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古生物飼育連作短編小説Lv100 第六十八話をサイトに掲載しました

自粛期間で取材に行けなかったりまあ色々(主にあつ森)あったり出展イベントがなくなったりで3ヶ月も間が空いてしまいましたが、この期間のことにかなりインスパイアされた内容となっております。今回もよろしくお願いいたします。

サイト

カクヨム

以下はネタバレ込みの解説です。

第九集収録予定分自体、動物園や水族館でよく見かけるものの祖先や古い仲間に当たるものを重点的に出す予定なので、今回は「いわゆるウマの祖先」と「いわゆるネコの祖先」を選出したわけです。

森林で木の葉を食べる小型の動物だったウマ類が次第に草原で草を食べる大型の動物に進化していった……という「ウマの進化のストーリー」はたくさんの博物館の展示(冒頭の写真ですね。豊橋市自然史博物館です)や、学校の教科書にも載っている定番の「進化の一例」ですね。

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これは滝川市美術自然史館のパネルです。一見きれいにまとまっていますね。走る能力に着目して、脚の骨格が強く・軽く・長くなっていく図が添えられています。

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これは福井県立恐竜博物館の展示です。歯の標本を添えていますね。木の葉よりイネ科の草のほうが食べづらいので歯の形態を変化させないと主食にできないという点に着目しています。

しかし実はこれはウマ類の化石がそこまでたくさん見付かっていなかった時点で見付かっていた種類を時系列順につなげて描かれた道筋なんですね。

福井県立の写真をよく見ると背景の図が細かく枝分かれしているので分かるんですが、一直線に進化したのではなくて、たくさんのウマ類が現れたけれども結局ひとつの系統のウマしか生き残らず、ウマもシマウマもロバも全部その系統に含まれてしまうわけです。上の図だと生き残った系統がやたら幅広いですけれどね。

一本調子の流れを表現するかたくさんの種類の中から生き残っただけだとするかはともかく、いわゆるウマの進化自体は扱いたいなーって思っていたのです。

ウマと同じ奇蹄類に属するのにゴリラみたいな体型のカリコテリウム類を出したいとか、動物園ではなく競馬関係の施設にしようとか考えていたんですが、これらは結局ボツになりました。カリコテリウム類もさしてウマに近いわけではないですからね。

で、「いわゆる主流」みたいな流れから離れて森林にとどまったアンキテリウム類がヒラマキウマとして前回のアネクテンスゾウと同じ平牧累層から発見されているのですね。

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これがヒラマキウマ。国立科学博物館のレプリカです。顎の一部分だけなわけで、ヒラマキウマ自身については全体像が明確でないことに……。

アンキテリウム自体組み立て骨格とかがあるわけでもないのでちょっと手が出なくて、ヒラマキウマに一応関連付けつつもっと分かりやすいメリキップスあたりだけにしようかな……とも思っていたのですが、やはり色々なウマ類を出して「いわゆる主流」以外のウマ類も色々いたという話をしたいわけです。

そこで、ヒラマキウマそのものの実態はともかく、アンキテリウム属に含まれるものが森林の湖で堆積した平牧累層で発見された以上は、アネクテンスゾウのときにそう考えたのと同様、アンキテリウムが森林で木の葉を食べて暮らしていたと考えることはできる……として、今回登場させた4種のウマの描写を組み立てました。

メリキップス以外は森林性なんですが、実は現生のウマ類も木の間に入らないっていうことはないです。

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ズーラシアのモウコノロバは林みたいなところで暮らしています。どちらかというと井の頭の真ん中にあるみたいなシカ用の施設がモデルかな。

シカといえばヒラコテリウムの時点で尻尾の骨格が現生のウマとあんまり違わないっぽいのでシカよりウマに似てるふさふさの尻尾にしておりますが、こういう細かいところは資料じゃなくて実物を見ないと思い付かないのですよね。前回書いたとおり国立科学博物館と多摩動物公園のおかげです。

ところで数ある動物園によくいる動物の中からウマ類を選ぶのにも訳があって、要は文中で言っていたとおり子供達が大きな動物に初めて触れるのにぴったりだからなんですが、ウマを動物園の中心に据えるのに下記のような利点があると思っているんですね。

・人類が長く飼育して使役続けてきた動物なので飼育と触れ合いのノウハウが蓄積されている。

・大型なのでモルモットやウサギなどと比べて触れ合いで受けるダメージが小さい。背に乗るようなヘビーな触れ合いにも対応する。

・身近な動物でもあり、また分かりやすい野生動物であるシマウマにもつなげることができる。

・体の特徴がはっきりしている上、毛皮が薄くて観察しやすい。

埼玉県こども動物自然公園や智光山公園動物園では実際にウマが中心で、このとおりの展示になっているように思います。前にペンギンこそこれからの水族館の中心になるべき動物だっていう話をしたんですが、動物園だとウマですね。あっペンギンも埼玉動だ。

草食獣の代表がウマ類で、一方の肉食獣の代表として広い意味のネコ類であるディニクティスを選出しています。ダンクルオステウスの旧名であるディニクチスとは綴りが全然違っております。

サーベルタイガーみたいに牙が長いものの、割と生息年代・地域が広いので牙をそんなに特殊な使い方に使わなかっただろうということでスミロドン(本家サーベルタイガー)ほど悩んでいないです。牙の鋭さはともかく長さはウンピョウくらいかな。ウンピョウもきちんと牙を口に隠してるのでディニクティスもそうだったとしてもおかしくはないでしょう。

同じニムラヴス科でもホプロフォネウスのほうがよく見かけるんですがディニクティスにしたのは大きさがちょうどいいのと、

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運良くディニクティスの頭骨のレプリカを持ってるからなんですね。いやー牙の鋭いこと。自慢か。

スミロドンのときは非常に充実した施設でしたが、ディニクティスの場合はもっと小規模でよさそうです。冷えに注意かな。

主にウマ類を詳しく紹介するお話にするに当たって世話の様子だけでは追いきれなさそうなので誰かを案内する形式にするのはすぐ思い付いたんですが、「アレ」の存在なしで「この例の期間の感じ」を表現したい……ということを思い付いてしまい、ちょっと悩みました。

ちょうどいい時期だったので閉塞感は梅雨のせいにしつつ、ゲームの楽しみ方が広がりすぎて行動が変容しちゃうこととか、やたら動画で動物を見ることになることとか再現できたのではと思います。

第2波が来てしまってまたどこにも行けなくなるかもしれないのが怖いですが、そうなってもまた動画を見るお話にはしないつもりです。すっきり出かけられるようになるのを祈りつつ気を付けて暮らすしかないです……!

次回もまたひらまきパークのお話ですが、今度はひらまきパーク唯一、また第九集収録分唯一の恐竜です。それでいて「動物園にいる動物の祖先」でもあるわけですが……羽毛恐竜ではないです!


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