工具図鑑の監修をしました。過去一の工具本です。
会社の問い合わせ窓口に一本のメールが来ました。
アメリカで出版されて人気となっている「工具図鑑」の監修をお願いできないか?
というものでした。
「図鑑」
というワードから興味はあるものの工具関連のそれもアメリカ人が
書いたものとなると、相当難解で、とても私などが監修できるものではないしなあ・・・。
と考えたけれど、
ダメなら断ればいいし、一度話だけでも聞いてみようと編集者の方とお会いすることに
しました。
持ってこられたのは分厚くて重くて質のイイ、まさに「図鑑」でした。
そして、その図鑑は私の予想とは全く違うものだったのでした。
著者はアメリカ人のセオドア・グレイ氏。
略歴は
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とカリフォルニア大学バークレー校大学院で学んだ後、スティーヴン・ウルフラムとともにウルフラム・リサーチを創業し、同社が開発した数式処理システムMathematica(マティマティカ)や質問応答システムWolfram Alpha(ウルフラム・アルファ)の構築に携わった。「ポピュラー・サイエンス」誌のサイエンスライターとしても活躍。2010年にウルフラムを退職した後は元素収集の趣味を発展させた執筆活動を行うほか、iPadやiPhone用アプリの制作会社を創設し、ディズニー・アニメの歴史をたどれる双方向アプリDisney Animatedなどを手掛けた。イリノイ州アーバナ在住。
バリバリの理系です。
この本は『世界で一番美しい元素図鑑』のシリーズということで
日本語版は『世界で一番美しい工具図鑑』ということになります。
何をもって美しいとするのかは人それぞれ価値観が違うと思うけれども
私にとって、それはまさに「美しい」本でした。
なぜならば、この本は「図鑑」であると同時に、著者のセオドア・グレイ氏の人生を、工具と共に語る「回顧録」だったからなのです。
工具は人の日常生活の中に溶け込んでいます。
モノに興味を持つ人であればあるほど、人とモノとの間に介在する工具の存在は
色濃く記憶に残ります。
そして、その記憶のひとつひとつが人生を豊かにしているというのは疑う余地もありません。
私は監修という仕事を忘れてたっぷりセオドアワールドにおぼれてしまいました。
掲載されている工具はカタログに掲載されるような新品ではなく、著者がこれまで、
信じられないような手間と時間をかけて収集した工具から選りすぐられたものです。
ドキュメンタリーさながらに、数多くの想い出と共に紹介されている工具は、
工具に刻まれた経年変化と共に、私の頭のなかに空想の世界を広げてくれます。
もともとアメリカ文化が好きで、アメリカのDIYお父さんに憧れていた私にとって
この本は本当に直球ど真ん中でした。
本のなかには、かつて、私が見たこともない工具が沢山掲載されています。
数十年前のアメリカの工具の変わった形状を見て、この変な工具は、どんな人たちが
どんな思いで開発して、どんな人の人生を支えてきたのだろう。
図鑑のなかの工具を凝視することは、空想とロマンに溢れるアメリカの旅をすることと
等しいのです。
本体4500円(税別)という決して安くはない本ですが
工具好きはもとより
アメリカ好き
DIY好き
メカ好き
モノ好き
の皆さんにとっては一生の宝モノとなる本になることは間違いありません。
発売予定は12月中旬とのころです。
どうぞお楽しみに!!
※著者のセオドア・グレイ氏はもちろん、この素晴らしい図鑑を日本で刊行して頂いた
創元社の皆様には、一人の工具ファンとして深く感謝申し上げます。
ありがとうございました。
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