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m_hyugaji
2021年5月21日 14:52
プロローグ 閉塞感の漂う時代、たくさんのヒトミさんたちが、片目を瞑って生きています。 先人たちの言うように、両目を開いて伴侶を探し、片目を瞑って伴侶と暮らし、なんとかなると思っていたはずなのに、なぜだか心が壊れてゆくのです。 先人たちに、可哀想だと思える間は我慢しろと教わって、同情は愛情と同義語なのかと考えたり、いつかは変わるのではないかと期待したり、優しいところもあるからと思い直したり、自
2021年7月23日 20:52
月暦をめくり、春が終わる 空調の効いた老人ホームには、毎日同じ空気が流れている。入居者さんたちは、外の空気を吸いたいからと、この頃はよく散歩している。空は晴れたり曇ったり、風は冷たかったり生温かったり。もうすぐ春が来る印の強風を、誰もが待ち望んでいるように思われた。 ヒトミさんにはいま、全ての季節に対応できる服が手元にあったが、奈良で篠田さんにもらった重いウールのコートをいつまでも着ていたい