世界経済の革命児 デリック・ロッシ(モデルナ共同創業者)|大西康之
ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、デリック・ロッシ(Derrick Rossi、モデルナ共同創業者)です。
デリック・ロッシ
人類を救うワクチン開発の「ゲームチェンジャー」
この会社の名前が新聞やテレビで取り上げられない日はない。米バイオテクノロジー企業のモデルナ。米ファイザー、英アストラゼネカといったメガ・ファーマ(巨大製薬企業)と並び、欧米で新型コロナ・ワクチンの緊急承認を受けた。ワクチンの有効性と安全性が確認されれば、2010年にこの会社を立ち上げたデリック・ロッシは人類を救った起業家の一人になる。
医薬品の臨床試験には3段階あるが、世界保健機関(WHO)によると、新型コロナ・ワクチンの候補は2021年1月26日時点で63種類。そのうち、最終の第3段階に至っているのは16種類。中国とロシアではそれぞれ国産ワクチンの接種が始まっているが、それ以外で接種が始まったのはファイザー、アストラゼネカ、モデルナの3社だけ。国家の威信をかけたワクチン開発レースの先頭グループにベンチャー企業のモデルナが入っているのは快挙と言える。
モデルナのワクチン開発技術は画期的だ。通常ワクチン開発には何年もかかり、10年以上要することもザラにある。ところがモデルナは新型コロナの感染拡大が世界的に問題となり始めた2020年春にワクチン開発を開始すると、わずか42日で設計を完了。すぐに臨床試験入りし、11月末には緊急使用許可を米当局に申請。12月に承認を得てしまった。つまり、開発から製造・販売まで1年もかかっていない。ロッシがこの分野で「ゲームチェンジャー」と呼ばれる所以である。
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