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読書の魔法

日常の色々に心が疲れて、ため息ばかりついていたのに、ある人の文章を読むと不思議とフラットな自分に戻れて、スッキリするようなことはないだろうか。
私にとって、その作家は江國香織のような気がする。

このところとにかく時間も脳も容量オーバー気味。家族のこと、ほとんどが子供の習い事やらなんやらの悩みなのだが、心が疲れてしまっていた。子育てって、なんて思い通りに行かないんだろう。いや、私はなんで、子供を自分の思い通りにしようとしてるんだろう。完璧とは程遠い自分なのに、子供には完璧を求めたりして。笑っちゃう。でも、自分が子供の時に、こうしたかった、こうしてもらえたら、こんな才能が伸びたのかも、なんて考えるものなのだ。これからしなくてはならないことを、できたら楽に乗り越えて行ってほしい、そんなことをつい考えてしまう。
だから、口うるさく言って、先回りして、ダメな親になってしまう。分かっているのに、辞められない。家事も仕事も頑張って、フル稼働。でも結局、誰かが体調を崩して、全てがガタガタになり、もう、疲れちゃった。なんか私が1人で頑張って、誰も頑張ろうとしてないし。もう辞めよ。そう思うと急に気楽になる。でも、なんだかモヤモヤ。結局、また頑張る私。

そんな中で迎えた土曜日の朝。バタバタで、昨夜も読めなかった枕元の本達。ふと、一番上にあった、江國香織さんの“雨はコーラがのめない”を手に取り、読んでみると、スーッと心が軽くなった。厳密に言うと、別の世界に連れて行ってもらえたのだ。愛犬雨と大好きな音楽との静かで温かい日々を描いたエッセイ。本の中に出てくるたくさんの音楽達への愛とその描写の美しさと面白さ、愛犬雨への愛情。何度も読んだエッセイだけど、音楽の表現が素晴らしくて、どんな曲だろう!と思って、改めて知らない曲やアーティストをスマホで調べて聞いたりしていたら、ふと、あー、私はこんな感じだ。私の好きな世界はここなんだ。と思えた。それは現実逃避ではなく、自分の居場所と思考の彷徨う場所を確認できたのだ。ここで考えを巡らせたり、アイデアを思いつくのは自分らしいけど、別のことはほどほどにしておこう。自分らしくいられる場所を頭の中に決めておこう。表現するのは難しいけど、そんな感じで、つまりは、自分らしくなれないことで悩んだりきりきり舞いするのは辞めようと思えた。いつも自分らしくいることが現実の生活にもきっといい影響を与えるはずなのだ。
その日の、少なくとも午前中は、騒がしい日常の中にありながらも、どこか江國香織さんの、清潔感のある美しい世界にいるような気持ちで過ごせたのが、とても新鮮だった。

 本を読む理由は人それぞれだろうし、読んだ結果感じることも人それぞれだと思うけど、誰もが、読む前と、読んだ後の自分が少しだけ変わっているはず。それが楽しくて、面白くて人は本を読むのだろう。
毎日バタバタの日々だけど、疲れている時ほど、本を読もう。スマホも楽しいけど、画像、映像や音声では感じ得ない、自分の心と自分らしさを感じながら、たくさん本を読もう。改めてそう誓った。

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