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ブロックチェーンが現代社会に提議するもの

Dappsプラットフォームを“国”に、その上に開発されるDappsを“企業”に置き換えて考えると、ブロックチェーンが現代社会に提議するものが見えてくる。

最初に“国”と“企業”の関係について考える。一般に“国”は“国債”(トークン)を発行し、“企業”は“株式”(トークン)を発行することで、その“国”の通貨(例えばETH)を調達する。“企業”を立ち上げる際に、その“国”すなわちDappsプラットフォームの開発言語や取引処理性能等のルールに従わなければならない点や、“国”の隆盛に“企業”が大きく影響を受ける点は、現代社会の仕組みと何ら変わりはない。登記する“国”が違えば価値をやり取りする上で障害が生じることも同じだ。“国”同士のクロスボーダー取引を実現するクロスチェーン技術も開発が進められているが、そのような技術がなければ、ブロックチェーンが作り出す世界にも“国境”は存在する。

次に“国”と個人との関係について。現代社会において国政に参加するには市民権という大きな壁が存在する。誰でも好きに日本人になることはできないのだ。しかし、ブロックチェーンはその壁を取り除く。世界中の誰であっても“国”が発行したトークンを持つことで、“国政”に参加する機会が与えられる。そして、それは選挙権のみに限定されない。誰もが主体となって政策提言(Improvement Proposal)を行うこともできる。もっと言えば、“国籍”を複数持つことも可能だ。ブロックチェーンの世界では個人が特定の“国”に縛られることはないのである。

最後に“企業”と個人の関係はどうだろうか。ここでも個人が“企業”のルールに従わなければならないという点は現代社会と同じである。しかし、役員であるなしに関わらず誰であっても“株式”(トークン)を持つことで、“取締役会”に参加することができる。特定の“企業”に縛られることもない。当然副業は許されるし、目の前の仕事に飽きれば面倒な退職手続きをとることなく別の“企業”に移ることも簡単だ。肝心の労働条件についてはDappsそれぞれのインセンティブ設計によって定義され、“企業”に貢献することで報酬が得られる仕組みとなっている。労働という観点では“国”に勤めることも同じだろう。

このように見てみると、ブロックチェーンはこれまで人類が信仰心のもとに作り上げてきた「国」や「企業」という強固な枠組みに捉われない、新しい世界を作り出そうとしていることがわかる。一見難しく見える暗号資産・ブロックチェーンの世界は、実は現代社会と似通った仕組みで成り立っているのである。かつて神のみが天地創造を許されたが、テクノロジーの進歩によって人類はついにその力をも得ようとしている。見方を変えればそれは枠組みの無い時代への逆行とも言えるが、何れにしても、ブロックチェーンが現代社会に問いかけていることは、コミュニティの再定義である。

コミュニティが生まれれば、そこには秩序が必要となる。ブロックチェーンの世界ではこれをコンセンサスアルゴリズムと呼ぶ。PoWやPoS、DPoSなどと業界で普段議論されていることは、国を統治する上で直接民主制をとるべきか、代表民主制をとるべきかという一般的な議論と大枠の違いはない。多くの人がこのことに気づいていない為に表面化はしていないが、ブロックチェーンの登場によって、選挙制度における一票の格差や選挙権に関する議論が一部の間では急速に深まっている。これは企業統治にも当てはまり、その意味ではブロックチェーンは現代社会に対してガバナンスの再定義を訴えかけていると見ることもできる。

#暗号資産 #ブロックチェーン #コミュニティ #ガバナンス

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