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中小企業を勝利に導くアトツギベンチャーの伝道師・山野千枝|藤吉雅春

世界40カ国で発行されるビジネス誌フォーブスの日本版「Forbes JAPAN」の編集長藤吉雅春氏は3年前、「アトツギベンチャーの伝道師」と呼ばれる山野千枝さん(51)と出会った。彼女が語ったのは後継者不足に悩む中小企業の「勝ち方」。その後、瞬く間に彼女は全国区になった。/文・藤吉雅春(Forbes JAPAN編集長)

同族企業の世代交代を支援

山野千枝に会うと、キャスター付きの旅行カバンをもつ姿が定番になった。「弾丸ツアーです」と笑う彼女は、もうすぐ47都道府県を制覇する。自治体の支援要請や講演・イベントの依頼が相次いでいるのだ。

2018年に一般社団法人「ベンチャー型事業承継」を設立した山野が扱うのは「事業承継」。同族企業が経営者を世代交代する際、新規事業の開発を支援する。後継者不足を背景に企業合併を促すビジネスが盛んななか、なぜ山野に相談が殺到するのか。

山野は大学卒業後、中小企業での財務などの職を経て、00年、大阪市経済戦略局の大阪産業創造館に入る。そこで中小企業支援をスタートさせるのだが、その背景には彼女が抱き続ける違和感があった。

「ITバブルの時に創業者支援の仕事をしていたのですが、若者がプレゼンテーションを行い、莫大な資金を調達する姿を見てきました。ビジネスモデルのアイデアは秀逸でも、本当に事業を継続する意志があるかわからない人にお金が流れる。『どこかのタイミングでバイアウトします』と公言したり、事業が軌道に乗ると、東京に移転する。社員やその家族、地域に愛情がないのです。私は20代の時、小さな会社で財務を経験し、会社を守るために個人保証で多額の借金をする社長の姿を見てきただけに、疑問に思えました」

山野千枝

山野代表理事(一般社団法人ベンチャー型事業承継)

中小企業の経営者のもとを歩き続けて10年ほど経ち、10年代に入ると、長寿企業に詳しい山野は、ASEAN諸国の経営者たちの視察ツアーで案内を任されたことがあった。

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