ここでメン・イン・ブラック3を考えよう。

題目通りです。そう、今SFやらなんやら映画界隈をやたらざわつかせる言葉がありますよね。そうです『マルチバース』。急に出てきた単語で、何も知らない人は全く関係ない仮想空間メタバースと勘違いしてるそうな。

・量子力学の解釈の1つ。

多元宇宙論というのがこの『マルチバース』のきっかけで、量子力学の発展により正式に生み出されました。ボーアのコペンハーゲン解釈(ググってみてください)の1つで、ドラえもん風に言えばパラレルワールドです。量子の泡の世界とは、すべてが隣り合わせ、例えば私が『ケチャップ』を選んだ未来と『マスタード』を選んだ未来でホットドッグの味は変わりますよね。あるいは、畳の仕切りをまたぐかまたがないか、明日彼女を連れてバイクに乗るか車に乗るか。パンにバターかジャムか。そんな馬鹿みたいに些細なレベルの物事がまるでバタフライ効果の如く未来や現実に作用し、幾億通りもの未来を無限ともいえるレベルで増殖していく、というのがマルチバースの根源的な考えです。今期でも『ドクターストレンジ』が元々そういう能力を持っていますし、マーベル作品では特にアベンジャーズの締めである『エンドゲーム』がとてもそういう意味合いを持っていたと思います。今回特にマルチバースを題材に、『マトリックス・リザレクション』などもマルチバースとされていますね。

この手のSF設定はSFを題材にしたファンタジーのSF映画なんかでは応用しやすいので結構いろんなところで目にすることがあると思います。そんなマルチバース急流期の中、実は少しだけ先を行っていたのが2012年公開の『メン・イン・ブラック3』と登場人物グリフィンの存在です。

・見た前提でお話しすると。

アマプラとかで無料で観れる期間のはずなので見てみるといいのですがグリフィンというのは登場する宇宙人の一人でMIB3では重要な役割を担います。特に、未来のあらゆる可能性を可視できること、触れた相手にその未来を共有できることができます。彼は早口であらゆる未来の話をするのですが、それは『決定されるまで』定まっていないんですよね。これが量子力学に近くて、量子力学で一番有名なシュレディンガーの猫みたいなもので、つまり観測結果次第で現実が変わるということです。そこに死んだ猫が『いる/いない』の50の確率は、箱を開けてみないと分からない。グリフィンは些細なことで未来は変わってしまうことを何度も注意します。劇中最後でもありましたが、Kが仮に行きつけの店にチップを置いたなら『隕石が落下しない』。でもチップを置かなかったら『隕石が落ちる』というエンディングシーンがあります。幸いKはチップを置いたので大丈夫だったのですが、未来の流動性をここで示したわけですね。

・MIB3は時間の物語。

時間の映画といえばインターステラー、TENETなどノーラン映画が浮かびますが、もう少しMIBはポップです。(ノーラン映画は学者協力の元製作するので、論文が書けるほど正確なので..)。つまるところ、タイムパラドクスがまず起きてKが過去に殺された未来になるため、Kが急にいなくなるところから始まり、未来を変えるべくJは過去に飛ぶんですよね。で、敵との戦いもタイムウォッチみたいなあの道具で一度負けたら今度はやり直してパターンを覚えて戦う、など時間の要素が沢山あります。大筋は宇宙でも凶暴な悪役から地球を守るための防御システムをKが張り巡らせるというのが順当な歴史の流れなので、それを遂行させること、Jが表立って介入しすぎないことなどが前提となりますが、コメディ映画でもあるのでそこはちょっと緩い感じ。

・でも一回は見てほしい。

今回の記事はトップガンでの凄まじい映像体験から熱量を以って1万字書いた疲れもあって、短めですが、マルチバース全盛期になりつつある今、ちょっと考えてみると面白い科学と物理学に繋がるお話とそのSFとの親和性についてでした。私は宇宙が好きで、いつかケネディ宇宙センターに行くか、トップガンの如く戦闘機乗りになりたかったのですが、身体は普通だし、数学の教師とは仲悪いしで、結局文理選択以前に音楽学校に行きたかったのを親の反対もあり、そこから高3なんてやる気なしなので鉛筆を転がしてセンター試験が高得点になったもんだから無勉強で適当な名がついた4年制大学に行き、まあ後悔もしたんですけど、そんな私を救ってくれたのが3年生での言語学専攻となっての教授との出会いでした。お互い正直変わり者。それに言語学とは意外と理系な分野で物理学の要素というのも案外含んだりします。なので物理を独学するには十分な理由でした。ですが、学識を以って映画を観ると映画の面白さがもっともっと倍増します。学生時代も今は遠く、院生になるにはお金がなかったので就職して早10年くらいたちますがいつになっても学ぶ姿勢は忘れたくないですね。

未来は可能性であふれている、これは本当の事ですよ。




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