指定校推薦と友人関係

高校三年生にして、今週末共通テストを控えている身ではある者の、私の進路はすでに決まっている。

8月ごろに指定校推薦が貰えるかも、という話になり、9月に本決まりして、冬休み前には大学が決まった。無論、面接やら試問やらはあったけれど、一般の人と「受験勉強」という点においては苦労の差が歴然。夏休みだって指定校がほぼ決まっていたから好き勝手遊んでいた。

世間的には「指定校はダメ」という人がかなり、強い。特にネットにおいては。叔父が指定校で有名大に進学している人で、両親も早めに決めたほうがいい、と後押ししてくれ、私立にお金を出すことを全く問題としない家庭だったのは有難かった。

指定校で早めに決まった、といえば親戚は両手を上げて喜んでくれたし、周囲の方々も「推薦は優秀だった人にしか貰えないんだから、高校生活頑張ったんだね」と言ってくださる。有難い環境で生ぬるく生きている。

では、私は高校生活で勉強を頑張ったのかと聞かれれば、別にそうでもない。側から見たら、頑張ったほうなのかもしれない、という自覚はあるし、この量で「普通」というと嫌味に受け取る人もいることは知っている。しかし、そうでないことは念頭に置いておきたい。

一年生の間はオール5で、二、三年生は物理化学古典は4。定期テストは順位は気にしていなかった。得意教科は絶対に5を取る。他は4でよかった。それでも4.5は上回るから。そして模試の校内順位は大体60番前後を彷徨っていたが、模試を重視しておらず爆睡していたせいで、ちゃんと全部起きて受けたやつは10番とか(学年は300人前後なはず)。
定期テスト前は、2週間前からちゃんとやるし、前の休日は18時間とかやった日もあった(日本史と数学の計画をミスったせいだけど)。

私の周りには私なんかよりよっぽど頭が良くて、努力ができる人がゴロゴロいた。努力を努力と思ってない人たちが沢山いて、そんな人の中で自分が頑張っているなんて到底思えなかった。強いて言うなら、やり方がうまい、だけ。なんとなく、ここ出すだろうな、ここは出ないだろうな、という勘が当たった。模試も過去問を見てればなんとなく、傾向がわかった。努力なんてしてなくて、努力をしなくて済むように効率を良くしていた。

だからこそ、その努力できる人たちが指定校を取らないでくれてすごく感謝している。私は夏からずっと、2月の最後まで勉強できるほどの体力と精神力はなかった。

今は、入ったらどうなるんだろうという不安に日々苛まれているけれど、一般の人と比べたら本当に小さな、粉砂糖一粒みたいな悩みでしかない。

指定校は汚いとか、ダメとか、色々いう人がいて、その主張はわかる。死ぬほど周りが頑張っている中、自分だけのうのうとしてて嫌になる時もある。自分はなんで一般で頑張れるような人間じゃなかったんだろう、と。

でも、間違ったことをしたとは思ってない。運が良かった。そしてその運の良さを活かせる程度の成績を取れていた。それだけ。それ以上でもそれ以下でもない。

大学に入ったら、明らかに力に差はあると思うけれど、そんなことは百も承知で指定校を選んだ。お金がないとか、地元から出してもらえないとか、色々な人が周りにいた。指定校を取るか悩んでいる友人には「弟がいて、私が私立になんて行ったら……」と言われたこともあった。私には妹が2人いて、そのどちらも割と高めの習い事をしているなんて絶対に言えなかった。

金持ちだとは思ってない。でも苦労もしていない。お金がない、を冗談で言える家庭。

指定校を取る取らないの6月は、友人とのそういうのが、見え隠れした時期でもあった。口角を上げながら、友人の言っていることがよくわからない時もあった。

大学を決めるのも、受験も大変で、そしてその過程で友人とのなんとも言えない違いが見えたのが、一番しんどかった。

あと2ヶ月弱。友人の多くは一般で、国立を目指している。私はもう少し、生ぬるく生きるつもりである。面接の前のあの絶望的な緊張は、誰にもわからないし、言ったところで「指定校」でしかないけれど。


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