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千葉その3と4だった記事(鴨川シーワールド、渚の駅たてやま、市原ぞうの国、京都市動物園)

その1・2からだいぶ間が開いてしまいましたね。
そのせいで前回の記事のとおり、外付けHDDが破損して写真が失われてしまったのでこんなタイトルに。
一応書くことになってはいたので、写真は失われたものの自分が特に深く考えた部分についての文章だけでも書き留めておきます。

鴨川シーワールドは9月21日、市原ぞうの国は23日、京都市動物園は10月6日、渚の駅たてやまは9月22日でした。
順番が前後しているのと全然関係ないタイミングの京都市動物園も含めているのは、見学して思ったことに関してまとめたいからなんですね。

鴨川シーワールド

鴨川シーワールドは何度目かなのと私から事細かに最初から最後まで内容を紹介するまでもないくらい有名な施設なので、シャチとメガマウスザメについてだけ。

今現在日本でシャチを飼育しているのはここと名古屋港水族館のみです。どちらもショーを行っています。
鴨川シーワールドのショーの中で一番興味深いのはシロイルカの持っている色々な能力をじっくり見ることができるシロイルカのショーなのですが、これを見始めるとスケジュール的にも立地的にも連続しているイルカ・シャチ・アシカのショーも一気に見ることになります。

広い海を背景にしたプールでのショーって、私はかえってイルカやシャチが全力の速度を出していないのを意識してしまって好みではないのですが、このときはシャチのショーを見ること自体が久しぶりだったせいかその点はあまり気になりませんでした。

それよりも、自然界では頂点捕食者としての地位を築いていながらヒトの元にあればその環境に順応して野生の暮らしからは思いもよらない動きができてしまうことが、今更ながらとても不思議に見えたのでした。
もちろん一朝一夕ではないですし人獣双方に犠牲があっての上なのですが、久しぶりに見るとそうした積み重ねの末にそのとき目の前にある光景に集中してしまっていました。
元の環境で発揮していたのとこんなにかけ離れた能力も身についてしまうなんて、動物の適応っていったい何なんだろうか……そんなことを考えてしまいました。

さて、このとき初めて見る展示がメガマウスザメの骨格でした。

これまでも油壺マリンパークがらみで何回か登場している、私が勝手に縁を感じているサメです。

サメの骨格は軟骨なので形を保ったまま乾燥させて保存するのが難しく、5mを超えるこのメガマウスザメのような骨格はとても珍しいです。とても発見のある観察ができました。
この骨格はシャチなどの哺乳類の骨格も同じところに並んでいるので、サメと鯨類の骨格を比較することができます。
よく「サメの骨格はシャチと比べて貧弱」と言われることがあるんですけれど、確かに頭はシャチのほうががっしりした造りですしサメの胴体に肋骨はありませんが、実はむしろサメのほうが骨がしっかりしているところもあって、それは背鰭と尾鰭なんですね。
鯨類の背鰭と尾鰭はあくまで皮膚が分厚く突出したもので、中に骨は(尾鰭の中心の軸以外)通っていないのです。これに対してサメの鰭は肉厚とはいえ一応「魚の鰭」なので、背鰭は小骨に支えられていますし尾鰭の上半分には脊椎の末端が通っています。
そのためシャチの背鰭は健康状態によって垂れてしまうことがありますし、オナガザメ類の極端に細長い尾鰭のようなものは鯨類からは現れる余地がないようです。
サメの骨格が貧弱だというのが言いがかりに過ぎないとは前から思っていたものの、実物を前にしてシャチと比較することでより深く考えることができたのでした。

市原ぞうの国

市原ぞうの国はその名のとおりゾウを中心とした動物園です。「ぞうの国」という言葉から連想されるとおりタイをイメージした部分が多く、それは建物のみではなく展示内容もです。
つまり、タイのゾウ使いの技や人間とゾウの交流が主な展示なのです。
……その1の時点でnot for meであると書いてしまったのは主な展示がこういう内容だからなのです。

ゾウとゾウ使いによるパフォーマンスタイムがメインとなっていて、確かにゾウもゾウ使いもともに驚くべき見事な技術を見せてくれました。
そういう意味では前段の鴨川と同様なのですが、広大な大海原に住むシャチと比べてゾウが人間の近くにいるのは当たり前というのもありまして。
つい、パフォーマンスとしては本筋ではない、ゾウの身体的特徴や、ゾウ自身の選択による行動に目が行ってしまうのですよね。
アジアゾウとサバンナゾウの違いとか、運動場に生えている草を鼻で巻き込んでつまむとか、そういった点に。
そうすると、サッカーをしたりぬいぐるみを渡して代金を受け取ったりしている、野生と無関係な行動が自分の見たいゾウの姿ではないというのがそれはもうはっきりと理解できてしまいまして。
ゾウ以外の動物も飼育展示されているのですが……、まあ、何の基準で動物が並んでいるのか分からない展示空間の中で、来園者が与えられるように販売されている餌を目当てに近寄ってくる姿に関しては、言わずもがなですよね。

ここの基本理念自体が、ゾウとゾウ使いの関係を動物と人間の素晴らしい交流と見なし、それこそが動物の魅力であるとする姿勢のようです。
漠然とnot for meでないかとは行く前から思っていたのですが、実際に行くことでより深く認識できてしまいました。
それでも見に行ったのは市原ぞうの国がゾウの繁殖実績では国内の動物園の中で抜きん出ているので存在感はあったからなんですよね。
客観的に見ても明らかに問題のある自称動物園というのは残念ながら存在するのですが、ここはそうとも言えず、ただとにかく私にとっては内容が合わないのでした。

京都市動物園

千葉旅行とは関係ない京都市動物園には、いきもにあ出展のために京都に前日入りしたついでに久しぶりに見学に行きました。
広いとはいえない中でも大型草食獣を満足に飼育できるよう手を尽くしていて、京都という都市の名を背負うのにふさわしいクオリティを保っています。

今回ここで特に目を引いたのは、獣舎の中でアジアゾウが餌をつまんでいるという、ゾウのいる動物園でなら当たり前に見られる光景でした。
(美都さんだったかな?写真もない今となっては……。)

何種類もの餌が並べられていたのですが、まず、アジアゾウは一見好んで食べそうな根菜や果物より先に青草を選んで食べていました。
人間のイメージとは異なったゾウ自身の選択基準があることを思わせます。
また、丸ごとのリンゴをそのまま口に入れるのではなく足でそっと踏んで砕いて摘まんでいました。
竹の茎をかじることができるくらいなのでリンゴをまるごと噛み砕くくらいわけないはずなのですが、食べやすくしたほうがいいに決まっていると言わんばかりの丁寧な行動でした。

全て平らげるまでは見ていられなかったものの、ゾウが目の前の色々な餌を食べるという単純な出来事の中にゾウ自身の選択と行動がありありと感じられました。
前述2施設での迷いや不満は払拭され、私はやはり動物自身の判断と行動が見られる展示を求めていくべきだとはっきり分かったのです。

渚の駅たてやま

ここはミニ水族館はあるものの基本的にはいわゆる道の駅のような施設です。渚の駅というだけあって駅から砂浜に出て貝殻などを拾いながら進んでいると目の前に現れます。

館山はさかなクンさんゆかりの地であり、渚の駅たてやまの建物にもさかなクンさんの作品が壁画として描かれています。
また大きな展示室にはさかなクンさんの作品やさかなクンさんとその剥製造りの師匠が作成した魚の剥製、さかなクンさんに関連する品物などがたくさん展示されています。
さかなクンさんの作品を見慣れていたつもりでも実寸の原画を目にするとやはりその筆致が理解でき、ポップかつ素朴ながらも魚をよく理解し形態やポーズを迷いなく描画していることが分かります。
ここには他にも、館山における漁業の歴史の展示や、近海の生き物に絞ったミニ水族館(ここの解説もさかなクンさんによります)などがあり、館山の海への理解を深めています。今回同じ旅程にあった勝浦の海の博物館の展示内容とも関連します。
あわしまマリンパークの記事でも言及した「外の自然と繋がっている展示」ですね。省略しましたが鴨川シーワールドもそうした展示は比較的多いです。

しかし、私は渚の駅たてやまとそのそばの桟橋から見渡せる海自体に特に惹き付けられていました。
それは先の鴨川シーワールドに展示されている骨格のメガマウスザメは、この館山の海に現れた個体だったからです。館山にはその2017年の個体以降にもメガマウスザメが現れています。

それにちなんで建物にもメガマウスザメの壁画が描かれ、メガマウスザメのイラストのTシャツも販売されています。
油壺マリンパークで「イサキやカゴカキダイのような人間にとって身近な魚種の住む海と謎のサメであるメガマウスザメが潜む海は繋がっているのだ」ということを見出しましたが、館山はまさにそのような出来事が実際の海で起こっているところなのです。
桟橋に進むと真横をカモメがなにげなく飛んでいて、町のすぐそばの海で生き物が当たり前に暮らしていることがありありと感じられました。その延長にメガマウスザメもいるのです。私はメガマウスザメの漂着地点を調べてそちらの方角を見渡しました。
館山にはコククジラを含む複数種類のクジラも現れることがあるそうです。そもそもこの旅の大きな目的の中に、アキシマクジラが暮らしていた海に対して実感を高めることや、アキシマクジラと近縁なコククジラの骨格や出現地点に近付くことでした。
東京湾の入り口に近い館山の海が実は巨人達の暮らす海であることを想いながら私は水平線を見詰めました。


ヘッダ画像は館山で拾った貝殻と陶片、ビーチグラスです。渚の駅たてやまを見る前に拾ったものですが、生き物と人々の両方が暮らしている場らしい組み合わせになりましたね。
見学して思ったことをなんとか写真なしで説明してみようとしましたが、まあどうしたって寂しいのは確かですね。記憶にとどめておくには書く必要のある記事でした。

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