ザ・ウォー・ベトウィン・タイラー・アンド・ミナトモ#2

立体電飾旗本であるタケナカの使命は、とにかく合戦が落着するまで死なずに旗を掲げ続けることだ。

しかしこれだけのことが何よりも難しい。まず立体電飾旗印がひたすらに目立つ。そして阿呆ほどに重い。立体電飾を設計した宗家のお抱え技師は鈍器としての性能をも兼ね備えていると主張していた。内蔵の発電機を軽量化するには更に倍の予算がかかるが、旗印として用いられる都合上、容易に遁走できてしまう軽さではむしろ具合が悪いとも宣っていた。その技師はこの合戦場にはもちろん来てすらいない。ふざけた話だ。

苦りきった顔で立体電飾旗印を掲げるタケナカの元に、三人の一般無個性下級足軽が立ちはだかった。顔も年齢も何もかも判らない。否、一人は体型からして女だろうか。どうでもいい。とかく、撃退しなければならない。有事の際には柄頭のスイッチを押せ、と主君に言われていたことを、タケナカはこの期にようやく思い出した。何やら主君自ら発案した肝煎りの仕込みがあるらしい。

タケナカは半ばやけっぱちな気持で立体電飾旗印のスイッチを押した。そしてすぐさま後悔した。立体電飾から爆音が鳴り響いたからだ。
ヤア~ヤア遠からん者は近う寄りて見よ、我こそは宗家ミナトモの末流タケナカ、いざ尋常に死合願わん、いざ、いざ!

何百年前の名乗りだ。思わず呆然として動きを止めている様子の一般無個性下級足軽たちを前に、しかしタケナカもまた、じわりと湧き上る恥の気持を忍ぶ為に動けなくなっていた。そのとき予想外のことが起こった。立体電飾旗印が突如として威勢よく猛回転を始めたのだ。旗頭にあしらわれたうらなり瓢箪のレプリカが変形し、エレキテルが飛散する。発生した衝撃波が三人の一般無個性下級足軽を弾き飛ばした!

(『ザ・ウォー・ベトウィン・タイラー・アンド・ミナトモ』 Chapter#2『ヒズ・ネーム・イズ・タケナカ』終わり。#3『トランスフォーム』へ続く。)

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