なぜ僕がインターネット業界にいるかを考えてみる

note の投稿企画 #はじめてのインターネット に乗っかってみる。

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今から約20年前。大学の卒論を書くためにパソコンを初めて買った。それまでドキュメントはワープロで作っていたが、卒論に数式を使いたくそれはワープロでは書けない書式だったのでパソコンを買った(卒論は確かマクロ経済学のソローモデルの応用かなんかだったと思う)

買ったパソコンはSOTECのデスクトップ。しかもモデム接続。例の音を響かせながら僕のインターネット生活は始まった・・と思いきや、その頃インターネットについてあまり知らなかったしどんなサイトを見てよいか分からない。よってパソコンは卒論をワードで書きメールをたまにするくらいの機械に成り下がった。

それから2-3年後。卒論を無事提出し(その後ちょっとしたことがあって半年ほど留年したけど)大学を卒業した僕はバンドをやっていた。新卒で就職せず「音楽で飯食っていく」ことを選択したから。その頃(2000年代はじめのころ)のバンドはもれなく「ホームページ」を持っていて「BBS」を持っていた。

僕のバンドも、プログラムを書ける友人にホームページを作ってもらい、そのHTMLファイルで閲覧するページにはPerlで書かれたBBSへのリンクが貼られていた。「バンドのBBS」ってやつだ。

そのBBSではライブの告知やお客さんとのやりとりをしていた。といってもお客さんはほぼ友人ばかり。告知をしても特に反応があるわけではない。ネット上での集客なんて概念も手段もしらない当時は、いわゆる内輪の運用しかしていなかった。

そこにある日、書き込みがあった。

「自分は名古屋でバンドをやっているもので、お前たちの曲をホームページで聞いたんだけど気に入ったので、今度名古屋でうちらが主催するイベントに出ないか」

驚いた。今までほとんど知っている人しか来なかったBBSに、知らない会ったこともない人が書き込み、しかも自分たちの曲を気に入ったと言っている。確かに音源はアップしてたけど、見ず知らずの人が聞いてくれるなんて。しかもイベントに出演しませんか、だと・・・?

今考えると「何のためにサイト運営してたんだ?」と思ってしまうが、当時はホームページなんて初めてのことだったし、他バンドの見様見真似だったし、本当に反応があるなんて(望んではいたけど)実際に起きるとてんやわんやになった。

そして、非常にありきたりなのだが「インターネットって知らない人とつながることができる」「自分たちがやっていることを伝えることができる」「自分たちの活動の幅を広げることができる」つまり「自分たちを変えることができる」と感じた。

もちろんイベントには出演させていただき、それが僕たちのバンドにとっての初めての遠征となった(当時は関西に住んでいて活動圏は神戸大阪京都だったので)。その誘ってくれたバンドや名古屋のバンドマンたちと仲良くなり、その後も何回かイベントに出させてもらった。

その後、自分たちがバンド活動を続けていくうちに、たまたまライブハウスで自分たちのパフォーマンスを観てくれた人がフライヤーに書かれたURLをたどってBBSに書き込んでくれたりもするようになった。望んでいたことがリアルになって自分たちの前に現れたのだ。

結局「音楽で飯食っていく」という野望はその後断念するのだが、その時のネクストステップとして僕がインターネット業界を選んだのは、この経験を考えるとごくごく自然なことだった。

当時運営していたサイトやBBSがどんなものだったかはよく覚えていない。もしどこかにデータが残っていたら見てみたい気はするけど、たぶん今となっては恥ずかしくてそっ閉じしてしまうかもしれない。だけど、そこで体験したあの時の感じは今も自分の中に残っている。

あれから時が経ち、デザイナーとしてWebデザインしたりコード書いたりディレクションしたりUXデザインとか、今となってはずいぶん遠くまで来たものだ。

だけど、今僕がここにいる理由は、きっとあのBBSの中に今もある。

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