常値範囲に抑えようと強めの薬を投与すると、体調の異変などの副作用が発生してしまうとのことです。高齢になったら検査データの正常値にこだわるより、本人の訴えや症状に合わせた医療を行う方がいいと臨床体験からの意見を述べています。

本の前半は東大医学部の問題点の提起でしたが、後半は日本の医学界に君臨してきた東大医学部の上記の問題点が起点となる日本の医療全体の問題点を検証しています。医者のメンツのために、有効な医療技術(欧米に対して低い放射線のがん治療など)が大幅に遅れた事例も多く取り上げられています。

最初この本は、受験競争と偏差値に毒された人へのアンチ本と思って読んでいましたが、読み終えた今は、現代医療制度の問題点を縮図にして提起したような奥深い本だったように思います。

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