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詩|新川和江

田舎の月

わたしの郷里ではわけても十五夜、
よそでは見られぬ大きな大きな月がのぼる。
子供たちは藁鉄砲を持ち
――大麦小麦、三角畠の蕎麦(そば)あたれ
と唱えながら 農家の庭先の土を打って回る。
穀物や蔬菜(そさい)を育ててくれた土へのお礼と
子供ながらに来年の収穫への願いをこめて……。
すると天からも声がして、
「よしよし わしも見守ってあげるよ」と、
こうこうと光を増した月が村の真上に降りてくるのです。

(2020年9月号)

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