緊急入院❌国際電話が命綱❌ 早急に治療開始

緊急入院後、治療方針が決まり、その治療を担当する天道医師が挨拶に来てくれた。もう一人入局直後??の独出先生。

とても丁寧に問診をする天道先生。

治療方針やそれに伴う合併症等の予防など、過去に別の国で行われたそれが一般的ではなかった。

それもそのはず。一般的なやり方で治療を実施した際に何故か階段を降りるように悪化してしまったのだ。

それが病勢に治療が追いつかなかったのか、それとも治療自体の悪影響で悪化を引き起こしたのか、結論は出ていなかった。

しかし、リバウンドという治療で改善する前に、その治療が引き金になって一過性に悪化する現象が否定できなかった。そのため、リバウンド予防が必要な疾患の治療に精通した他院にわざわざ問い合わせてそこでのリバウンド予防を当時の主治医は取り入れたと話した。

その後、国境を跨いだ後に再発し、治療を有した有希が実際にどのような治療をどのプロトコルで受けたかがこの時の治療方針決定に大きな影響を与えていた。

ディスチャージサマリーは自宅にあるも、その総量は段ボール箱一つ分は最低でもある。

さらに、有希の母はその外国語が得意ではなかった。それもそうだろう。他の家族が流暢に対応できるのだから、書面で専門的なことは自身で行う必要がなかった。

山ほどの書類の中から即日必要なその書類を探し出して病院に戻るには、時間が足りない。

英語ならまだしも、他言語で文化も違う。いきなり病院にその地域に精通していない日本の医師が電話をするよりも、元々その地域で医師をしていた患者が電話する方がスピーディーに情報提供をしてもらえるだろうということになった。

有希は国際電話で病院に問い合わせる。電話を出たスタッフは、先ず「事故か急病ですか?」と尋ねた。

有希は過去の治療歴の問い合わせのために電話をしているのだから、「いいえ」と答えた。

するとまさかの返答が飛んできた。「今日は祝日だから、後日平日にかけて」と電話が切れる。

「え? 何という不運。」有希は思う。

医師にそのことを告げる。実はもう一つ別の国でも治療を受けたことがある有希。

天道医師「え?嘘?!」

独出医師と目を合わせる天道医師。

しかし、すかさず「気を取り直して〇〇にかけましょう。次行こう、次」と軽快にプラン変更。いや、修正してプラン続行か? 再び有希が国際電話することになった。

再び電話を受けた人の第一声は「事故か急病ですか?」

「いいえ」と答える有希。

「今日は祝日なので、他の対応はしていません。」

「え?!?! 今日何日?!?!」

有希はここでは食い下がった。「急病です!やっぱり急病対応です。」と電話を切られないようにその場を繋いだ。

「貴院の患者がウチの病院で急性増悪致しました。命に関わる重大な事態です。貴院での治療に関する情報を早急に教えていただく必要があります。」有希は必死に訴えた。

先方の声色が変化していた。「何処の病棟に入院していた患者ですか?」

「最後に入院していたのは、〇〇ICUです。」有希は答える。

「では、そちらに繋ぎます。直接医師と話してください。」

有希の心の声「よしっ! 大成功!!」

医者が出る。

「〇〇ICU」

有希は事情を説明する。

情報開示に同意してくれた医師が患者氏名を尋ねる。

有希は答える。

癖で救急車要請の際のアルファベットの伝え方で無意識にスペルを伝え始める。

途中で止められる。

「何を言っているのか分からない。」とその医師は言い出す。

「あれ? この国では表現が違うのか? あれ? いや、そんなはずはないのだけれども......」

少し困った有希は、何々の〇と一文字ずつアルファベットを伝える。普段と伝え方が違い、辿々しい。

英語で話した方がいいか聞かれた。「まぁ、アルファベットでこんな辿々しかったら、そうだよね。会話が今まで通じずに困ったことはなかったけれど、ボキャブラリーが気づかないうちに標準語から方言にすり替わってしまったのかな?」有希は少し不思議に思いつつも、同じ言葉でも、国や地域を跨ぐと通じづらくなることがある、とあまり深く考えずに英語で会話し始める。

彼らの病院での情報を得ることの重要性が伝わり、カルテを開こうとしてくれた。「これ、5年以上前のカルテだよ。情報保管場所が移動し、今僕の使う電子カルテのシステムでは開けなくなっている。テクニシャンの人が出勤する祝日明けに再度電話してくれ。僕からもテクニシャンに聞いてみる。電話番号とFAX番号を教えてくれ。なるべく円滑に情報提供ができるように頑張るよ。」

「ありがとうございます😊😭😊電話番号〇〇、FAX番号〇〇。あ、もしかしたら...... 病院の電話で、普段国際電話をかけない電話です。この番号では貴院からの電話やFAXが通じない可能性はゼロではありません。念のために今かけている携帯電話の番号も伝えましょうか?」

「携帯電話はいらない。病院の番号で対応する。」常識からしたら、医師のプライベートな番号などに電話などしないだろう。ましてやシフト外の休日や夜間に電話してしまったら、担当は当番医でその電話をかけている医師ですらない。というのがこの国のシステム。

さらに、「最初に〇〇病院の医師です。」とは言ったものの、名前が患者と一致したらその時点で問い合わせが滞る可能性がある。名前を聞かれて咄嗟に「天道医師の代理で電話している者です。」と言ってしまったので、怪しい。

「明日電話をします。本当にありがとうございます。」と入念にお礼を言って、有希は電話を切る。

その日はカルテの情報は得られなかったが、確実に手応えがあった。

ベッドサイドでやりとりを聞いていた天道医師と独出医師に伝える。

翌日、再度有希が電話をかけるということでその場は帰着した。

追記:

アルファベットの伝え方だが、後日別の医師が電話に出た際はスムーズに伝わった。その時に有希は気がついた。この地域は移民の急増した地域の一つだと。それが理由かは分からないけれども。国によってより主流の文化や表現が違うことは不思議ではない。実は二人目の医師が近隣国からの移民の可能性もあるかもしれない。

アルファベットの伝え方NATO版は↓

https://militaryalphabet.net/

追記:

何かの拍子に相手に必要な情報を伝えるか、聞くかの場面があった。その時、独出医師は流暢な英語で私にそれを伝えてくれた。

英語で会話中だから、英語でなければ、一瞬で耳に入り、きちんと脳まで届いて瞬時に対応できなかったかもしれない。素早い会話の応酬の際、別言語と認識し、そっちを聞き理解するのと、会話と同じ言語で言われるのとだと、やはり会話と同じ言語の方がスムーズだ。そもそも、誰に話しかけているのかが明白なのはありがたい。現在進行中の会話と別言語で、もう一人その場にいたら、そちらに話しかけていると思い、現在進行中の会話に集中するためにズームアウトして聞こえづらいように意識の方向を調節したかもしれない。

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