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ピサの斜塔と過保護と…。

九條です。

いまから30年ほど前の話なのですが…。

当時、大学の同級生が卒業旅行でイタリアを旅しました。私はお金がなかったので行けなかった。^^;

彼はその卒業旅行でイタリア各地を周ったのですが、ピサの斜塔へも行きました。以下は彼から聞いたその時のお話しです。

ピサの斜塔は皆さまご存知のように、いまから650年ほど前に建てられた石造りの塔(ピサ大聖堂に附属する鐘楼)です。しかも傾いています。

彼はその斜塔に登ろうとしたのですが、階段は螺旋状で昔のままの石造り。手摺りもなく狭くて暗くて、しかも石製の踏板は長い年月を経たために磨り減って凹んでいてツルツル。そのうえ建物全体が傾いているのでとても登りにくい。

彼は思わず「危ないなぁ」と言ってしまったそうです。たまたまその声を聞いた現地のガイドさんが彼に、

「危ないと思うのなら登らなければいい」

「危ないと思っていて(危ないと知りながら)登って怪我などをしても、それはあなたの責任ですよ」

「なぜなら、あなたは危ないと分かっていながら登ったのですからね」

と言ったそうです。彼はぐうの音も出なかったそうです。結局彼は登ったのですが。^^;

私はこの話を聞いて、なるほど西欧人(イタリア人)らしい発想だなと思いました。自分の行動の責任は自分が持つ。キチンとその責任は自分が取るということですね。

私はこのような「大人の発想」が好きです。

けれども最近の我が国の世の中は、何か都合が悪いことがあればすぐに他者のせいにする。自分の責任を逃れようとすぐに難癖(クレーム)をつける。何かあるとすぐに訴える。自分の過失をなかなか認めようとはしない。そういう「無責任な責任転嫁」が蔓延しているように感じます。

だからみんな(自分に責任を押し付けられないように)常にピリピリしている。過保護になっている。人も企業も。異常にストレスフルな社会。

もう少しおおらかで「自分が悪かった」や「たまたま運が悪かった」という発想ができる世の中の雰囲気になって欲しいなぁ…。

と思ったりする今日この頃です。^_^


©2022 九條正博(Masahiro Kujoh)