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【読書記録】2023年10月

夏に崩した体調が、ようやく回復した。
それを待っていたかのように、次の就職先が決まり、ここ最近は心穏やかに過ごせている。
そんな10月の読書記録は、
計29冊
という結果に落ち着いた。
特に月の前半はあまり馬力が上がらず、(途中で休憩がしやすいという理由で)短歌集が多い。
でも、冊数を積み上げることができたのは嬉しい限りだ。
そんな29冊の中から、今月のベスト5をまとめてみた。



『koro』 榊原紘

9月末に第一歌集『悪友』を読んで好きになり、その足で第二歌集『koro』も購入した。
歌から滲み出る、推しへの愛に「同族」の匂いを感じてしまう。

いつになく素直にきみが笑うから
そっと引き取る空のグラスも

『koro』榊原紘

おそらく想像している対象(=推し)は、僕と榊原さんでは全く違う。
それでも、共通する何かを歌の中に見出して、思わず心臓を跳ねさせてしまうのだった。

『陰陽師 烏天狗ノ巻』 夢枕獏

言わずと知れた夢枕獏先生の『陰陽師』シリーズ。
SNS上で話題になった『梅道人』については、既にオール讀物で読んでいた。
あの時の衝撃と言ったら、筆舌に尽くし難い。
晴明と博雅の距離感が、読者が想像していたより案外近くなっていたことが、この短編により判明してしまったからだ。

もしも、おれが先に死んだら、いったいこの世のたれが、ここに座っておまえの酒の相手をするというのだ。

『陰陽師 烏天狗ノ巻』夢枕獏

……僕も月を愛でながら美味い酒が呑みたくなってしまった。

『死ぬまで生きる日記』 土門蘭

今、絶望の淵に立っているわけでもない。
それなのに、なぜか「死にたい」という感情に囚われてしまう。
そんなままならない気持ちに悩む土門蘭さんが、カウンセラーさんとの対話を通して自己と向き合っていくエッセイ。

昔から、「とりあえずその日までは生きていよう」という日を作るようにしている。

『死ぬまで生きる日記』土門蘭

己の感情を、こうやってしっかりと言語化し、オープンに出来ることが、ただただ凄いと思った。
時に共感したり、時に違いを見つけたりしながら、「人間ってままならないなあ」と思う僕も、土門さんのように「ひとりぼっちの星」を持つ宇宙人なのかもしれない。

『パリの砂漠、東京の蜃気楼』 金原ひとみ

「エッセイって、最後に前を向かなくてもいいんだ」
読み終わって一番最初に出てきた感想が、これだった。
作家の金原ひとみさんによる、パリと東京を舞台にしたエッセイ集。
内容がとにかく後ろ向き。
そして、「実在する人間をこんなに描いてもいいの?」って心配になるくらい、人間の描写が生々しい。
だけど、このネガティブさにどこか心地よさを感じるのはなぜだろう。

耐え難い動画を見た時、こんな奴ら死ねばいいではなく、こういう奴らは滅びろではなく、なぜ自分が死にたいと思うのだろう。嫌がらせをされたら相手を殺したいと思う人間になりたい。暴力を受けたら何かしらのやり方で倍返しする人間になりたい。それなのに私は死にたいという言葉で安易に自分の憤りを処す人間であり続けている。悲惨だな。

『パリの砂漠、東京の蜃気楼』金原ひとみ

『GOTH 夜の章/僕の章』 乙一

友人とお茶をしていた時に話題に上がった一冊。
自分だけでは決して出会えない本に出会えるので、人から本を勧めてもらえるのはありがたい。

「愛情ではありません、これは執着というのですよ、先輩……」

『GOTH 僕の章』乙一

ヒロインである森野を間接的に守ってはいるものの、「森野を守りたい」が第一目的ではなく、「面白いものが見られるから」という理由で事件に首を突っ込んでいく主人公「僕」。
決して読者の期待を裏切らない仰天の結末に、思わず笑みがこぼれてしまった。


今月は以上。
どういう形になるかわからないが、読書記録は続けていきたい。

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