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【読書記録】2023年12月

本来であれば、12月中に書きたかったのですが、休みに入った瞬間、2日ほど寝込みました。
慣れない環境が祟ったな……。
今は元気にお正月休みを謳歌しています。

さて、2023年12月の読書記録です。
フルタイムで働きながらだったので、前月より大幅減の
計23冊
その中から3冊、良かったものをご紹介いたします。



『桃を煮る人』 くどうれいん

12月の頭にハマり、大晦日の読み納めまで、どっぷりくどうれいんさんの世界に身を浸していました。
一番最初に読んだのが、こちらの『桃を煮る人』だったのですが、文章から溢れ出すシズル感が何とも言えず、あれよあれという間に
『虎のたましい 人魚の涙』
『水中での口笛』(工藤玲音名義)
『うたうおばけ』
『水歌通信』(東直子さんとの共著)
『わたしを空腹にしないほうがいい』
を読み終えてしまいました。

働いていると、泣きっ面に蜂どころか、泣きっ面に蜂、ピラニア、猪、カメムシ、というような時がある。

『虎のたましい 人魚の涙』 くどうれいん

「協議の結果、中津川に鮭を放流することにしました」とほどなくしてリコちゃんからLINEがきた。呪怨のこもった手紙を書いた紙で鮭を作り、それを流すのだという。

『うたうおばけ』 くどうれいん

少し突拍子も無い表現の数々に、心がふっと軽くなる。
人間をやっていると辛いことも沢山あるが、身に降りかかる出来事を面白く表現して流せる人はとても素敵だ。
調べてみると、どうやら僕とくどうれいんさんは同い年らしい。
くぅ〜!僕も頑張らなきゃな〜。

「君には少しくらい、苦労が必要だったのかもしれないね」
帰り際、詩人は意地悪に笑った。
「でも、気にしなくていい。君が味方につけるべき人間は、もう君の味方だから」

『わたしを空腹にしないほうがいい』 くどうれいん

『52ヘルツのクジラたち』 町田その子

言わずと知れた名作。
自分の人生を家族に搾取されてきた貴瑚が、引っ越した先の田舎町で、母に虐待され「ムシ」と呼ばれている少年と出会うところから物語は始まる。
とにかく内容が重くて、読みながら何度も泣きそうになったけど、文章が好きで読むのをやめられない一冊だった。

思い出だけで生きていけたらいいのに。たった一度の言葉を永遠のダイヤに変えて、それを抱きしめて生きているひとだっているという。わたしもそうでありたいと思う。

『52ヘルツのクジラたち』 町田その子

僕は今、人から与えられてばかりだ。でもいつか誰かの「助けて」に応えられるようになりたい。柔軟な強さがほしい。

『水中の哲学者たち』 永井玲衣

対話というのは恐ろしい行為だ。他者に何かを伝えようとすることは離れた相手のところまで勢いをつけて跳ぶようなものだ。たっぷり助走をつけて、勢いよくジャンプしないと相手には届かない。あなたとわたしの間には、大きくて深い隔たりがある。だから、他者に何か伝えることはリスクでもある。跳躍の失敗は、そのまま転倒を意味する。ということは、他者に何かを伝えようとそもそもしなければ、硬い地面に身体を打ちつけることもない。もしくは、せっかく手を差し伸べてくれた相手を、うっかりバスから引き倒して傷つけてしまうこともない。

『水中の哲学者たち』 永井玲衣

長い引用となってしまったが、この文章を読んだ瞬間、僕は赤べこになりそうなくらい、首を縦に振ってしまった。
僕はよく、頭の中で漠然としたことを考えて、思考をパン生地のようにこねこねしている。
だが、それを誰かに伝えるのは得意ではない。
「理解されない」「伝わらない」という気持ちがどこかにあるからだろう。
結果、自分の中で、思考を醗酵させる。
気づいたらパンパンに膨らんでいて、大爆発を起こしてしまう。
これだと人に迷惑をかけかねない。
だから、考えることは苦手だ。
だけど、考えることはやめられない。

だが、もしかしたらその苦しみの原因は考えることじゃなくて、孤立にあるのかもしれない。ひとりきりで思考の海に潜っているからかもしれない。たったひとりで、たったひとつの世界観、たったひとつの価値観、たったひとつの観点で、水中を彷徨っているからかもしれない。

『水中の哲学者たち』 永井玲衣

先回りをするかのように、指摘されてしまった。
確かに、と深く頷くことしかできない。
僕は最近、ようやく自分の思考を言葉にするようになってきた。
それはお世話になっていたカウンセラーさんや、私の長話を眠らずに聞いてくれる友達がいるからだ。
そのおかげか、最近は考えることがツラくない気がする。
一人で考えていると、どうしても袋小路に迷い込んでしまうんだと今更ながら実感している。


以上、12月の読書記録でした。
寒い日が続きますので、仕事はほどほどに部屋で読書に勤しむ生活がしたいです。
2024年もどうぞよろしくお付き合いください。

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