【読書⑥】~『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』を読んで・その2~
前回の【読書⑥】~『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』を読んで・その1~に引き続き、昨年の夏から秋にかけて読んだ書籍『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』を紹介です。
前回の投稿でも書きましたが、「セイバーメトリクス」とは、簡単に言うと「学会(セイバー)」と「統計学(メトリクス)」を合わせた造語であり、野球においてデータを統計学的に客観的な分析を行って選手の評価や戦略に活用するというものです。
野球をしている方々や、プロ野球などを観戦される方々にとっては、「打率」や「防御率」といった選手成績で馴染みがあるかと思います。
ですが、例えば「防御率」をとると、「防御率」は自チームの野手の守備力にも大きく影響されるため、純粋にその投手にとっての本当の「防御率」を示しているものではありません。
その投手本来の持っている力だけではなく、守備力によって生じる結果も含まれてしまうということです。
『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』では、こういった問題点や矛盾点を解消する新たな計算式が紹介されています。
ということで、前回に引き続き、本書を読んで私個人として非常に面白く感じた点をまとめ、紹介していこうと思います。
今回のテーマは、チーム全体の戦力の評価についてです。
RC(Runs Created)
RC(Runs Created)とは、ビル・ジェイムズ氏が開発した得点推定式で、訳すと「創出された得点」という意味になります。
計算式は、以下のようになります。
出塁率に進塁を掛け合わせたような簡単な式ですが、この式でチームの得点を高い精度で予測することができ、実際の得点数の約9割が説明できるそうです。
この式が高精度ということは、野球というスポーツで得点を増やすには、出塁や長打がどれだけ多いかが重要であり、それ以外の要素は得点を増やすことにあまり大きな影響を与えないということが予想されます。
例えば、一定期間の練習試合のチーム全体の成績・結果を集計してRCを算出し、実際の得点数と比較してみることで、チームの課題が見えてくるかもしれません。
また、1試合あたりのRCを算出することで、チームの得点力(大会での得点の見込み)が見えてくるかもしれません。
そうすると、チームとしての戦い方が見えてくるのではないでしょうか。
ピタゴラス勝率
これもビル・ジェイムズ氏が開発し、RCと同様に初期の発明だそうです。
チームの得点数と失点数から統計的に妥当な勝率を算出する計算式になります。
計算式は、以下のようになります。
ピタゴラス勝率は、中学生の時の数学で勉強する三平方の定理(ピタゴラスの定理)に式の見た目が似ていることから、このように呼ばれるそうです。
このピタゴラス勝率は簡単な式ですが精度が高く、本書では過去のプロ野球のデータをもとに作成されたピタゴラス勝率と実際の勝率の散布図が紹介されており、ピタゴラス勝率と実際の勝率の相関関係が見てとれます。
この計算式も、先ほどのRC同様、一定期間の練習試合のチーム全体の成績・結果を集計し、ピタゴラス勝率を算出することで、チームの公式戦における勝率が予想できてくるのかもしれません。
また、「対強豪私学」「対公立校」というように、カテゴリー別にわけて計算してみると、より詳細な勝率が算出されるかもしれません。
それによって、公式戦でのチームとしての戦い方が変わってくるかもしれません。
守備効率(DER)
最後に、チームの守備力評価の指標である守備効率(DER/Defense Efficiency Ratio)を紹介します。
守備効率(DER)とは、チーム全体を対象に「本塁打を除いてグラウンド上に飛んできた打球をアウトにした割合」を表す指標です。
計算式は、以下のようになります。
評価の基準として、守備効率の平均値は7割程度だそうで、値が高いほど優れた守備陣であるということになります。
守備力の評価は主観的な感覚が強く、客観的に評価することが難しいと感じていましたが、この計算式を用いれば、チームの成長を客観的に数値で見ることができるため、非常にわかりやすいなと感じます。
これも、一定期間の練習試合のチーム全体の成績・結果を集計して算出してみるとよいかと思います。
さいごに
今回は、本書で紹介されているチーム全体の戦力の評価方法の中から、「RC」「ピタゴラス勝率」「守備効率(DER)」の3つの指標・計算式を取り上げました。
この3つの指標・計算式は、高校野球(学生野球)の指導の中で、うまく活用できると思います。
次回は、選手個人の成績の評価方法について、紹介しようと思います。
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