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PIT 特殊心理捜査班・水無月 玲/五十嵐貴久

猟奇的な連続殺人ものかなり久しぶりでした。はい、好物のやつです。笑 最近読んでいたサスペンスやミステリーものは、トリックや犯人・被害者の内面に重きをおくようなミステリーもので、殺害方法とかは普通だったんです。*「普通」ってのはおそらく、刺し殺す、絞め殺す、遺体はそのまま、もしくは埋める、といったところでしょうか*

本書、とても読みやすくて(光文社文庫、文字大きくなりました?気のせいでしょうか)、スピード展開で……。結末のどんでん返しは、もーーーっ!どんどん!でんでん!な感じで見事に返されてしまった。「まさかね、まさかね…」で読み進めたらそのまさかだった…!!!?有り得ぬことが起こる、それが小説の世界です。

◆プロローグ(1998年8月22日)

シュンは、友人のタッチャンと缶けりをしていた。2泊3日のお泊まり会からの帰りで、シュンの誕生日であった。夜は、6人の友だちを呼んで誕生日をする予定。家に帰る途中、真っ黒のレインコートを着た見知らぬ男とすれ違う。家につくと、リビングの床は一面血の海で、両親は殺害されていた。

◆Chapter1~12
都内では「V事件」という連続殺人事件が世間を騒がせていた。犯人と思われる人物より『駅名・コインロッカー・V』と記載されたメールが送られ、指定駅のコインロッカーに女性のバラバラ遺体が発見された。

遺体は部位ごとにロッカーに入れられており、まさに女性が正面を向いているようにディスプレイされていた。眼球は抉り取られ、歯は砕かれ、指紋は焼かれ身元の特定にも難儀した。

SSBC(捜査支援分析センター)に配属していた「蒼井俊」は、PIT(特殊心理捜査班)へ異動を命じられていた。蒼井がSSBCで開発担当している犯罪予測システム(AI)のデータ解析能力を利用し、早急に犯人逮捕に繋げたいということだった。既に2人の女性が殺害されており、犯人(通称:V)からは『to be continued V』(犯罪は続く)とのメッセージも送られていた。

V事件の捜査をしながら、PIT班は9年前に起きた弁護士一家殺人事件と弦養寺公園にバラバラに捨てられていた夫婦の殺人事件の関連性も捜査していくことに。

一見するに、殺害方法などに共通点がないため同一犯ではないと結論付けられていたが、数名の刑事がどうも臭うということで、再検討することになったのである。

PIT班を取りまとめる「水無月 玲」は、9年前の事件のプロファイリング担当だったが、何者かに階段から突き落とされ骨折。それ以降、歩行不能となり車椅子生活を余儀なくされていた。水無月は、自身を突き落とした人物は、弁護士一家殺人事件の犯人(通称:ジャック)だと推測し、犯人逮捕にかなり意欲的に取り組む。

V事件と、9年前の事件の捜査をする最中、現職の刑事が自宅で殺害されたとPITに連絡がはいり、現場経験のない蒼井だったが、人員に不足があり急遽現場に向かうことに。

胴体から切り落とされた首は、リビングテーブルに固定されており、瞼と口角はホッチキスの針でとめられ、その異様な様は、まさに笑顔で蒼井を出迎えているように見えるのだった。

…………。

なにも言えない。

◆エピローグ(2017年8月23日)

…………。

なにも言えない。ぱーと2。

どんでん返しまくりーーー!もう凄かったーーー!
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シリアルキラーによる殺人事件なので、ちょっとだけ遺体の描写や殺害方法がえぐいかもしれません。わたしの紹介文でダメだったら読めないと思います。(わたしはグロいの好きなんですけど…笑)小説全体がとっても読みやすく、スピード感があって先が気になり止まりませんでした。先にいくにつれ、ハラハラ度が増していくので、臨場感もあり、良かったです。

AIを取り入れた最先端の捜査システムと、昔ながらの心理犯罪を読み解くプロファイリングを融合させ、まったく証拠を残さない犯人を捜査していく様も面白い。

海外ミステリーを読んでしまうと日本の刑事物って捜査方法がありきたりで、なんだか少しレベルが劣るな~と思ってしまうところがあるんですが、本書は捜査方法も海外ミステリーにも引けを取らないかもしれません。最先端ゆえかしら。

*もしかしたら個人的に、心理捜査などプロファイリング系が好きで、海外ドラマのクリミナルマインドなんかは本当に大好きでよく見ていることもあるかもしれません。クリミナルマインドも異常犯罪もので、犯人像を分析していくFBIのプロファイラーチーム、ラストは感動してうるっとこみ上げてきてしまうような回も多いんです。面白いですよ。

登場人物のキャラクター設定は薄めかも。あまり印象に残らないため、登場人物に対して思い入れが生じることはあまりなく、それよりも、各所に散りばめられた圧巻とも言える異様な遺体の描写や、捜査官たちに迫る脅威にハラハラし放題でした。

結末に待っているどんでん返しのラストまで一気読み確実でしょう。ラストに行き着いたら、もう続きが気になって仕方がなくなるはずです。ぜったいに続編刊行希望。

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