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スポーツ業界に「求められる人材」と「必要なスキル」を考える

皆さん、こんにちは。神村です。

前回は、ビジネスの基本となる3つのセオリーを、その活用目的等を中心に解説しました。
今回は、Ascendersが先日発表した「スポーツ業界求人まとめレポート」の内容を参考に、スポーツ業界に「求められる人材像」と「必要なスキル」を考えてみたいと思います。

(本稿は「Off the pitch talk 」第140~142回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さんでお届けします)

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スポーツ業界に求められる職種

(神村):先日、アセンダーズ社が取り扱っている求人の内容を取りまとめたレポートが発表されました。神田さんも読んだと思うんだけど、どんな印象を持ちましたか?
(神田):全体を通して思ったのは、当初抱いていたスポーツ業界に対するイメージとのギャップはそこまで大きくなかったです。
(神村):ざっくりいうと、職種別では営業が一番多くて全体の3割程度、次に続く企画職や広報、マーケティングを合わせると全体の6割を占めるているね。もう少し、スペシャリスト系人材を採用していると思ったんだけど、やはり営業が主流なんだなって。
(神田):そうですね。どのクラブにも共通して言えそうですが、”短期で稼げるスキル”を持った人材が求められている気がします。広報・マーケにおいても、専門性に留まらず、売上増につながる施策を打てる人が重宝されるのではないでしょうか。
(神村):そうだと思うよ。あと意外なのは、いわゆる CRM やデジタル人材の求人が多いのかと思ったら結構少ないんだよね。サッカー界でも観客を呼ぶ新しい施策(例:投げ銭)が始まったりしたけど、その割に社内でデジタル人材を採用する機運がないみたいだね。おそらく、多くのクラブが外部企業に丸投げしているんじゃないかな。でも社内に知見のある人が居ない状態だと、外部に委託するにせよ、どれが良いサービスなのか判断が難しいよね。
(神田):たしかに。別の観点では、人事系の募集が無いことも気になりました。加えて、一般企業には不可欠ともいえる経理や法務系の求人も全く見当たりませんね。
(神村):そうなんだよね。バックオフィスと呼ばれる仕事の重要性は理解していながらも、その人材に投資するだけの余裕がないクラブが多いのかもね。本来企業を経営する中では、とても重要なポイントだと思いますが。
(神田):同感です。まずは目先で収入を増やせる人材採用を優先している印象でした。クラブの経営力を真の意味で強くする職種を採用する資金を得るには、結局まず売上という結論に行きつくのかなと。一種のジレンマとも言えるでしょうね。
(神村):直接お金を生まない職種に対して優先度が下がるから、長い目で見たらずっと課題のまま残り続けるんだよね。けれど、これはクラブに限った話じゃなくて、中小企業にはよくある話ではあるから、そこを変えられる経営者がいるかどうかが重要だと思う。そこを意識して、早い段階でバックオフィスを強化している企業は5~10年後には数段上のフェーズに成長出来ると思うんだよね。

営業職に求められるもの

(神田):では、具体的にそれぞれの職種において求められるものを細分化したいと思います。
(神村):求人を見る時に必要な観点が2つあります。「業務に直接関わるスキル」と「仕事におけるスタンス」です。前者は、業務で得られる経験や専門性が該当します。後者は、個人の思考特性を可視化したもの、いわゆるポータブルスキルを指します。
(神田):なるほど。では、今回は最もスポーツ業界で求められる職種であった”営業”について焦点を当ててみたいと思います。
(神村):Ascendersさんが出した統計を見る限り、営業で求められるスキルについては、「人材系」や「銀行・証券系」の営業ニーズが高いという結果でした。これについてはどう思う?
(神田):正直、意外でした。人材や金融業界って、スポーツ業界とは直接関わらないのに、そこをピンポイントで求めているとは思わなかったです。人材と金融に共通しているのは、どちらも無形商材を扱う営業ですよね。
(神村):どちらも営業会社の代表格みたいな業界です。ただ厳密には、銀行と証券だって全然スタイルが違うんだけどね。僕は、広告代理店やイベント企画の経験者も上位に入るかなと思ってたんだけど、意外と入ってなくて驚きました。
(神田):たしかに、そこは一般的なイメージとの乖離があるかもしれませんね。では、ここから神村さんが定義する営業の重要スキルをご紹介いただければと思います。
(神村):僕は大きく分けて五つのスキルを定義しています。一つ目は「リストアップ」スキル、二つ目は「アポイント/コンタクト」スキル、三つ目は「提案書作成」スキル。四つ目は「交渉/コミュニケーション」スキル、そして最後に「クロージング」スキル。以上の5分野をそれぞれ点数化すると、個々のセールスで少なからず得意・不得意がある筈です。それを整理して、自分でどのスキルを伸ばすか、採用する側はどこをのスキルを教育しようかを考えるツールとして活用してもらえたら良いと思います。
(神田):では、まず一つ目の「リストアップ」について解説お願いします
(神村):リストアップは、ただ闇雲にやるのではなく、商材とターゲットを選定することを指します。どの会社にどの商材を売るかという明確な意図を持ったアプローチが大切。また、「この会社にはこんなニーズがありそうだ」という仮説を立てる力も非常に大事ですね。今ではインターネットで調べれば簡単に情報収集ができるので、どういう業界を攻めると商品が売れるかを考えるスキルは重宝されます。
(神田):なるほど。まさに油田を発掘するようなイメージですね。では、二つ目についても解説お願いします。
(神村):二つ目は「アポイント/コンタクト」スキルは、例えば人脈を使うとか様々なアプローチ方法があるんだけど、いくら狙い撃ちしても常にうまくいくとは限らないので、ある程度の量をこなす必要があります。量と質を反復しながら、自分の立てた仮説に基づいたアプローチ精度を上げていくと良いです。また、できれば経営者や役員クラスへのトップアプローチが出来ると尚良いですね。
(神田):商談が担当者止まりで役職者まで繋がらないとか、よくありますよね。あとは役職者の決裁が得られないまま失注しまったり。。。
(神村):きっと、人材会社や金融系の営業は業種柄トップアプローチに慣れているから、求められているのかもしれないね。三つ目の「提案書作成」は、提案書を作る上で肝となるのは、スライドを凄く綺麗に作るとかではなくて、相手のニーズをきちんと把握するヒアリング力なんだよ。商品を買うことで、会社の課題が解決するのか、メリットがあるのかを相手に想起させられるかが勝負です。
(神田):そうなんですね。ということは、ヒアリングが上手くできたか否かで勝負は大方決まっていると言っても過言じゃないですね。次に、四つ目のスキルについては如何ですか?
(神村):四つ目の「顧客との交渉力」は、売る側と買う側の目的の共有がカギです。当たり前だけど、営業側は「高く売りたい」と思うし、顧客側は「安く買いたい」と思うよね(笑) つまり、互いの利害が相反する中で、心の障壁を取り除いて顧客から課題を解決するパートナーだと思ってもらえるようにコミュニケーションを取れるかが大事です。
(神田):言い換えると、顧客に寄り添う、あるいは伴走者になるイメージでしょうか。
(神村):正にそうだね。最後は「クロージング」スキルだけど、これはお客様の意思決定プロセスをきちんと把握するということです。例えば、社内会議はどれぐらいの頻度で行われるのか?、いつ、どの段階で決められるのか?、決める上で大事な基準が何か?等です。これらのことを捉えないと、ボールを一方的に相手に投げたまま、いつまで経っても返事が来ない、なんてことになりかねないからね。
(神田):ただただ、返事が来るのを祈るだけになっちゃいますね(笑)
(神村):できれば、ダメ元でも「経営者のいる会議の場において直接プレゼンできる機会を頂けませんか?」と聞いてみると良いと思います。以上のスキルをベースに、採用面接の時に自己採点してみる。他方、採用する側も面接を通してどれぐらいスキルがあるかを採点してみると、採用後のギャップを解消できる筈です。その意味で、互いにメリットがあります。どの職種でも、ビギナーからプロフェッショナルまで様々レベルがあると思うので、自分が今どの段階にいるのかを把握する上でも役立ちそうです。
(神田):はい。面接ってどうしても面接官との相性だったり、それこそ営業では元気溌剌としている、みたいな個々人の感性に基づいた(≒抽象的) もので評価しがちなので、採点することは双方にとって重要なことだと思いました。

ポータブルスキルの分解

(神田):続いて、ポータブルスキルの解説もお願いします。
(神村):こちらは定性的な部分で、今回のレポートにも「コミュニケーション能力」や「成長意欲」、「向上心」といった、新卒採用でもよく目にする要素が重視されていますね。でもこれらの要素って評価する上では全て主観だし、全部大事なのは分かってはいるけど、全部完璧にできる人は誰も居ません。そういう主観的な部分をどう判断すべきなのか、例えば「コミュニケーション能力」とあるけど、それが当社にとって意味することは何だろう?ということを明確にすることが大切です。逆に共通の基準が無いと、面接官の個々の主観で評価がバラバラになるんだよね。実際ここが一番難しい部分でもあります。
(神田):将来、AI・ロボットによる面接も益々普及していくと思いますが、人間による面接が主流の現在では、特に気をつけないといけませんね。
(神村):こちらも全部で五つの重要ポイントがあります。一つ目は「当事者意識」、二つ目は「挑戦」、三つ目は「巻き込み力」、四つ目は「誠実性」、そして最後が「遊び心」です。それぞれについて話せればと思います。
(神田):最初の「当事者意識」についてですが、具体的に何を指すのですか?
(神村):“自発性”とか”主体性”、”能動性”あるいは”自責”といった言葉を軸に物事を判断していくということです。二つ目の挑戦は、自分自身への”挑戦”、新しいビジネスへの”挑戦”、あるいは高い目標への”挑戦”など、少しずつ意味合いが異なりますが、最終的には自己成長やコミットメントに表されるような挑戦を大事にして欲しいです。
(神田):当事者意識をもって自己成長に繋がる挑戦、結構ハードル高そうです(笑)では次の「巻き込み力」の説明をお願いします。
(神村):このスキルは本当に大事だと思うんだよね。自部門内はもちろん、他部門、上司や同僚、もっと言えば社外の人たち(社会)それを巻き込む力です。このスキルは一朝一夕で身に付くスキルではないし、もしかしたら先天的なセンスも多分に影響するかもしれない。今ちょうど話しながら思ったんだけど、巻き込み力と同時に、巻き込まれ力を磨くのも良いかもしれないね
(神田):過去放送でも出てきた、リーダーシップとフォロワーシップの関係性と同じですね!その次に大事なスキルは「誠実性」ですよね?
(神村):そう。面接ってどうしてもリーダーシップみたいな部分に焦点が当たりやすいので、ガツガツ系が目立ちやすいんだよね。部下、仲間、顧客、場合によっては社会に対して分け隔てなく誠実である人かどうか。ここはすごく大事なポイントで、「とにかくガンガン上に行こうぜ、俺についてこい!」という人ばかりだと、どうしても誠実性が失われてしまいます。以前経営していた会社でも、全社的な行動指針の中にSincerity(誠実性)を入れたんです。
(神田):ガンガン行く=他人を蹴落としてまで這い上がろうとする強引さ、とも言えそうですからね。実際に行動指針に組み込むことで、日々の仕事において意識できそうですね。
(神村):そして、最後の「遊び心」は、やっぱり最後は楽しむ心の余裕が大事です。ポジティブ思考や楽観性とも言えるね。自分の失敗や上手くいかない時でも必要以上に自分を責めたりせず、逆に自分を許す精神を持っているだけで組織はギスギスしなくなるんだよ。
(神田):五つを俯瞰してみると、最初の三つが”ガツガツ”、”自己成長”みたいな前向きのスキルで、後の2つが自身の心に余裕を持たせる、穏やかな印象を受けました。それぞれのバランスが大事ですよね。
(神村):そうだね。そうは言っても実際に面接しててこの五つ子全て評価するのはかなり難しいんだよ。面接時に上手く機能させるには、まず受験者による自己評価、面接を通しての企業評価、そして可能であれば人材紹介会社のような第三者による評価を総合的に照らし合わせてみる。もちろん、得点の高低は大事ですが、より大事なのは自己評価と他者評価のギャップをいかに埋めていくかということです。
(神田):自己評価が高くても他者評価が低い、あるいはその逆のパターンもありますよね。
(神村):それぞれの場合で、フィードバックの仕方も変わってくる。あとは、企業にとっては面接・採用が目的ではなく入社後の活躍が重要なはずです。したがって、採用後どうやって教育・育成していけばいいのか、どういう教育担当を割り当てるべきかを考える上で参考情報になる筈なんです。
(神田):企業のみならず、受験者にも自己分析に繋がるというメリットがありますね。自分では得意と思っていなかった領域が実は他者から評価される場合もありますから。つまり、自分の新たな可能性に気付けるチャンスでもあると思いました。
(神村):自己分析が深まると自信が持てるようにもなるし、純粋に嬉しいよね。

まとめ:他の職種についても細分化してみよう

(神田): 今回は営業についてスキルを細分化しながら解説していただきました。
(神村):営業って、コツさえ身に着ければ誰でも出来る職種なんです。ですから、多くの人に自信を持って欲しいですね。今回は営業に焦点を当てましたが、それぞれの職種において参加できるとより採用が効率化するし、何を磨けばスポーツ業界で活躍できるかが見える化されるよね。若い人たちの学びのきっかけになれば良いなと思います。 そういう意味ではスポーツクラブにちゃんとした人事部は必要だなって改めて思いますね。
(神田):また他の職種についても別の回で深堀したいので、また次回もよろしくお願いします!
(神村):そうだね、また近々やりましょう!

(文責:神田)



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