夏生さえりさんの文章はなぜ面白いのか
こんばんは!まーひーです。
今日は、2021年1月6日に夏生さえりさんが投稿したnote「たとえば男が妊娠できるとして(妊娠9週/つわり)」(本文は下記参照)について、感じたことを綴りたいと思います。
1.はじめに
「たとえば男が妊娠できるとして(妊娠9週/つわり)」(以降本作)は当時妊娠9週の夏生さんが感じていたこと、その時の思いを物語調で記述した日記である。私は妊娠したことはないので実際にはわからないが、その葛藤は多くのお母さんたちが共感できるものであろうと推察され、妊娠の大変さがうかがえる。妊娠したことがない私でも惹き込まれ、いいね数も2021年9月時点で1300を超えており、多くの人の心に響いたものであることがわかる。
なぜこんなにも惹き込まれるのか。
本作で扱われているテーマ「妊娠」や「夫と妻の葛藤、関係性」といったことも非常に重要であるが、ここではそのこと自体にはあまり議論せず、なぜ夏生さえりさんのこの文章がこんなに心に響くのか、について考えたいと思う。
2.理由①ーわかりやすい文章・構成ー
まず、これだろう。文章がうまい。作家さんなので当たり前なのだけれど読みやすい構成と表現で、すいすい読める。
私なんかは、昔から「読む」ことが得意ではなかったため、国語の問題文なんかも何回も読み返してたし、ビジネス本を読んでいたら眠くなったりしていた。そんな私が「すいすい」読めるってことはほんとに頭に入ってきやすい表現で構成されているのだと思う。
取扱説明書とか、科学論文とか、美術館にある作品の解説文なんかも夏生さんが書いてくれたらいいのに。(美術作品の解説文ってなんであんなにわかりにくいんだろうね。)
すっと入ってきやすい理由として、物語調であることだろう。しかも実体験であり本人の感情がこもっている。取り扱っている事象も私たちの身の回りのことであり、身近に感じられる。
一歩間違えれば愚痴になってしまいがちなテーマであるが、随所に自虐も含めたユーモアがちりばめられており、全然嫌な気持ちにならない、させてない。ユーモアが多すぎると伝えたいことが薄まり、それはそれで締まりがなくなってしまうが、このあたりのバランスがほんとうまいんだよなぁ。
わかりやすい文章・表現・構成、そして感情をこめること、さらには絶妙なユーモアのバランス、ほんと学ぶことが多いし尊敬しています。
3.理由②ー思考の余地があるテーマー
本作に登場する人物は誰も悪くない。夏生さん自身がつらいことも仕方ないし、旦那さんが精一杯努力をしていることも伝わってくる。お父さんも、少し空気が読めない部分があるかもしれないが、悪い人ではない。
だからこそ、悩むのだ。夏生さん自身もつらい理由の一つにこれをあげているしそうだと思う。
そして、読者は思考させられる。
誰が悪いのか、どう解決すればいいのか、何が最善なのか、、、
勧善懲悪な物語や、一方的な愚痴など、絶対的な悪役が存在する物語ではそいつを憎めばいいので、単純である。これはこれで、そいつを倒す方法を考えるなど面白くなる要素はあるものの、何が悪かわからない物語よりもシンプルであろう。比較して本作は複雑であり、賛否両論、多種多様な考えを生むのである。
思考は、本作で扱っている「妊娠」や「育児の上での夫婦関係」だけにとどまらない。このテーマを通して、読者は自身の価値観について考えさせられるのである。なぜ私はこう思うのか、なぜ私はこの登場人物の意見に賛同できないのか、あるいは、共感してしまうのか、こういったことを考えていく中で、もっと根源的な、自身の価値観に立ち返っていくのである。この時に体験する自己発見的な何かを、面白いと感じるのではないだろうか。
4.理由③ーもやもやを言語化したことによるすっきり感ー
共感した人が多い、というのがこれだけ反響のあった最も大きな理由だろう。これをもう少し深掘りすると、僕たち私たちが感じたあのもやもや感を言語化してくれたこと、これによりすっきししたことが大きな理由ではないかと思う。
察するに、夏生さんが体験した出来事、それに伴う感情は、多くのお母さんが体験してきたことなのだろう。
しかしお母さんたちはそれをうまく言語化できなかった。
私も経験的に知っているが、言葉にできないというのはつらいし、いらいらするし、とってももどかしい。赤ちゃんなんて言葉にできないから泣くしかない。
もしかしたら世のお母さんたちも、周りに愚痴を言う中でその時の気持ちを言葉にしていたのかもしれない。しかし、ここまで整理され、あるいは文章化されてはいなかったのではなかろうか。
だからこそ、みんな、「わかるわかる!」ってなり、「そう!これが言いたかったの!」となり、あるいは、「なるほど。あの時つらかったのはこういうことだったのかもしれない。」となったのではないだろうか。
私は妊娠したことはないので、上記のような考えは見当違いかもしれない。しかし少なくとも、言語化によるもやもやすっきり現象、これ自体は存在するものだと思う。
このようなことからも、改めて言語化能力って鍛えた方が人生豊かになると感じたし、それだけでもnoteも続けていく価値はあるな、と感じる。ありがとう、夏生先生。
本日はここまで!明日もご安全に!
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