プレ告知:市民公開シンポジウム2024
「生活習慣病を死語にする会」の代表をしている杉本正毅です。今年も11月9日(土)に市民公開シンポジウムを開催する準備が整いましたので、今日はごく手短に今回のシンポジウムの狙いや意義についてご紹介したいと思います。
今年のシンポジウムのテーマは以下のようにちょっと責めたテーマとしました。
「不健康をスティグマ化する自己責任論を乗り越えるための声を結集する」
■シンポジウムがめざすもの
2023年9月、日本糖尿病協会および糖尿病学会アドボカシー委員会は糖尿病呼称変更として“ダイアベティス”という新しい呼称を提案しました。しかし日本糖尿病学会に所属する医師、所属しない一般医にも、その提案はあまり受け入れられていません。それはなぜ糖尿病の呼称変更が必要なのか?ということが十分議論されないまま、呼称変更が進められてきたからではないかと考えます。多くの人々にとって(特に医療専門職においては)、この自己責任論という思考のフレイムは骨の髄まで染みこんでいて、彼らの無意識の言動に表れ、肥満や糖尿病をもった人たちにスティグマを与えています。しかし、かれらに、そうした言動が与える侵襲性に気づいてもらうことは容易なことではないというのが、この3年間あまり糖尿病関連スティグマに関するアドボカシー活動を続けてきた私自身の率直な実感です。しかし、それでもなお私たちは諦める訳にはいきません。少しずつでも前に進んでいかなければならないと考えます。
そこで、本シンポジウムでは糖尿病関連スティグマについての議論を深めながら、不健康をスティグマ化する自己責任論に抗う声を結集し、大きなうねりをつくっていくことが、今後のアドボカシー活動の進展にとって、大切な一歩となるのではないかと考え、本シンポジウムを企画しました。第2部では「アドボカシー活動をどのように進めていったらよいか?」「スティグマ解消に必要なことはなにか?」について議論する予定です。
■市民公開シンポジウム2024の趣意書
私たちは2020年「生活習慣病を死語にする会(SSB45)」を発足し、2021年12月、第1回の市民公開シンポジウムを開催しました。第1回目のシンポジウムでは糖尿病患者の“生きづらさ”に焦点を当てて、第1部は医学、文化人類学、社会学、臨床心理学の専門家が、第2部は当事者の立場からとして、1型糖尿病、ヤング2型糖尿病、単一遺伝子異常による家族性若年糖尿病(MODY)当事者にそれぞれご発表いただきました。私たちがこのシンポジウムを通して気づいたこと、それは「生活習慣病」という言葉を死語にするだけではこの社会を大きく変えることができないということでした。
そこで2023年5月、第2回目を迎える市民公開シンポジウムでは、シンポジウムのテーマを「社会的スティグマのない社会をめざして〜私たちにできること」とし、スティグマの枠組みを糖尿病関連スティグマだけでなく、肥満、障害者(身体障害、精神障害、知的障害などを含む)にも拡大して討論を行いました。社会心理学の立場(行動免疫システム)、文化人類学の立場(米国におけるファット・アクセプタンス運動)、肥満症治療最前線の医師の立場から、障害者文化論の立場(不利な言葉を問い直す)から、それぞれご発表いただき、また当事者パートでは2人の1型当事者と1人の2型当事者からご発表いただきました。
さて3回目となる今回の市民公開シンポジウムではテーマを「不健康をスティグマ化する自己責任論を乗り越えるための声を結集する」としてみました。その理由は、私自身、前回のシンポジウムで「自己責任論に抗う方法」を見出したいと意気込んで臨んだのですが、明確な答を見つけることができなかったからです。社会に蔓延する健康関連スティグマに抗うためには「誤った自己責任論の問題点を指摘し、それに抗う言説を結集していくことが不可欠ではないかと考え、今回のシンポジウムを企画しました。そして、社会に存在する健康関連スティグマを解消していくためには糖尿病の名称変更について議論することが最優先課題なのではなく、なぜ社会的偏見が生じるのかについてじっくりと議論することであり、そのためには「生活習慣病」という行政用語を批判的にじっくりと議論し、この言葉によって構成された社会的現実を時間をかけて解体していくことではないかと考えています。今回のシンポジウムではこうしたテーマについて、皆さんと活発に議論できたら幸いです。
シンポジウムの詳細は近日中にお知らせする予定です。
生活習慣病を死語にする会代表 杉本正毅 拝
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