見出し画像

支援者向け 患者移送業者の実態と気付き

背景

 こんにちは、いくら軍艦です。だいぶお久し振りです。第2子の妊娠中に胎盤の血腫で病欠になってましたが、今年の3月一時的に職場に復帰できました。今は産休に入り、学会の準備もできて一段落ついたところです。むしろこういうタイミングじゃないと長々と文章書いて更新できないな!?なかなかうまく行かないなーと感じる今日このごろです。
 さて、先日、日本のMattoの町を考える会が主催されている「続・精神病院の不条理」という講演会に参加したのですけど、その内容が精神疾患患者様への支援者必見の内容だったなと思い、出来得る限りでこちらに紹介させていただこうかなと思い文書を作成しています。より多くの支援者に、精神疾患に関わる人々が不条理な思いをしているかについて知っていただき、医療や福祉がどのように変化していけばいいのか一緒に考えるきっかけになったらいいなと思います。

紹介

 医師の診断、保護者の同意で患者さんを強制入院させることをみとめている法律は「精神保健福祉法」です。改革がすすめられてきてできた法律ですが、本来治療や入院は本人の同意ありきのものなので、ニュートラルに考えると患者さんからしたらとても不条理ですよね。この講演会の第一回目「精神病院の不条理」が12月にあったんですけど、「社会的な問題があるから退院できない」と医師から告げられて数年退院できなかったと語る人がいました。さらに、精神疾患患者さんは、地域に出ても住みたいところに住めない、働きたい場所で働けないというような不自由にさらされ、偏見の目で見られてきた苦悩もあります。
 今回はそんな数ある精神疾患患者様の不条理「患者移送業者と患者さん、家族の実態」に着目して述べます。講演会の内容は詳しく公表してはいけないので、こちらも参考にしております。(無料で記事が読めます!おすすめです)

患者移送業者の実態

 患者さんが入院するとき、基本は患者さん自らか、家族が付き添って来院になりますよね。しかし、精神疾患患者さんはそうはいかない場合があります。混乱していると外に出るのがとても怖くなります。病気の症状がでていると実感できないと、病院にも行きたくないです。当たり前のことです。しかし、精神症状が悪化し部屋から出てこなくなってしまい、ちゃんと食べているのか、休んでいるのかもわからない・・・そんな患者さんのことを家族はとても心配します。そんなとき相談窓口になるのは保健所になります。保健所職員、医師が事前調査して入院が必要と判断された場合に、保健所職員が搬送を行うのが公的手段です。
 しかし、警備会社などの民間の会社が患者を搬送する事例があり、専門家の診断抜きで患者さんが精神科病院に強制入院となってしまうのだそうです。この記事で当事者が語っていますが、業者によってはやり方も手荒だそうです。本人への説明も同意もなしにこんな事があってもいいのでしょうか。

専門職の事前調査につながらなかったケース

 ある当事者家族は、病院や保健所に何度も相談したが、「精神科病院に連れて行くように」と言われ、引きこもりの患者さんを連れて行くことができず、やむなく患者移送業者を利用したと語っていました。公的な相談窓口から適切な手段につなげることができない事例だと思いました。地域窓口と専門機関の狭間の大きさを感じさせます。

精神保健福祉法が悪用されたケース

 こちらの記事で、当事者の息子が「認知症だから精神科病院に連れて行く」と言い、移送業者の人たちとともに当事者を拉致し、精神科病院に入院させた事例が紹介されています。当事者は妻と介護施設を運営し、認知症の症状は一つもなかったそうです。家族の同意で強制入院が叶う、法律が悪用されたケースですね。

気づきと考えたこと

 上記のケースが起きるのは、精神疾患患者さんの家族のセーフティーネットが未熟であったり、世論が精神疾患に無知である背景があると思われます。いっそのこと精神保健福祉法に「強制的に」介入できる力がなければ、医者や看護師、その他の専門職もみんな地域に出て、患者さん本人にきちんと同意を得てから入院手続きや治療を開始する世の中ができるのかもしれません。
 しかし、精神疾患患者さんと関わる私にとって、「強制」というのはやむを得ないこともあると感じます。「強制的に」何かしなければ本人の安全が保たれない、命が危険にさらされることもあるからです。例えば命に関わるほどの拒食。精神症状に左右されているのであれば、拘束して経管栄養をつなぎます。そうまでしても命を守りたい。被害妄想による他害行為については、強制入院していただき、症状が落ち着くまで保護室ですごしてもらい、人との距離をおいてもらう。症状に左右されていたからといって人を傷つけてしまった体験は、我に返った本人に重くのしかかってしまいます。ただ、その「強制的に」何かさせていただく判断は必ず専門的な診断のもとに行うべきだと思います。
 今回紹介されたケースでは、移送に専門家の診察や判断はありません。必要とされているところ(引きこもってしまっている患者さんのもとへ直接専門職が出向くこと)に医療の提供がなされていないことが問題です。また、法律の悪用はあってはならないことと思います。

なにができるのか?

 現時点で、ただの平ナースである私ができることを考えました。一つは大変な目にあってきたであろう患者様や家族に会ったらねぎらい、それぞれお話が聞けたら丁寧に聞くことです。医療者側の対応、地域の対応について意見があればそれ相応の場所で細々とでも意見ができたら世の中が変わるきっかけになるかもしれません。
 またCNSとしては、精神疾患やストレスについて医療者や一般市民の方に情報提供し、世論を高めていくことだとおもいます。こちらはできる機会があったらなんですが。

まとめ

 今回講演を聞いて、患者さんの移送に専門職が関わっていないケースがあるという実態に驚き、知らなかったことが恥ずかしいなという気持ちもありました。必要なところに精神科医療を提供できるよう、看護師としてできることをこれからも考えていきたいと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?