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短編小説集

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屈橋毬花の短編小説を掲載していきます。 あらゆるジャンルの話を掲載していきますので、是非、アナタのお気に入りを見つけてください。
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記事一覧

四月馬鹿の切望【短編小説】

四月一日はエイプリルフール。嘘を吐いても良い日とされる習慣で、日本語の直訳は“四月馬鹿”…

【短編小説】砂糖菓子のような君へ

「私を恨んでいいから」 涙を流す彼女の耳元に最後の言葉を置いて、彼女をバスに乗せた。 拝…

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酔わずとも抱きしめて【短編】

失敗した。 やらかした。 ホテルで独り、枕を濡らす。 一人暮らしをする彼の部屋で、ひとつ…

強くて弱い僕らに捧ぐ【#2000字のドラマ】

 最後のチャイムが鳴ってからどのくらい経っただろうか。  教室には三人の男女だけがぽつね…

【短編】ミルクは先か後か入れないか。

 日の光が遠慮がちに差し込む窓。  仄かな光が陰影を鮮明に浮かび上がらせ、テーブルの上の…

【短編】苦いままでいい。-前編-【『ミルクは先か後か入れないか。』CP話】

 鼻腔をくすぐる香ばしい香り。キリっとした大人っぽい黒に程近い茶色。小さめのカップでもし…

【短編】苦いままでいい。-後編-【『ミルクは先か後か入れないか。』CP話】

 早めに終わった大学での時間。いつもより長く居られると踊り出しそうな足で向かった喫茶店。いつものカウンター席。そして、私の背後にある一人用のテーブル席に彼がいた。 「………」  本を持つ手が震えないように指先まで集中させる。平然と大好きな本を読んでいるように見えるよう努める。同じ文章を何回読んでも、頭になんて入ってこない。  ――何故、ここにいる。  彼は、いつもブラック珈琲を飲んでいる。紅茶を飲んでいる姿は大学では、見たことがない。まさか、実は、紅茶も嗜(たしな)め

【短編】甘いのがお好きで?-前編-【『ミルクは先か後か入れないか。』『苦いままでい…

 業界が仕向けたイベントだと分かっていても、やりたくなる、やらなければならないと思わせる…

【短編】甘いのがお好きで?-後編-【『ミルクは先か後か入れないか。』『苦いままでい…

「もったいない!」 「ま、マスター?」  鼻から思いっ切り息を吸い込み、「あいつは、あん…

【短編】雨の日晴れ顔

 小さな水滴が一粒、私の頬に触れる。  そして、一粒、また一粒と、私も私もと雫らが頬を撫…

【空展】隣の芝生も青い ▽屈ノ丞

 言葉にならない感情を何にぶつけても許される年頃は、当の昔に過ぎた。だからといって、行き…

3FacE
3年前
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【CAKE展】僕は今夜、彼女のティラミスを【屈ノ丞】

 暗めの紅い壁紙。しっとりとしたジャズ。渋めの木材の天板と黒のアイアン脚でできたテーブル…

3FacE
4年前
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【煙展】燻る死神▽屈ノ丞

 ――苦しい。  ――息ができない。  自分が望んだはずなのに、怖くて怖くて仕方がない。 …

3FacE
4年前
7

【短編】キャンドルでまた会おう。

 僕にはお盆休みの日だけ、彼女が来る。  遠距離の彼女はお盆休みになると必ず僕の家を訪ねて、インターホンを鳴らすのだ。  僕はそれを毎年の楽しみとしていて、窓際に昨晩作ったばかりの馬を飾って、じりじりと窓から差し込む日差しに汗を首筋に伝わせながら、安いアイスキャンディーを咥えて、蝉の声に交ざって聞こえてくるその音を待つのだ。  三本目のアイスキャンディーを咥えたところで、待っていた音が耳に入る。  踊り出しそうな足を抑えて、平然を装い、僕は当たり前のようにドアを開ける。開