株式会社トラーナの CTO を退任します
こんにちは,めもりー(@m3m0r7)です。
2023 年 5 月末に株式会社トラーナの執行役員 CTO を退任かつ,退職する運びとなりました。5 月 1 日が最終出社日で,5 月 2 日から有給消化に入ります。
次の職場は決まっていませんが,ゆっくり探そうかなと思っています。
ご飯のお約束も受け付けています。
何をやっている企業なのか
0 歳から 6 歳までのお子様に知育玩具をサブスクリプションで提供するサービスを運営している企業です。
どれくらい在籍していたの
2020 年 4 月に入社し,3 年ほど在籍していました。
私自身のキャリアの中ではフルタイム正社員として最長期間在籍していた会社です。
正社員のエンジニアは私 1 名からスタートし,今ではエンジニアは 20 名弱規模(業務委託含む)の組織にまで成長しています。
私自身が入社したタイミングは正社員もほとんどいない走り出しの時期で,私自身の従業員番号も右手で数えられる内に入っています。
何をやってきたの
入社してまず既存のシステムのフルリプレイスを実施しました。
プレゼンテーション資料(登壇資料として社内でレピュテーションリスク及びレギュレーションチェック済み)でも触れていますが,とある SaaS の API の Rate Limit に引っかかりそうになるくらいには,お客様にご利用いただけていました。
しかし,Rate Limit があるような,サーバレスアーキテクチャはスケールが徐々に難しくなってきます。
更にバンドルされた JavaScript だけが残っており,機能追加はもとい,メンテナンスどころではありません。
そのため,ご利用いただけるお客様が増加するものの,現行のオペレーションそのものを改善する要求を叶えることができないため,フルリプレイスに踏み切りました。
(書ける範囲はここまでです)
尖った技術選定として PHP で非同期処理を行うための Swoole というサードパーティライブラリを導入しました。エンジニアリングの土台がまったくない企業に振り向いてもらうにはどのようにしたらいいのか思料を重ねていました。Swoole を導入した結果として様々な方がトラーナに興味をもってくださいました。"当時は" この選択肢を取れたのは良かったのではないかなと思います。
トラーナは国内で Swoole がプロダクション導入された事例の一つです。
この事例で得た経験から「Swoole で学ぶ PHP 非同期処理 ~並行処理/並列処理の基礎から実践的な開発手法まで一気にわかる」という本を執筆させていただいており, 2023 年 2 月 20 日に技術評論社さんより刊行されています。
その傍ら,エンジニアリングのカルチャーを社内に浸透させるべく分報チャンネル,いわゆる「times」の導入を行ったり,エンジニアリング組織を作っていくために採用から組織カルチャーの定義を行ったり,市場規模と合わせた給与テーブルの設計を行ったり… これらをやったのは, CTO になる以前ですが。
そして 2022 年 1 月に CTO に就任しました。
ボトムアップ型組織を目指し,トラーナの開発チームは 3 チームに別れていますが,各チームに EM を設置(2023 年の 1 月までは私が EM を兼任していましたが…)。そして,各チームの判断で回るように,特に CTO の意思決定が不要になるように,抽象化されているものは具体化し,権限移譲は適切な範囲で渡していくようにすることで,各チームがそれぞれ独立に動けるような組織になっていきました。
そこから,もともと数字として管理されていなかった,開発チームのパフォーマンスやプロダクト品質のパフォーマンスを測るかつ改善すべく:
テストカバレッジのモニタリング
4 keys の導入及びモニタリング
事業部からエンジニアへの問い合わせをカテゴライズして数字化及びモニタリング
GitHub Issue に Difficulty の導入(タスクの難易度を数字化したもの)及びモニタリング
これらの数字を取るようにしモニタリングも含めて,プロダクトの改善に取り組んでいました。
このモニタリングの数字に加えて,もう少しレイヤーを上げて,エンジニアリング投資における P/L へのインパクト,各事業部の KPI にどれだけエンジニアリング投資が絡んでいるか,まで数字で示せられればよかったな…という反省があります。
エンジニアリング投資における数字の妥当性を示すにあたって,私自身が言語化して納得できる数字ができるまでに時間がかかりすぎてしまいました。
ちなみに,私が退任を決定したタイミングでは,正社員のエンジニアの退職者は 1 名しか出ていません。今後はどうなるかはわかりませんが,少なくても,エンジニアのみなさんが,働きやすい環境を作ってこれたのではないかなと思っています。
得られた経験
いちエンジニアのままで続けていたら,得られることのなかったであろう「経営の知識」,とりわけ会社のキャッシュに対する知識がグッと広がりました。
特に私自身がエンジニアとして,現役だった頃は「エンジニアリング投資の費用対効果」なんて考えもしなかったですし「とりあえずエンジニアリングしなきゃダメでしょ!」「先に設計も開発も時間をかけていいものを作って,後でマイナス分は回収すればいい」みたいな解像度でした。
CTO の役務は,どのように開発すればいいのか,どのようにエンジニアの配置や組織体制を作って行けば,事業計画ひいてはエクイティストーリーを達成できるのか,それに対してどれだけのエンジニアリング投資を行えばいいのか,を数字を見て判断して実行していくことだと今は確信しています。
このような解像度になったのも,トラーナに入ったからこそです。トラーナに出会わなければ,このような知識をつけることもなかったかもしれません。そういう意味で大きな経験を得られたなと思っています。
経験の集大成
得られた経験から「レガシーコードとどう付き合うか」という本を執筆させていただきました。 2023 年 5 月 23 日に C&R 研究所さんから刊行されます。
レガシーコードを改善するためのハウツーは多くの書籍がありますが本書は「レガシーコードが生まれる理由」に "も" 焦点をあて,どのようにして既存のレガシーコードを改善していくか,道筋を立てて解説をしているものになります。
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