さなコンファイナリスト感想

日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト、略称「さなコン」の二次選考通過リストが、実作品へのリンク付きで公開されています。
https://downloads.fanbox.cc/files/post/2429073/yWhDyaqhbOjPiAEwwcEfEd78.pdf

8/11の最終選考結果発表を前に、ここはひとつ、二次通過全作品の感想を書いてみよう、と思い立ちました。
二次全作品感想は、すでに、

髙座創 さん
https://note.com/tsukurutakakura/n/n5f31dec4a319

坂崎かおる さん
https://note.com/saksakikaoru/n/naf3aab2b9c28

が書かれていますが、(お二方ともファイナリスト!)髙座創さんの情熱の感想、坂崎かおるさんの冷静的確な感想、と比べると、ずいぶんと自分勝手な感想を(しかも作者ご本人に!)書いてしまったような気がしてなりません。まあ、やらかしてしまったことは仕方がない。(ヲイ)

以下、各作品に付けさせていただいた感想の再録です。

阿瀬みち さん 「みずまんじゅうの星」
ほんのりと甘く涼やかで、まるでみずまんじゅうのような読後感。「多くの人のささやきがまるで竹林にわたる風が鳴らす音のようで」いいなあ上手いなあ。
不穏なものをちらりとのぞかせながらも、ゆったりと交わされるみずまんじゅうと私の会話が心地良かったです。

 道 さん 「私にできる最善のこと」
まさか、こう来るとは。超絶的な文明は、超絶的退廃に至る、のかも知れない。そこで唯一可能な愛のかたち。やるせない、切ない、凶暴な、かつ笑っちゃうほど無意味。痙攣的な笑いと静謐な悲しみが同時に押し寄せる驚愕のラストを堪能しました! びっくりしたな、もう。

金銀花 さん 「七月のアドベント」
「終末」が生まれる前から常識の世界、そこでも日常は続く。最後の一日まで。みずみずしい学園生活と、底の知れない諦観。その巨大なギャップに、不思議に心惹かれました。

関元 聡 さん 「手をつないで下りていく」
緻密・正確なサイエンスファクトと、詩的で鮮明な視覚的イメージ。夏の気分に満ちた不思議な幕切れ。多世界解釈が背景にちらついているような気もしますが、ここは素直に煙に巻かれたい。面白かったです!

numnam さん 「追い越した部屋」
存在感のある未来ガジェット、さりげなくも的確なアナウンサーのコメント。しっとりとした描写が心地よい。ありえない事態を自然体で受け入れてゆく主人公。そして破局からの脱出と日常への帰還……と思ったら! オチにしてやられました(^_^;)。対称的なお話のつくりに、不思議な説得力。

女良息子 さん 「ワワワールルルドドド」
理知的なナメクジがツボでした。冒頭のアイデアラッシュから一転、侵入者と平行世界の成功した自らの姿に主人公の鬱屈が爆発! 謎テレビと本筋が、一見無関係なようでいて実は深いところでつながっている感じ。主人公は少し前に進み、ついでに並行世界も未来をつかむ。なんだか元気が出ました!

神崎マコト さん 「無力な僕と英雄の駒」
一見ありがちな異世界ファンタジー、その実、質量と奥行きのある、豪放で存在感のある英雄が、軽やかに精緻に描かれる。冷徹なシステムの一部であることを受け入れ、己の義を貫くフェネに深く共感し、システムに怒るタカフミ。そして世界は救われ、消されたはずの思いが蘇る。切ない、いい話でした!

す さん 「さよなら世界」
切ない。悲しい。そして美しい。深い思いが、ありえない奇跡、すでに失われているがゆえにたまらなく輝かしい不可思議を呼ぶ。まさかこの冒頭からこう着地するとは。お見事でした!

はる【動物のお話屋】 さん 「幸せだったよ」
う。やられました。銀色の巨人すでになく、なすすべもなく滅びヘと転げ落ちてゆく世界で、好美は静かに我が子を偲ぶ。誰よりも頑張った彼を。特撮愛と情感。悲劇はわりかし苦手なほうなのですが、この話はこうあるしかない、ということが強い説得力で伝わって来ました。ありがとうございました。

くまたろー さん 「【創作】土塊の本懐」
破局を目前に、実直に誠実に生きる人々。カージャックの若者たちも、祖母を思いやるけっこういい奴らだったり。同性の友人に密かに焦がれる小宮が、最後に雁野と互いの思いを告白しあう場面の繊細な優しさ。それもみな、土に還る。記憶を巻き取られる描写の幻想味が素晴らしかったです!

平田凡斎 さん 「あんたの世界を絶対に終わらせはしない」
わー! 最高っス! 緻密に、かつ洒脱に組み上げられた、「行くとこまで行った人類」の最終段階。軽やかなドタバタの背後ににじむ哲学的メランコリーと、それをぶっ飛ばすファン魂。うん、あれもそれも、完結まで読みたいですよね!

砂藪 さん 「AIエンドの人類エンド予報」
エンド君、可愛いなあ。人類文明の到達点たる最高度人工知性の、ちょっと間の抜けた、それゆえに心に迫る、ラストメッセージ。その望みは決して叶うことはないのに。おかしくて、切ない。いいお話でした!

かなこ さん 「迷子は迎えを拒めない」
異様な世界に翻弄され、心の支えを見つけたと思った矢先の、理不尽な二つの死。世界の終わりからさえ弾き出される恵の悲しみ。起きていることの異常さと、共感を呼ぶ、すっと入ってくる心の動きのコントラストが絶妙。タイトルもお見事でした。

金銀花 さん 「夢のように終わると思う」
荒んだなりに平穏な主人公の生活をかき乱す、拾ったテレビに写し出された己の姿。全てが曖昧な、しかしどこかに確かな根拠を秘めているような感覚。来たるべき世界の終わりにほのかな安らぎと希望を感じさせる、不思議な作品でした。

彩瀬あいり さん 「ノアの旅」
シンボリックな動物たちとの旅で、少しずつ心を癒されてゆくノア。童話のような語りが優しい。そして、最後に明かされる真実。そう、終わりは始まり、なのですよね。

Edy さん 「ボクと父さんの時雨煮終活」
スイカ。蝉。海と山。水路にひたした足。夏の描写が素晴らしい。そこに次第に影を落とす不穏な真実。夏は生を謳歌する季節であると共に、死を思い起こす季節でもある。勝ち目のない試みに挑むマサル、そして、ささやかな奇跡。控えめで端正な語りに心を揺さぶられました。ありがとうございました。

山崎うに さん 「世界の終わりの、殺人事件 」
世界の巨大な謎と、動機が成立しえない殺人。その2つが結末でぴたりと収束する。後には、理沙の、不器用で淡い、しかし切実な悲しみが残る。
美しい構造のSFミステリだと感じました。お見事でした!

金色ひつじ さん 「上で見ている彼女へ捧ぐ温泉」
タイトルも奇天烈ですが、内容はさらに奇天烈。神を名乗る少女との、世界の終わりを賭けた、しかしふわりとゆるい、最北の温泉を目指す旅。途中で明かされる真相からの流れが、無茶なのにスムーズなのがすごい。結末に癒されました!

暁太郎 さん 「ホーム・マン」
引きこもりの、荒んだ、しかし奇妙に心地良い、ザコクリーチャーとのぬるい対決の日々。しかし、昔のクラスメートの苦難に、男はついに立つ! 冒頭の異様なガラス状物質が、クライマックスでバシッと決まる。切ない、熱い作品でした!

トト さん 「「星屑」と書いて、「ちきゅう」と読む頃」
一見平穏な、しかし随所がほころびてゆく日常。全力で平常心を守り抜く主人公の、ちょっとわかりにくい、しかし並々ならぬ心の強さ。男前な「彼女」に惚れました。そう、世界の終わりはこんなふうに迎えたいよね。

渡 亜衣 さん 「俺と、世界を滅ぼす怪獣女子高生との七日間」
題名にいったい何事かと思ったら、本当にその通りの内容にたまげました! さらりと語られる怪獣女子高生の、人知を越えたとてつもなさ。スラップスティックから、やがてハートウォーミングヘ。これもひとつのハッピーエンド、と感じました。

Pulmo さん 「世界の演奏家たち」
音器だけで埋め尽くされた途方もない世界、生涯を演奏に捧げる人々。幾世代に渡って奏でられ続けた曲の最後に現れたものに、胸が熱くなりました。望むらくは、彼ら「世界」の奏者のように、「宇宙船地球号」のクルーが心をひとつに合わせる日が、いつか訪れますよう。

石桐 さん 「怪獣彗星」
危機を目前にして、奇妙に平穏な世界。「誰かがどうにかしてくれるだろう」という、身につまされる言葉。夜宮の苛立ちと怒りが鮮やかに描かれる。そして終盤、思いがけない、しかし奇妙にしっくり来る、怪獣彗星の発動。
夜宮の心情と世界の行方の交錯が力強い。読みごたえがありました!

大五郎 さん 「世界の終わりとペンギンたち」
終わる世界ヘの闖入者(大阪弁)に翻弄される主人公。ちょっとコミカルな、やがて哀切な、世界の終わり。深い思いを抱えたまま、結ばれない二人、結ばれる二人。そして最後に、ほのかな救い。人生のままならなさ、意外さ、そんなことを思い起こしながら読み終わりました。いい話でした!

天ケ谷りく さん 「Genesis Apocryphon Award」
なんと! 「さなコン」自体をメタ仕立てにして、しかも主人公は応募者。随所に並々ならない情報量とセンスが光る。するっと軽快な幕切れが心地よい。楽しかったです!

 瀧本無知 さん 「死ぬために生まれた僕たちは」
ストレートに、終末そのもの、そこで人はどう振る舞い何を感じるのか、が伝わってきます。「即死以外すべて推奨」など、随所にエッジが効いています。瑞々しく、かつ重量感のある語りに圧倒されました!

坂崎かおる さん 「ファーサイド」
事態の本質は全く語られず、しかし、全ては最初から明らかだったのだ、という感覚が強く喚起される。ラスト、主人公のはかない希望が切ない。こういう無意識に食い込んで来るような話は好みです。冷戦期の時代背景が素晴らしい。

Dear. さん 「アクター」
するっと始まり、つるっと終わる。しかし、後に残るものは確実にあって。かりそめの、極度につくりものめいた人生を四ヶ月サイクルで生きる人々に、不思議な存在感を感じます。軽やかでありながら不穏。上手い、と思いました。

 泡國桂 さん 「終末ドリヴン」
「終末景気」はちょっと面白いな、と読み進んでいくと、次第にほおがこわばってくる。すごく怖い。経済政策としてのバーチャル終末。それはリアル終末に確実に接続している。男前な主人公と、真っ黒な未来のコントラストが鮮やかでした!

ゆう さん 「だって、長男だから」
目前の破局を直視できない人々。それが見えているのに、何もできない主人公の鬱屈。両親との会話に、息を飲むような現実味を感じました。ラストの飛行機もうまい、かつ切ない。
終末は、こんな風にやって来るのかも知れません。あるいは、もうすでに……。

遠野しま さん 「黒猫の隠匿」
いきいきとした関西弁がすばらしい。凛とユウの、ほのぼの会話に癒やされました。ちょっと呆気に取られるような世界の危機、という壮大なホラを、細部のリアリティ(猫の瞳など)が、ガッシリと支えている。すごい。妬ましいレベルで上手い。面白かったです!

四宮ずかん さん 『止まれない少年』
凄まじい幻想。主人公のみずみずしい感性で、世界の、ありえない、しかしくっきりとあざやかな「終わり」が描かれる。美しく残酷な展示用世界。純粋に娯楽のための。神としか言いようのない存在の、底知れぬ酷薄さが怖ろしい。読了後、タイトルに膝を打つ。うまいなあ。

tokyonitro さん 「シックスティーン・オブ・ハイ-ファイ」
高密度で描かれる、急速に崩壊していく世界。ひとつひとつの固有名詞がバシッと決まっていて心地よい。主人公のテンションの高い感性と、鮮明なカタストロフの対比。スタイリッシュな語り。これは映画で見てみたいなあ、と思いました。

Genesis さん 「終わりの日まで生きる」
強い。なんという強さ。「世界の終わり」への最も果敢な抵抗は、最後の瞬間まで人間らしくあり続けること、なのかも知れない。学童保育やデイサービスの簡潔的確な描写に、破局を前にしてもこの人たちは確かにこう振る舞うだろう、という強い説得力を感じました。

まこはらなかと さん 「神様への願い事」
ドロドロの不倫と、世界をリセットする神様のコントラストが見事。失敗だった世界、人々が望んだ通りの終末。岬と三井の優しい交流が胸に迫る。異常すぎてかえって説得力がある世界の終わりがよかったです!

デイジーデイジー さん 「めめんともり」
繰り返される「めめんともり」のアイデアの切れ、意識不明になった樹を思い続ける真吉の切なさ。田舎暮らしのリアルな空気感や、壊れていく世界の控えめであるがゆえに鋭く胸を突く描写が、鮮明に記憶に残りました。

トーヤ さん 「初夏の田舎町、老人、ユビティ、世界の終わりとサポートロボット」
いい話でした! こんな超知性になら、「後」を任せてもいいな。そんなことを思いました。シンギュラリティポイントを乗り越えるものは、案外、感情的つながり、なのかも知れません……。あと、ユビティさん可愛い!(ちょっと、とてつもないけど。

架旗 透 さん 「君のチャネルが開くとき」
これは痛烈。日本語が終わりかかっている近未来、世界から切り離されているタケオとトヨキ。『太陽を盗んだ男』の無茶苦茶な熱気が二人を揺さぶる。閉塞感と怒りがビンビン伝わってきます。破天荒なようでいて、今・ここ、と、確かにリンクしている話だと思いました!

月坂真白 さん 「きっと彼は猫になる」
ふわふわと浮遊するようで、しかし奇妙に現実的で。まるで、寝起きに思い返す夢のように。ピンと張り詰めていながら、安らかで希望を感じさせるラストが印象的でした。そして二人はきっとまた出会う。世界の謎解きから一気呵成に結末になだれ込む展開が心地良かったです!

髙座創 さん 「終わる世界は終わらない」
ありえない異常事象、それを解明する天才科学者。長い歴史のある、魅力的だけれど今成立させるには高難度の話を、さらりと語って軽やかに腑に落とし込む手際の鮮やかさ! 迷惑ETIもいい味わい。「開会式」当日に読んだので、ラストのワサビがことのほか効きました!


(付記)
実作を志す者なので、ものすごく勉強になりました。絶対に私には書けない、例外なく最後までグイグイ読ませる作品ばかり。そして、どれ一つとして似た作品がない。オリジナリティの塊です。ちょっと、アンソロジーを編みたい衝動に駆られます……。

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