Kornの話(音作りの仕方もちょろっと)

私の一番好きなバンドです。

Kornをご存知の方は多いと思うんですけれど好きな方ってどれくらいいるのでしょうか。90年代、スラッシュメタルのブームが去り、90年代の倦怠感とグランジミュージックなどの台頭があった時期、94年に颯爽と現れ、そのあまりにルサンチマン的な鬱屈とした音楽性とへヴィネスな音楽から一躍人気を得たのがKornです。ニューメタルというジャンルの開祖であり今も最前線を走るバンドです。

7弦ギターを1音下げにしたLow-Aの重たいギター・ベースサウンド、不穏なコード進行、攻撃的なサウンドとボーカル、何をとっても攻撃性にすべてを振り切っていて、90年代度肝を抜かれたメタラーは多いかと思います。のちにニューメタル界隈はLimp BizkitやSlipknotが台頭してきますが、やはり、Kornの真似はできないもので、それぞれ別のジャンルとなっています。

私は年齢的にデビュー時からではなくIssuesからのファンなのですが、1stのラストトラック、Daddyを聞いたときの身震いは忘れられません。ジョナサン(Vo)のあまりの悲嘆な叫びと不穏すぎるMunky/Headのツインギター、重すぎるフィールディのベース。これほど苦しい音楽があっていいものかと、悲しくなってしまいました。ジョナサンの虐待の経験からこれらの鬱屈はきているのですが、これほどの怒りはそう内包できるものではありません。

Issuesの時代になると、メロディアスな音がへヴィネスと両立されはじめます。Kornは毎回出すアルバムに類似点がなく、常に前進するバンドです。このアルバムも前作『Follow the Leader』でたたき出した音とはまた別の路線をいっています。

02年発売されたアルバム『Untouchables』よりリードトラックのHere to Stayは7弦のへヴィを最も感じられる楽曲で現在も根強い人気を誇ります。02年とは思えない重低音が特徴的で燃えるような荒々しさも感じさせます。しかしこれが発売されて以降のKornはやがて右肩下がりの人気になっていきます。

特に『Take A Look Around the Mirror』(04)ではファンの間でもマンネリと言われ、『See you on the other side』(05)以降、Drのデイヴィッド・シルヴェリアは脱退、ギターのHeadも宗教上の理由から脱退し、ここから約10年にわたるKornの不調期が続きます。私もこの間に発売された『Untitled』、『Path of Totality』『Korn3』はいずれもあまり芳しいイメージがありません。

そして2009年、ドラムにレイ・ルジアーを迎え、2013年Headが戻ったことにより音に復活が見られることとなりました。

『The Paradigm Shift』(2013)では得意のオクターバーフレーズは控えめでしたが、Headの音楽センスが戻ったことで、へヴィリフを刻むMunkyと空間系を支配するHead、当初は物議をかもしたレイのドラムもなじんでくることとなりました。

そして私にとって近代Kornの完成系とも思えたのがこの『The Serenity of Suffering』(2016)です。エンジニアにジョシュ・ウィルバーを、プロデューサーにニック・ラスクリネッツを迎え、Kornとはどんなバンドであるかを見つめなおしたともいえるアルバムで、レイのドラムもこれ以降デイヴィッドをリスペクトしたパワープレイになっており、支持を得ました。また、ギターのカオティックとへヴィネスも完全復活し、ジョナサンのグロウルやデススキャットも復活、すべてが完璧と私は今でも思うアルバムです。

続くThe Nothing(2019)も同じ編成での制作陣で非常に洗練されたへヴィとリズムメタルとなっていますが、悲しいことにこのアルバム製作中にジョナサンの妻であるデヴェン・デイヴィス氏が逝去したこともあり、このアルバムは全体的にリリックも含めてジョナサンが奥様へと向けた音楽を兼ねています。特に『This Loss』などの悲しさは優美でありながら悲しいものでした。

2022年、新アルバム『Requiem』がリリースされました。これについてはレビューを書いておりますのでそちらを参照ください。

・Kornの音作りのしかた。

これは私が作ったInsaneのカバーです。

ちょっとしたクッキングコーナーみたいなものです。DTM/宅録環境という設定で作る前提とします。狙うのは現代Korn『The Serenity of Suffering』のトーンです。

まず前提なのですがKornの音を作るとき『ふつう』や『綺麗』を目指してはダメです。振り切ったサウンドを目指し、特に重低音を意識しなければ半端な音になります。

・ギター

7弦必須です。全弦1音下げLow-Aです。私はギターはHeadモデルのLTDのギターを使っています。そしてギターはPUにディマジオのBlazeやFishmanのセラミックハムなど高出力を使うとよいでしょう。Ibanez時代のPUでは低出力過ぎてフロアストンプでないと目標の音に近づきません。現在Munky/HeadともにEVERTUNEのギターをメインで使っていますのでトレモロアームは使わないです。代わりにピッチベンドはワーミーで行います。

アンプはMESAのデュアル/トリプルどちらかのレクチファイアモデルを使いましょう。実機ではないのでモデリングであればどちらでもそれなりの音がします。トリプルが収録されているのはAmplitubeとBIASです。他はすべてデュアルのモデリングですが実際のアンプではないので気にしなくて大丈夫です。

クリーントーン・コーラストーンは好みですが、フェイザー、コーラス、フランジャーなどの空間系エフェクトは結構がっつり強めにかけて大丈夫です。スイッチャ―があればそれでうまく音をつなぐこともできます。私の場合はコーラスサウンドはAmplitubeのトリプルレクチのCh1をもとに強い空間系をかけています。

ディスト―ションサウンドはCh3のモダンを使いましょう。ベースは11時程度、ミッドは低め、プレゼンスもほどほど、とれブルも2時程度でいいです。ドンシャリサウンドをうまく作るのが大事です、私はメインのモデリングはOverloudのTH-Uを使っています。繊細なサウンドが出るのでお勧めです。IRは使っていません。収録されているキャブIRを使っています。

さて、特筆したいのはやはりオクターバーサウンドです。Kornのへヴィなギターフレーズを引くときは必ず使用されているのが1oct下の重ねです。基本的にはワーミーについている上下1octのサウンドでもいいのですが、どうせならTH-Uについているハーモナイザーを使ってみて、微調整してみましょう。というのも、近年のKornは絶妙な原音とオクターブトーンのコード感が出ているのでまるで1音出すと2音で聞こえるようなギターづくりが大事です。ハーモナイザーは下1octの設定でミックスを-7db程度に設定するとうまくいくと思います。

・ベース

ベースは私の作る場合ではあまり目立ちませんがAmplitubeのAmpegモデルとかなりシンプルで、ディスト―ションなどはかけていませんがウルトラロースイッチは入れています。フィールディからの音作りのコツとしてミッドは完全に切るという考え方なので、ドンシャリを通り越してミッドはがっつり切ります。低音の輪郭は出てるのでアクティブPUの方がいいです。ベースモデリングならKontaktのシュレデッジAbyssや、Submission AudioのGrove Bassなどがお勧めです。(Low-Aが出る指弾きベース音源は少ないので)。

スラップが活用される楽曲ではバスドラムのゴーストを埋めるかたちでグルーヴを作りましょう。

・ドラム

打ち込みではおそらくSuperior Drummer3が一番今は使いやすいです。BFDは向かないです。拡張のOblivionとか使っても微妙です。かといってAddictiveは音が最初から完成され過ぎていて逆に使いづらいです。私がSD3で使ってるのは拡張パックのMetal Machinery SDXとDrums of Destruction EZXですね。キックにはサブで909のサブキック、Pearlのリファレンスキットのキック(24インチ)をレイヤーで使っています。キックの音域は原曲が大体64hzあたりに重心を置いているので60hz台に寄せてます。Kornはキックの音が特徴的なので、AccousonusのRegrooverやRipXなどでドラムトラックを抽出したりしてキックを切り取って使おうかなとも思ったのですが、キック単体の場面がなくどう分離して切り落としても金物音が入ってしまって使い物にならなかったです。本当は原音からサンプリングしたほうがキックは好みなんですけどね。

・ミックス/マスタリング

マスター段にはマキシマイザやEQでGullfoss、Focusriteのコンプ、コンプでAcusticaのSSLモデル(SAND)などを使っています。ドラムは30hz以下を削り、ベースは80、ギターは120以下を削ってそれぞれの帯域を稼いでいます。最近の機材AI化に乗っかってNeutronなども使おうと思ったのですが、NeutronのミキシングAIは少し平坦すぎるのでKornのようなジャンルには適さないかと思います。マスタリングにはWavesのコンプやEQでハイとローのいらないところをがっつり切ったり、いろいろしてますが最終でOzone9のリファレンスを使います。こういうのはリファレンスでAIに任せるほうが似ます。時代に感謝ですね。

・シンセサイザー

使う曲の場合ですが私はAvenger一択です。Serum、Spire、Duneなどもありますが、操作性ではAvengerが抜けています。またはサンプルパックから音を拾ってくる場合もあります。

まとめ。

そんなこんなである程度寄せることができますが、もちろん実物には勝てないですから、身もふたもないことを言えば機材で似せるのが一番です。私の場合はエフェクトは揃えられない代わりにギターをHeadモデルにしてから飛躍的にKornのサウンドに近くなりました。ベースはK5ですが普段ベースメインではないので良くわからないです(笑)

昨今はDjentが流行りなので、5150とかが流行りであまりMesaのサウンドに注目されない傾向があるのと、MesaではMarkシリーズの決定版がNeural DSP/Petrucciで確定したので、そろそろレクチの決定版も欲しいですよね。

そんなこんなで大好きなKornの話でしたとさ。

別にどうでもいいんですが、自分で作るのがめんどくさかったら私がギターとSd3のプリセットは千円で販売してるので買ってもいいかもです(勧誘)




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