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梅雨を知らない街で初めて過ごす6月

北海道に身を移して6月13日で一か月が経った。
気がついたらもう7月に入っているし、この調子だとあっという間に二か月に経つんだろう。
ということで、6月の振り返り。

梅雨を知らない6月を過ごす日々

5月の中旬から6月といえば、そう、忌まわしい梅雨時期だ。
いつもなら湿度70%は当たり前だし、じめじめした中で息をするのも当たり前。どんなときでも傘は必需品だし、どんなに頑張っても髪はうねる。

それが今までの生活での当たり前だった。長く過ごした鹿児島はもちろん、大学時代の高知でも。

今年、私は人生で初めて梅雨を知らない梅雨時期を過ごした。

この時期、北海道は蝦夷梅雨というらしい。梅雨がない代わりに、梅雨前線による低気圧で湿度はやや高めだったり、曇りや雨が数日続くものの湿度もそこまで高くはなく、過ごしやすいという。

この期間に私が傘を差したのは数回だけ。
湿度が高くなるといっても、気を抜いて口を開けて寝ようものなら声がガラつくくらいだ。

おめかししても髪の毛が台無し、ということは一度もなかった。
低気圧による頭痛にベッドから起き上がれなくなることもない。

快適。快適だった。
でも、ちょっと寂しかった。

頭痛もない、うねる髪もない、靴下までびちょびちょにする雨もない。
嬉しいはずなのに、それが少し6月を過ごすには物足りなく感じたのだ。

なぜ。

傘を差しているはずなのに全身ずぶ濡れになった自分を友達と嘆き合う。
突然の通り雨に、恋人と一つの傘に身を寄せ合う。
すぐにうねりだす髪の毛をどうにか試行錯誤して、可愛くアレンジしようと奮闘する。
低気圧にあてられて不自由になる自分のために作ってくれた食べやすい料理。

いつもなら何気ない、何の変哲もない日常かもしれない。
けど、梅雨がそれを梅雨の思い出として特別にしてくれている。
だから、もう来てくれるなと思っていた梅雨が恋しく感じてしまう。思い出を欲してしまう。

大嫌いで、忘れたくない季節。

私の中で春夏秋冬と同じくらい、梅雨は大切な季節だった。

一度手を離してみて気づくことって、こんなに身近にあるもんだ。
ただ、また梅雨を過ごしたら、なくなってしまえ!と叫ぶのだろうけど。
ないものねだり、だと分かっているけど、それを否定することもなく、人間らしい感覚だと思うことにする。

ヒトとコトに出会いまくる月

移住してすぐは、人間関係や仕事への不安に押し潰されそうになり、焦燥感と無気力感を繰り返していたが、6月は自身に隠れているフットワークの軽さを思いっきり発揮した月だった。

札幌に住んでいるという友達の友達に会ってみたり、繋がりたい人に会うために、大学生向けイベントに参加してみたり、住んでまだ日が浅いくせに美唄を考えるワークショップに参加してみたり、引っ越す前から行きたかった喫茶店で過ごしたり。

ずっと行きたかった日用品と喫茶Tape。
せいろ蒸しのお団子に和のスパイスを使ったアイスチャイ。

おかげで仕事は増えたし、遊ぶ予定も増えた。
少しずつ住んでいる土地でも関係が構築されてくる感覚を身をもって感じて、ようやく深呼吸できているような気がする。

深呼吸し始めて、自分がここにいる楽しさや意義を見出したかったことに気がついた。
住めば都、そう思う。でも、住めば都なのは、ただその地に留まる、住むことだけでは私には不十分で、この土地に住む人と小さなご縁を紡ぐことで都になっていくのを実感する。

移住インタビューで何が魅力かと聞かれて、「人」と答える移住者たちの気持ちが少し分かった。

独りでは自分を形作ることができない。他者がいて自分の輪郭を捉えることができる。
だから、私は移住してすぐ、人との関係を紡げず、自分自身の輪郭がどろどろと溶けだしていくようで怖かったのだ。
不安や焦燥感に駆られた理由に辿り着けて、もう一度深呼吸。

自分にとって他者との関係構築が大切なら、出会ったご縁をどう紡ぐか。私自身が何をギブできるのかをちゃんと言語化していきたい。
言語化したその先で、どう動いていくか。
人が分かるかたちで動いてなんぼ。

行動すること、発信する大切さを忘れずに、だ。

今夏は「書く」と「出会う」にまみれたい

やっと深呼吸ができるようになってきて、目の前のことだけでなく、自分が本当は何がしたいかにもう一度立ち直れるようになってきた。
振り返っても、やっぱり私は「書きたい」が最初に浮かび上がった。
私にとって書くことは物事と向き合うことと同義。人と向き合う、自分と向き合う、日々の事柄と向き合う。そうして言語化して自分の中に落とし込む。

案外、頭の中にある内容って言語化できてなくてぐちゃぐちゃしてるし、分かっているようで分かっていないことが多い。
そういう漠然としていて分からないことを一つ一つクリアにしていく作業をとことん突き詰める。

滞り気味の依頼を納品したい。
自分と三つ子の関係性をもう一度綴りなおしたい。
書籍を完成させたい。
手書き文字の作品の試作をしたい。
考えているサービスを本始動させたい。

やりたいことはいっぱいだ。
でも、家にこもりすぎることなく、人との対話を大切に過ごすことも忘れたくない。
書くことだけじゃない、その土地の人と関わることが私にとって心地よく満足できることを知ったから。
7月こそ、自分が納得する月になりますように。

【おまけ】観光地を巡らない旭川旅行

6月上旬、体を動かしたいパートナーと共に旭川に一泊二日の旅行に出掛けた。

金曜の仕事終わりに電車に乗り込み、ホテルに泊まって、翌日一日中目的地に入り浸る。
その目的地というのは、ROUND1のスポッチャだった。
理由は体を思う存分動かして遊びたいから。

初の旭川。レンタカーを借りて観光地も巡りたかった。が、スポッチャを楽しむために必然的に前入りして旅行っぽくなっただけで、元から観光地を巡ることを目的としていなかった。

せっかくの旭川なのに、と行くまではむくれていた。
そう、行くまでは。

電車で1時間ほど揺られて着いた旭川駅。
車内に飲み物を忘れた私たちは潤いを求めてスタバに駆け込んだ。

久しぶりのスタバにややはしゃぎながら、まだ夜は冷えるので、キャラメルフラペチーノのホットを頼む私とは裏腹に、彼は抹茶フラペチーノのベンティサイズを頼んだ。
本当にそれで潤うのかという言葉をぐっと堪え、「いつもそれだよね」とご満悦の彼に言うと「だって好きなんだもん」と返ってきた。ごもっともすぎた。

電車に乗り込むまではやや雨が降っていたが、旭川駅を出ると外を歩く人は傘を差しておらず、安堵した――のもつかの間、ちゃんと雨が降っていて、少し脳みそがバグった。

泊まるのは、駅近くのビジネスホテル。
食後にホテル館内にあるバーに行くことだけ決めて、夕食は行き当たりばったり。

しかし、これが最高だった。

なんとなく、魚が食べたい気分だった私が選んだのはホテルからも近かった華酔家かすいや。ここが最高だった。

なにを食べても美味しい。
最初に頼んだたこわさは、今まで食べた中で一番美味しかった。
タコが分厚くて歯ごたえと絶妙な柔らかさで満足感がある。わさびも大きめで食感を楽しめるし、上品な辛さにお酒が進んだ。
頼んだものの一皿分もないのでサービスですと言葉に甘えたホタテの刺身も一枚がどでかい。

思い出深いのがホッケ。
鹿児島に住んでいた頃、実家でホッケ2尾を家族5人でよく分け合っていた。ホッケ大好きだった私は密かに、ホッケを一人でたらふく食べたいというささやかな夢を抱いていた。
目の前に出てきたホッケは、「大きい……」とつい口を覆うほど私の知っているホッケの何倍もでかかった。
気持ちよく背骨を取ると、店員さんが唐揚げにしてくれた。
ホッケを満喫できたこの日、そう、ささやかな私の夢がこの晩叶った。

美味しいご飯とお酒、店員さんのほどよい掛け合いで、気分は最高。

ほろ酔い気分で店を出て、次に向かったのは宿泊先にあるBAR BROWN。宿泊当日にホテル選びをする中で、決め手となった場所だ。
齢24。これまでは怖気づいて足を踏み出せなかったホテルのバーで、大人の階段を登ろうじゃないかという寸法である。

先に行ってと先頭を譲り合いながら入ったバー。

バーテンダーさんはみんな気さくで、ずっと喋っていたしずっと笑っていた記憶しかない。
しかも、カクテルが本当に美味しかった。

「甘いカクテルを作ってほしくて、ケーキのようなデザート系の」

なんとも漠然とした注文をするも、出てきたカクテルは本当にケーキを飲んでいる気分だった。一口飲むたびににやにやしてしまった。

頼んだ甘いカクテル

そのあとも、バーテンダーさんオリジナルカクテルをお願いし、紫蘇リキュールを使ったカクテルや爽やかな柑橘ベースのカクテルも楽しんだ。
紫蘇リキュールを使ったカクテルが本当に美味しくて、今でも、「あれ、美味しかったよなあ」と余韻に浸るほどである。

余韻浸りまくりの紫蘇カクテル

楽しみすぎて気づいたら1時を過ぎていた。
温泉のある宿泊先だったので、入らずには帰れない!とそこから温泉に駆け込む。
時間も時間だったので、ほぼ貸し切り状態。会ったのはセキュリティ上、暗証番号で扉が開く仕組みになっていることを知らずに扉の前で困っているところを助けたマダムだけ。

2人きりもあり、体を温めながら世間話をする。

マダムは東京住みで、旭川の友人と観光を楽しんでいた。
「あなたはどこに行くの?」と訊かれて「ROUND1のスポッチャです」と答えた後の何とも言えない空気は忘れられない。あの、え?観光地回らないの?と言わんばかりの目も。

でも、誰が何と言おうと、観光地を一切回らない旅行だとしても、この旅行は本当に楽しくて気づきのあった旅行だと堂々と言える。

「料理は旅を制する」とどこかの誰かが言っていた気がするけど、あれは本当だった。身をもって感じた。

今までは、観光地重視かホテル重視で、観光プランは組み立てても、グルメはそこまで楽しまず、どこに行っても、お財布に優しいチェーンで済ませることが多かった。
それももちろんよかったけど、ホテルや観光地に執着せずとも、食事を楽しめるだけで充実感を得られるのは大きな気づきだった。

観光地を回るのももちろん楽しいが、美味しい料理がここまで偉大な充実感をくれると思うと、今後の旅行の楽しむ幅が増えることを確信した。

月一でプチ旅行をしたい。新しい楽しみができた。

翌日のブランチはMORIHICO.RENGA1909。蕗味噌と優しいベーコンの挟んでないタイプのホットサンドが飲み過ぎた胃に優しかった。

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