Bリーグから学ぶファンビジネス

先日BリーグとVリーグの試合を見に行った。スポーツ観戦の経験はほとんどなく、Jリーグの試合に何回か行ったことある、くらいの記憶だったけど、屋内スポーツは雨風の影響がなく、冬なのに暖かくて快適だった。それに何より、試合というより「ショー」であって、アリーナに入ってから帰るまで、試合以外の時間もずっと楽しめる工夫をいくつも重ねられていることを実感した。特に「最近のアリーナ競技はすごい」と聞いていたけど、1分も暇な時間がないくらいずっと何かの施策が実施されていて油断できないし、非日常な体験で「また行きたい」と思ってしまった。

というところで、Bリーグに関する本を2冊読んだ。

どちらもBリーグについて、「プロのバスケットボールの試合を観戦できる」以上の体験づくりが大事だと書いていて、ファンビジネスのフレームワークにできるような考え方もたくさんあった。以下が特にわたしにとって参考になった点である。


事業は「社会的価値」と「経済的価値」の二軸で考える

一般企業で事業をすると「経済的価値」にばかり関心がいきがちだし、おそらく地域に根ざしたスポーツビジネスとなると「社会的価値」に意識が向いてしまいそうだが、両輪で考えることが大事。Bリーグにおいては以下が相当する。

  • 社会的価値=クラブが所属する地域の人口増加やブランド向上

  • 経済的価値=地域で発生する経済効果

数字の分解

  • 収益=ユニークユーザー×購入回数

  • 集客力=ベース票+埋める力

あたりまえのことだけど、数字は因数分解して向き合うべきイシューを見極める。収益を上げたい場合、なんとなくユニークユーザー=ファンを増やすことに注力してしまうが、コアファンの購入回数をふやす方がコストがおさえられたりもする。「集客力」だって、誰を対象とするのかで打ち手が変わる。そこを意識するとどんな数字も分解できる。

ファンの分析

先ほどの「集客」に関連することだが、ファンも分解できる。

  1. コアファン=ファンクラブ会員など、強いリピート客

  2. ファン=観戦経験のあるファン、弱いリピート客

  3. ファン未満=観戦客になりうるポテンシャルはあるがまだ観戦したことがない

  4. 関心がない層

ファン層は属性だけで見ず、実際にどんな趣味嗜好を持ち、どんな行動をするのかまでをとらえる。ファンはすでに動いている人たち=顕在層(上記の1と2)と、これからファンになりうる=潜在層(3)がいる。顕在層と潜在層はアプローチがまったく異なる。顕在層にはリピートの促進、潜在層には初回購入へのアプローチ。誰に向けて何をするのか、を明確にする必要がある。Bリーグでは、以下が実践されている。

  • 顕在層へのアプローチ

    • アリーナでの体験を最大化し、また行きたいと思わせる

    • 「誰かを誘いたい」「感動をシェアしたい」と思わせる

  • 潜在層へのアプローチ

    • メディアやイベントでの露出などでタッチポイントを増やす

    • 招待枠や団体割の活用で「誘いやすい」制度をつくる

ちなみに、Bリーグの場合、初観戦のきっかけは「誘われたから」だそう。それがわかってからは「コアファンが誘いやすくなるサービスづくり」を意識したとのことだ。

スポーツと社会活動

わたしは俗物なので、社会貢献といったものにまだまだ疎いのだが、Bリーグの最終到達点は「社会課題をスポーツの力で少しでも変えていく」らしい。スポーツはコミュニケーション、「うれしい」「楽しい」を超えて「すごい」「ありがとう」を伝えることに挑戦していくのだという。

ここはまだ自分の中できちんとハラオチしきれていないのだけど、なんとなく別の記事で書いてきた「メディアのパラダイムシフト」に関連している気がしている。こじつけかもしれないが、スポーツを「する人」だけでなく、「見る人」「支える人」などプレイヤーとそれ以外の人たちの双方向の関わりに向けた活動へと変化していくように見えるのだ。

かつてのスポーツは勝利至上主義だったが、地域とともに創り上げていくエンタメとなり、それが社会に帰属する文化へとなっていく、というのである。ここはまだまだ勉強が必要なところで、海外の事例なども参考にして学んでいきたい。

むすび

私はスポーツは自分がプレイヤーとして楽しむ分には好きだが観戦としてはそこまで関心がなかった。「ルールがよくわからない」「選手をしらない」「チームの勝利に興味がない」などの理由で敬遠していた。これは昭和の価値観で、時の流れにともなって社会におけるスポーツ、リーグのあり方も変わってきているのだった。観戦の方法も、本の中ではBリーグはファーストスクリーンは「インターネット放送」と断言しており、どんどん変化している。観戦場所は「スタジアム」か「テレビ」だけではないのだ。

東京オリンピックは残念だったけど、まもなくパリオリンピックがはじまるので、令和のスポーツとファンビジネスのありかたを見届けたいと思う。





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