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#親を捨ててもいいですか。

夕飯を終え、リモコンで番組欄を検索していたら、
#親を捨ててもいいですか
というタイトルに目がとまった。
しかもクロ現だ。

観てみよう!そう決めて、10時前、
テレビの前に腰を下ろした。

歯磨きを終えた夫が
「2階に上がるよ。」
そう言いながら画面に目をやる。

ちょうど、番組のタイトルが流れた。

「私、これ観てから上がる。先に寝てて…」

そう夫に声をかけた。

「クロ現かぁー」
夫の足が止まり、画面に釘付けになった。

実は、一緒に観て欲しかった。
良かった…心の中でそう思った。

番組では、信田さよ子さんが中央に座っていた。
この人の本も、たくさん読んだ。
私にとって日本のスーザンフォワードのような存在。

精神的虐待を受けた夫も、この番組に登場していた男性と重なるものがいくつもある。
施設に入っている義母も同じ。
やり場のない気持ちを子どもにぶつけていた一人だ。
結婚してからは、それが顕著になった。

世間体を気にして親との関わりに苦しんでいる人はたくさんいるだろう。

このわずかな時間でこの内容を伝えるのは難しい。

観ている間、夫は悲しい顔をしていた。
「ぼくも捨てたのと一緒やな…」

少なくとも、私はそうは思ってない。

程よい距離を保っているだけだ。

義父が他界し、実家で一人暮らしをしている義母に夫は一生懸命、関わっていた。
電話があれば、すぐ駆けつけていた。

しばらくして

「もう、いっそのこと、いなくなればいいのに。」と

母親にそんな境地にまで追いやられた夫。

一人暮らしに支障が出始めた頃、
施設に入りたくないと拒否し続けた義母に向かって私は言った。

「このままでは、ご近所に迷惑もかかるし、転倒して大怪我でもしたら大変です。私が仕事を辞めてお義母さんの面倒を朝から晩まで看ることにします。そのかわり、私のやり方でやらせてもらいますけどいいですか?」

義母の目を見て、自分の本気を示した。

どう反応するかは最初からわかっていたから。
そこからは、話が前に進んだ。

ケアマネジャーさんに力を貸してもらい、義母の希望する施設に入所できた。
義母の姉妹を含め、周りの親戚がこれで安心したと言ってくれた。

入所して3年目。
夫が関わりをやめてから、自傷行為もなくなり、平穏な日々を送っている。
おそらく、親の役を降りて、ひとりの女性として生きているのだろうと思う。
介護サービスの中に買い物を加えてもらったのだが、施設から送られてきたレシートを確認すると

義母が最初に買ったのは、

化粧品と洋服だった。

夫は、その金額に驚いていたが、
私は安堵した。

後に施設の方から、
主治医の回診日、
朝からお化粧とネックレスをして部屋で待っていたと。

あの人らしい。
良かった…これで良かった。

モラハラ夫と頼りない息子を手放してさっぱりした気持ちでいるのは義母の方かもしれない。

最近の彼女は、ぬいぐるみを購入して可愛がっているという。

女の子を産みたかったという彼女の言葉通り、女の子の名前が付いていた。

施設に入ってからの彼女の行動は
同じ女性として
なんとなくわかる気がする。

息子としては、複雑かもしれないが…

でも、そんな生き方もあっていいと思う。

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